【4837】息子はなんとか安定しました(【1770】、【2881】、【3723】のその後) 

Q: 【3723】統合失調症の息子は転院してから回復しました  で回答いただいた、当時60代、現在70代の父親です。息子は現在40代です。

今までの時系列での概略経過です。

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息子は、X-27年の高校2年の時から、寝られなくて頭がガンガンするということで精神科クリニックにかかりました。 統合失調症という診断でした。

X-8年7月に精神科単科病院に転院しました。
診断は、根底に「自閉症スペクトラム」があると診断されました。

X-6年1月~2月まで入院しました。
症状は、 多弁・興奮・大声・不眠
デパケンRが追加されました。睡眠薬はベルソムラです。
薬は、
ハロペリドール3mg朝・昼・夕
ヒルベナ25mg朝・昼・夕
レキソタン5mg朝・昼・夕
寝る前デパケンR200mg3錠・レボトミン25mg3錠・ベルソムラ15mg1錠
となりました。
前回の投稿は、ここまでです。

その後に
X-1年(去年です)3月~5月まで、2度目の入院をしました。
症状は、 不眠・観念奔逸・転導性の亢進
抗精神病薬がハロペリドールから、インヴェガに変更になりました。
薬は、
インヴェガ6㎎朝・夕
寝る前、デパケンR200㎎3錠・レボトミン25㎎3錠・ベルソムラ20㎎1錠
となりました。途中で、ベルソムラから、デエビゴに睡眠薬を変えていました。

同じX-1年の10月、息子が、心霊現象が出るということで、睡眠薬をデエビゴ・ベルソムラに代わるもので、ユーロジンになりました。

X年(今年です)1月、睡眠薬をユーロジンから、ベルソムラに戻しました。

前回の入院から、5年経ち2度目の入院でした。
2度目の入院で変薬をしました。
息子本人が変薬を希望し、入院中に主治医も本人が希望する薬の方が良いだろうということでハロペリドールからインヴェガに変薬になりました。

眠気が強いのはあまり変わりません。
というか、1日中起きていて寝られなくなる日が続くと具合が悪くなり、入院になったりします。
X年1月に、寝る前のレボトミン25㎎3錠から4錠に微調整しています。
あとレキソタン2㎎錠を朝・夕・寝る前となりました。
午前中寝ていることが多いです。
主治医は、眠気を完全に取ることは症状の悪化につながると言います。
26年を経過してみると、林先生に最初に相談した【1770】息子の眠気が強いのは薬の副作用ではないでしょうか のときに私が心配していた眠気のことは、致し方ないというところです。
昨年の12月から、寝にくくなり調子を崩しましたが、通院でお薬の調整で切り抜けました。
今の主治医で、今回は3度目の入院は避けられました。
薬の微調整で済みました。
その後、主治医の「少し元気がないという」ことで寝る前のレボトミン25㎎4錠を3錠戻しました。
それにしても、不眠から、症状が再燃・再発するというのがよく分かりました。

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時系列の経過報告でした。

 

林: その後の経過のご報告をいただきありがとうございました。
高校生のときに発症してから40代の現在までの長期経過についての、お父様の目からみた詳細かつ具体的なご報告は、読者の方々にとっても大変貴重であると思います。ご報告いただきましたことに深く感謝申し上げます。
昨年から今年にかけて、悪化の危機があったようですが、薬の調整で乗り切り入院を避けられたとのこと、何よりと思います。

【1770】から今回に至る26年間の経過ご報告からは、統合失調症の当事者やご家族のための貴重な教訓が読み取れると思います。それは端的に、

統合失調症では薬を飲むことが重要

ということです。

26年を経過してみると、林先生に最初に相談した【1770】息子の眠気が強いのは薬の副作用ではないでしょうか のときに私が心配していた眠気のことは、致し方ないというところです。

まさにその通りです。そして、貴重なご報告をいただいた質問者の方に対しては申し訳ない言い方になりますが、それは最初からわかっていたことです。つまり、眠気程度の理由で(もちろん眠気があまりに強い場合は別です)、薬を減らしたり中断したりすれば、統合失調症の悪化に繋がり、その結果本人や家族が被るマイナスはとても大きいということです。この【4837】のケース、26年前の時点から服薬をしっかり続けていれば、入院する必要もなく、もっと明るい人生を送ることができた可能性は十分にあるでしょう。
「統合失調症では薬を飲むことが重要」、この単純なことを精神科医が強調することにはこうした背景があります。
時に、本人やご家族から、「主治医は薬を飲めとしか言わない」という不満をお聞きすることがありますが、統合失調症では、薬を飲まなければ、治療は始まりません。そしてケースによっては、薬さえ飲んでいれば健常者と全く変わらない生活を送ることができる場合も十分にあります。逆に薬を飲まないままに悪化してからは有効な治療や対処法はとても限られたものになり、一回の悪化が悲劇的な結果を招くこともありますし、また、最終的には長期入院しかなくなることさえあります。

この【4837】のケースは、紆余曲折はあったものの、今では薬の重要性を認識され、かなり安定した生活を送れるようになったことが読み取れます。こうしたケースがたくさん存在することを精神科医は知悉していますが、一般の方々にはこのような長期経過はあまり知られていないのが現実です。そのために、薬の減量や中断を繰り返し、その度に症状が悪化することを繰り返す、そうしたケースが膨大に存在します。そのことが広く知られるようになれば、非常に多くの統合失調症の方が、服薬を続け、幸福な生活を送ることができるようになることは間違いありません。
貴重なご報告をいただいたことについて、【4837】の質問者にはあらためて深く感謝申し上げます。息子さんとご家族のみなさまにこれからも幸福な生活が続くことを願っています。

(2024.5.5.)

05. 5月 2024 by Hayashi
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