【3723】統合失調症の息子は転院してから回復しました(【2881】、【1770】のその後)
Q: 統合失調症の息子を持つ60代の父親です。【2881】統合失調症の息子に規則正しい生活をさせたい、【1770】息子の眠気が強いのは薬の副作用ではないでしょうかでは回答いただきありがとうございました。
息子は38歳になりました。今から、2年前に転院しました。
実は、クリニックの医師が、朝の診察時間前に「前回と変わらず薬だけの人」と手を上げさせ、事実上の無診察で薬を出していることに疑問を持ちました。
それだけでなく、息子のそのクリニックの診察に限界を感じていました。
息子が、診察時間を短縮するためにメモを渡すとその医師が、「これ作文?」「俺に対するあてつけ?」とか言うようになったためです。
2年前に転院した新しい主治医は、初診の時に1時間30分時間を取ってくれて、息子は「(統合失調症ではあるが)自閉症スペクトラム」と診断されました。
薬は、ずっと以前のものは、
リントン9mg(朝・昼・夕3mgずつ)ピレチア75mg(朝・昼・夕25mgずつ)、ウインタミン50mg(昼・夕25mgずつ)、寝る前インプロメン3mg(1錠)ベゲタミンA3錠マイスリー10mg(1錠)エリミン5mg(1錠) その他レキソタン5mg頓服
でした。
新しい主治医は、「まず、ウインタミンをはずしていきましょう。」ということで、リントン9mg(朝・昼・夕3mgずつ)ピレチア75mg(朝・昼・夕25mgずつ)、レキソタン15mg(朝・昼・夕5mgずつ) 寝る前インプロメン3mg(1錠)ベゲタミンA2錠)となりました。
それから、転院の1つの目的であったベゲタミンが販売停止になるので、ベゲタミンの代わりに、ユーロジン2mg1錠・レボトミン25mg1錠となりました。
その後、ユーロジン2mg1錠になり、ベルソムラ20mg1錠になりました。
リントン9mg(朝・昼・夕3mgずつ)ピレチア75mg(朝・昼・夕25mgずつ)、レキソタン15mg(朝・昼・夕5mgずつ) 寝る前インプロメン3mg(1錠)ベルソムラ20mg(1錠)となりました。
それから、新薬を試してみようということで、
ロナセン8mg朝・昼・夕
ピレチア25mg朝・昼・夕
レキソタン5mg朝・昼・夕
寝る前ベルソムラ20mg
になりました。
いきなり変えたわけではないです。主治医の元に漸増漸減で変えました。
その後、息子が、下痢がひどいというので、ロナセンを諦めました。
ハロペリドール3mg朝・昼・夕
ピレチア25mg朝・昼・夕
レキソタン5mg朝・昼・夕
寝る前ベルソムラ20mg
となりました。
ところが、徐々にベルソムラでは、早期覚醒していました。
半年前に躁状態なってしまい、20年間で初めて医療保護入院で閉鎖病棟に入院となりました。
躁状態で多幸状態になりました。
薬は、
ハロペリドール3mg朝・昼・夕
ヒルベナ25mg朝・昼・夕
レキソタン5mg朝・昼・夕
寝る前デパケンR200mg3錠・レボトミン25mg2錠・ベルソムラ15mg1錠
となりました。CP換算500mgです。
本人が病院きらいになるといけないという主治医の判断で3週間で退院となりました。
今の主治医は、息子と相性が良く、今の処方で安定しました。
躁状態になった原因は、昼夜逆転で夜中にパソコンをやったりして、頭が覚醒して躁状態の一因になりました。
退院後に、規則正しい生活の大切さを家族共々良くわかりました。
今は夜中にはパソコンをやらせません。
昼間に家内のパソコンを少し借りるくらいです。
今は、信頼できる主治医ですので、林先生の言われるように主治医の指示にしたがって養生していくつもりです。
いくら、主治医の腕が良くても病状がすぐに好転するわけではないです。
今も、息子は、ふだん昼間も寝ていることが多いです。(眠気が強い)
それを、いきなり起きられるようにするのは、無理が多いです。
病院のケースワーカーの精神保健福祉士の訪問看護や支援センターの人に自宅に来てもらう生活をしています。
主治医との相性もよく、息子がメモを書いていくと主治医は「ありがとうございます。カルテに貼ってよろしいですか?」と言ってくれます。
前のクリニックの時は、私の代診が多かったのですが、今は、2週間に1回必ず家族と共に診察に欠かさず行っています。
今は、家族共々、今の主治医に満足しています。
それと病状が重い軽いは別問題だと思っています。
林:
息子は38歳になりました。今から、2年前に転院しました。
実は、クリニックの医師が、朝の診察時間前に「前回と変わらず薬だけの人」と手を上げさせ、事実上の無診察で薬を出していることに疑問を持ちました。
それだけでなく、息子のそのクリニックの診察に限界を感じていました。
息子が、診察時間を短縮するためにメモを渡すとその医師が、「これ作文?」「俺に対するあてつけ?」とか言うようになったためです。
これはいかにもひどい、信じ難い診療で、いや、診療とさえ言えない所業ですから、転院は当然の選択だったと言えるでしょう。
そして、その後の経過を、具体的な処方を含めご報告いただきありがとうございました。
現在は症状が改善し安定しておられるとのこと、何よりと思います。
今は、家族共々、今の主治医に満足しています。
良い先生にめぐりあえて本当に良かったと思います。
今は、信頼できる主治医ですので、林先生の言われるように主治医の指示にしたがって養生していくつもりです。
是非そのようになさってください。
なお、この経過を拝見して、一つだけ指摘させていただきますと、
結果として改善・安定されたのは本当に良かったと思う一方で、
半年前に躁状態なってしまい、20年間で初めて医療保護入院で閉鎖病棟に入院となりました。
この経過は、医師としては見過ごせないものです。
つまり、初めて医療保護入院になったのが、減薬の過程での出来事であったということは、この時点だけに着目すれば、減薬に失敗したと言えるからです。それは治療の失敗にほかなりません。
入院して回復し、その後安定が得られたという結果からみれば、減薬過程でのやむを得ないエピソードだったと言えないことはありません。けれどもそれは結果から振り返ってはじめて言えることであって、躁状態で閉鎖病棟に入院したということは、そのとき、自分や他人を傷つけてしまった可能性もあったということですから、やはり治療は失敗したと言わざるを得ません。大きな問題が起きる前に入院できたのはラッキーだったにすぎないという見方もできるでしょう。
質問者はこの躁状態の原因を不規則な生活であると認識されています。それはその通りかもしれませんが、そうではなくて減薬が原因だったということも十分に考えられます。また、このような経過の場合にありがちなこととして、そもそも不規則な生活になってしまったこと自体の原因が減薬だったという可能性も十分にあります。
このように、統合失調症の治療における減薬というのは、慎重なうえにも慎重を要するものです。薬が減らないことに不満を訴える方はとても多いものですが、減薬による悪化は、人生を破綻させる可能性さえあるという認識を持つことが、精神疾患の治療過程ではとても重要です。
(2018.9.5.)