【3947】過激なまでに熱烈なファン
Q: 30代女性です。 私には趣味を介して知り合った友人Aがいます。(同世代です)
双方とも、過去に放映されていたあるドラマB(当然、フィクションです)のファンだったことがきっかけで交流するようになり、十年近くのつきあいです。
しかしながら、ここ数年、Aの言動に気がかりな点が見受けられます。
元々Aはかなり熱量の高いファンでしたが、月日を増すごとにどんどん過激になっています。
こういったことは、趣味の世界ではよくあることではないかと思いますが、それでも私には気がかりな点が多いのです。
主な例としては下記のような具合です。
・第一人者を騙る
ドラマBについての様々な知識(信憑性がないものも含みます)やファンの風習をWEB上で語り 「自分が初めて気がついた」「自分が周知させた」ということを繰り返し主張します。
しかしながらそのほとんどが、当時周りの人間がAに教えたり、行っていたものが多く、 Aの功績というわけではありません。(WEB上のことなのでログが記録されています)
はじめは彼女が目立ちたいがために、嘘を騙っているのだと思っていたのですが、
どうやら本気でそう思いこんでいるようなのです。
・現実とフィクションの混同
「ドラマBのイメージを壊したくないから」と、演じた俳優の一切の情報を拒絶、排斥し続けています。
特に俳優の結婚について非常にショックを受けており、裏切りのように感じているようです。
Aがその俳優に恋愛的な好意を抱いていたのかと思っていたのですが 「役のイメージを裏切られた」「作品をないがしろにした」という認識のようで、それが十年近く続いています。
もちろん、その俳優が犯罪を犯したようなこともありません。
・被害妄想
Aが好きな作品が、同系列の他の作品に比べ冷遇されている、という訴えを頻繁に行います。
しかしこれはとうの昔に放映終了した作品で、新しい動きがないのが一般的です。 にもかかわらず、回顧録のようなものやグッズなどは時折販売されており、むしろ恵まれているともいえます。(もっとも、それは私の個人の主観に過ぎない感想ですが)
周囲がそのようにとりなしても聞き入れず、企画側が作品を気にいっていないのだ、といった根拠のないことを吹聴し続けています。
・功績の思い込み
これは上記の被害妄想の逆です。
なにか新たな商品やイベントが提示された場合、「自分の訴えを企画側が聞き入れたからだ」「自分の功績だ」といった主張を行います。
しかし、客観的に見るとそれは他の作品でも行われているもので、順番が巡ってきただけ、というものがほとんどです。
それでいて、事象に喜ぶことはほとんどなく、「ここが気に食わない」「作品が大切にされていない」と難癖をつけてばかりいます。
こうして文章にしてみると、本当によくある「少し思い込みの強いファン」という具合で、 先生にご相談するほどのことではないのかもしれない、と恥ずかしくなります。
しかしずっとAと交流のあった私は、その性格や執着の変わりかたがとても恐ろしいのです。
対象が個人でないのが幸いですが、いわゆるストーカー的な偏執を感じます。
Aが求めているのは、もはや『Aの理想・妄想の中にあるドラマBとその展開』であり、それはどこにも存在しないのです。
制作者にさえ難癖をつけて、「この作品のことは自分が一番わかっている」と主張を続け、過去だけを抱えて生きています。
交流があった人々も、どんどん離れていきました。
Aの態度に違和感や恐れをなし、作品自体のファンを辞めていった人間も多くいます。
A本人も、自身の生活に支障をきたしているようです。
(感情の起伏が激しくなり眠れない、起きれない、それでいて社会生活に影響が出るなど)
私はできればAの友人として、以前の温厚で和気あいあいと趣味を楽しんでいた頃のAに戻って欲しいですし、様々な妄想や執着から解放されてほしいと願っています。
しかしながら、個人の趣味に対してそのように差し出がましいことを感じる私のほうこそ、病んでいるのでは?とも思ってしまうのです。
A、あるいは私の抱えている感情は、なんらかの病に分類されるものなのでしょうか。
また、なんらか改善させる手立てはあるのでしょうか。
林:
こうして文章にしてみると、本当によくある「少し思い込みの強いファン」という具合で、
確かにそのように読めないこともありません。たとえば、自己愛の強い性格の人が、ある特定の趣味(この【3947】ではドラマBを指します)にのめり込むあまり、自分こそはその分野の第一人者であるという思いにとらわれ、現実が見えなくなっている、というパターンです。そのような場合、時にはそこから虚言が生まれることもあり、
なにか新たな商品やイベントが提示された場合、「自分の訴えを企画側が聞き入れたからだ」「自分の功績だ」といった主張を行います。
というような主張は、これ自体は虚言には一致しないものの(もっとも、それを主張する場面や言い方によっては虚言と言えるかもしれません)、虚言に発展しかねないものであると言えます。
けれども他方Aさんは、性格からの発展というレベルを超えた、妄想を持っている可能性もあります。その可能性が強まる一つの根拠は、
しかしずっとAと交流のあった私は、その性格や執着の変わりかたがとても恐ろしいのです。
対象が個人でないのが幸いですが、いわゆるストーカー的な偏執を感じます。
このような変化が見られているという点です。質問者がAさんとかなりの期間の交際があり、そして、もともとはAさんは特に自己愛が強かったり虚言傾向があったりという人ではなかったとすれば、精神病を発症した結果としてこのような変化が生じているという可能性が高いです。この場合の精神病とは具体的には統合失調症や妄想性障害です。妄想の一つパターンとして、有名な作品について、自分が作ったものであるとか、自分のアイディアを盗まれたとか、自分はその作品の関係者と特別な関係を持っている、などと主張することは時おりあるものです。
【1193】芸能人と恋愛関係にあると言い張る友人
【2195】統合失調症と思われる知り合いから、定期的に手紙などが届きます
【2196】自分が作詞したヒット曲のお金が口座に振り込まれているはずだと言い張る兄
【3871】京都アニメーション放火事件の容疑者は妄想を持っていたのでしょうか
などをご参照ください。
もっとも、この【3947】のメールからはAさんにそこまでの異常性は読み取れませんが、
A本人も、自身の生活に支障をきたしているようです。
(感情の起伏が激しくなり眠れない、起きれない、それでいて社会生活に影響が出るなど)
という状況からすると、質問者がまだ知らない異常な言動が、Aさんにはあるのかもしれません。それが明らかになれば、精神病の発症であることがほぼ確定します。
私はできればAの友人として、以前の温厚で和気あいあいと趣味を楽しんでいた頃のAに戻って欲しいですし、様々な妄想や執着から解放されてほしいと願っています。
しかしながら、個人の趣味に対してそのように差し出がましいことを感じる私のほうこそ、病んでいるのでは?とも思ってしまうのです。
質問者のお感じになっているのは、友人として健全な気持ちで、病んでいるとは認められません。
A、あるいは私の抱えている感情は、なんらかの病に分類されるものなのでしょうか。
質問者は病気ではありません。
Aさんについては、上記の通り、もう少し情報があれば、統合失調症または妄想性障害と診断がつけられる可能性があります。
また、なんらか改善させる手立てはあるのでしょうか。
統合失調症や妄想性障害であれば、精神科での治療によって改善が十分に期待できます。
(2019.12.5.)