【3901】統合失調症の疑いで入院した兄が、発達障害と診断された

Q: 兄が統合失調症を発症した疑いがあり入院しています。私も兄も30代です。
本人には、発達障害のテストを受けに行こうと嘘を言って病院に連れて行き、そのまま入院となりました。
症状としては、幻聴に振り回される、被害妄想(パソコン、SNS等が監視されている.近所の人が公安に狙われている等)でした。入院前は、体重も10キロ以上落ち、爪も髭も伸ばしっぱなしなのに出掛ける前には1時間以上鏡を見つづけるなど整合性の無い行動のオンパレードでした。

入院から1ヶ月以上経ち、もうすぐ退院との事で、本人と両親に病気についての説明が医師からあったそうですが、発達障害だと説明されたそうです。
発達障害の場合も幻聴や妄想などの症状が出る事が有るのでしょうか?
本人がその場にいた事もあり今後の治療のために(本人は薬を飲み続ける事に抵抗感があります。)医師が統合失調症と伝えるのを避けただけでしょうか?

ネットなどで検索してみると、統合失調症だと診断され治療を受けていた人がセカンドオピニオンで発達障害と診断された、という記事等も見つける事が出来ましたが、この2つの病気は元々似た症状が出る事のある見分けにくいものなのでしょうか?

違いについて詳しく書いてある文章などを見つけられなかったため、どうぞよろしくお願いします。

 

林: このケースが統合失調症か発達障害かはわかりません。メールに記されている症状だけからは、統合失調症の可能性のほうが高いです。ただしメールに記されていない症状として何があるかがわかりませんので、「統合失調症の可能性のほうが高い」という判断は、このケースについての他の情報があれば変わるかもしれません。入院の主治医の先生が発達障害と診断された理由も、このメールには記されていない何らかの情報に基づくものと思われます。

発達障害の場合も幻聴や妄想などの症状が出る事が有るのでしょうか?

あります。

本人がその場にいた事もあり今後の治療のために(本人は薬を飲み続ける事に抵抗感があります。)医師が統合失調症と伝えるのを避けただけでしょうか?

わかりません。

ネットなどで検索してみると、統合失調症だと診断され治療を受けていた人がセカンドオピニオンで発達障害と診断された、という記事等も見つける事が出来ました

ネットの医療情報を信用するのは誤りです。
また、セカンドオピニオンが過剰に重視される傾向が一般的にはよくありますが、それも誤りです。セカンドオピニオンとは、「最初の医師はAと診断し、次の医師はBと診断した」ということにすぎませんので、AよりBが正しいと考える理由はどこにもありません。

この2つの病気は元々似た症状が出る事のある見分けにくいものなのでしょうか?

見分けにくい場合があります。というより、見分けにくい場合には、見分けることは論理的に不可能で、それでもどちらかの診断を確定するのは、その医師の個人的見解にすぎません。
というのは、発達障害と統合失調症の両方の所見がある場合、
(1) その二つの障害の両方があるのか (二つの病気が併発した というのに近いです)
(2) 発達障害の人に一時的に統合失調症のような症状が出たのか
を区別することは論理的に不可能だからです。
それでも、発達障害であることが確実であれば(それは幻覚や妄想が発症する前のその人の生活歴などに基づいて確実と判断できる場合です)、統合失調症の症状は(または、統合失調症に似た症状は)、発達障害からくる二次的なものだと判断することは可能ですが(おそらくこの【3899】のケースで発達障害と診断された経緯はそれにあたると思います)、たとえ発達障害であることが確実であっても、発達障害の人が統合失調症に罹患することはないとする根拠はありませんから、上の(1)と(2)の両方の可能性があり、どちらも否定できないという事情は変わりません。

発達障害と統合失調症の診断をめぐる問題は、【2843】自分はアスペルガー症候群なのか統合失調症なのか、 【3181】兄は統合失調症ではなく、発達障害ではないか、 【2570】私は発達障害でしょうか、それとも単純型統合失調症でしょうか、それとも神経症でしょうかなどもご参照ください。
(アルペルガーと発達障害はイコールではありませんが、統合失調症との区別をめぐる問題の論理構造は同じです)

(2019.10.5.)

05. 10月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 発達障害, 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |