【3658】アスペルガーと境界性パーソナリティ障害

Q: 10代女子です。5年くらい前から病院に通っていて、現在自閉症スペクトラムと診断されています。

まず本文に入る前に、長文なので先に林先生にお尋ねしたいことを書かせてください。

(1) アスペルガー症候群と境界性パーソナリティ障害が同時に存在することはありえますか?
(2) 虐待がなくても境界性パーソナリティ障害になることはあるのですか?
(3) 私の下記に記す状態は境界性パーソナリティ障害ですか?
(4) 自閉症スペクトラム(アスペルガー)で、下記に記す状態は説明できますか?

私が小学生の時、父が事故で失明しています。
そのときは病院で母とずっと付き添っていました。年齢的に忘れるのが当然かもわかりませんが、車から降りてどうやって病室まで行ったのかや、父が叫んだらしいですがそれも覚えてません。ただ暴れるので身体拘束されていました。3日間、死ぬか生きるかの峠と言われたらしいです。

その夏から強迫症状が出始めました。
手の洗いすぎてすぐタオルがびしょぬれになって家からタオルがなくなるぐらいです。
秋から冬にかけて学校で無視や陰口、仲間外れにあいました。自分ではいじめだと思っています。

それからもいじめにあって、興味本位でリスカを始めて不登校になりました。

「精神科に行きたい」と興味本位で自分で言って精神科に行きました。

そのときの診断は強迫性障害でした。抗うつ薬や非定型抗精神病薬を飲んでいましたが、ほぼ効いた気配はありませんでした。

小学生の頃から保健室登校だったのですが、リストカットが本格化して、家庭内暴力もありました。特に夕方から夜にかけてが多く、取っ組み合いで、暗い部屋の中でわたしはすごい異様な目をして母に食って掛かっていました。

小学高学年になって少し落ち着いたように見えましたが、特別支援学級に無理やり入れられて、そこの先生と合わず、脱走を繰り返していました。

中学生になってから、自分から入院したいと言って入院しました。
夏頃摂食障害になりました。これは、小学高学年のときに、「痩せたらわかってもらえるのか」と思い、吐き始め、入院したときに、「食事を食べたら変に思われる」とか「どうやって取りに行って下げに行ったらいいのかわからない」とか、意味のわからない理由で食事と疎遠になり、また吐いたりしてるうちに見事になってしまいました。

それで身体がきつく、入院になりました。
ベッドに拘束されて点滴されるのも「拘束されたら抵抗しなきゃいけない」っていう変な固定観念で、「摂食障害なら点滴を嫌がらなきゃいけない」とかいう固定観念で、点滴の針を抜こうとしてました。

その秋に初めてODをしました。頭痛薬でした。24錠くらいでした。その頃から見捨てられ不安とかいうのに似たものがありました。

「境界性パーソナリティ障害」は、自分が小5の頃に本を買っていたのでその頃から自分で疑っていたのだと思います。

入院したころから、目立ち始めたかもしれません。
医療者に面倒を見てもらえるから、何もわからなくて楽かもしれないから、知的障碍者になりたいと思いました。重度の統合失調症の人とかがすごく羨ましかったです。

重症になれば、構ってもらえると思いました。もっと自分を診てもらえると思いました。逆に、病気が治ったら、もう誰も私のことなんて相手にしないし、病院に来るなと言われるだろうから、治りたくないと思っていました。

他の患者さんより重症になることで、自分の価値を保とうとしていました。
他の患者さんより重症でないと、主治医の先生や看護師さんが自分から離れていく気がしました。
必死に気を引こうとしました。そのために自傷したり、家庭内暴力が酷くなったり、摂食障害が酷くなったりしてました。
先生たちが振り向いてくれないと、わたしには何もなかったんです。そうすることで自分を保ちました。
先生たちのなかに映るわたしが消えたら、わたしはいなくなるような、だから消さないでほしかった。先生たちの頭のなかに、わたしを焼き付けておきたかった。そうじゃないと、わたしは、わたしは。って。
中学1年生の終わり、首を切って入院しました。
血が止まらず、やばいのかな、と思ってネットでただ冷静に止血方法を調べていました。その様子を母が冷静すぎて怖いと言っていました。

隔離されたり、拘束されたり、保護室だったり。そういうのは、辛いから嫌だけど、重症な証で、先生たちが面倒見てくれてる証で、なんか嬉しかった。

取り押さえられるのは、嫌だけど、嬉しかった、構ってくれてる、私を見てくれてる、相手してくれてるって。でも、保護室にぶちこまれたり隔離されたあとは、泣いても叫んでも誰も来てくれないし、過呼吸になっても気づいてすらくれないし、すごく悲しかった。どれだけ何時間泣き続けても、来てくれないから。

あとは48錠またODして救急車だったり。寒気がすごくて。食べて吐いたあとだったから、出てくるものはもうなくて、胆汁がほんのすこし出てくるだけ、それ以上でないのに、吐き気だけ酷かった。

チューブ吐きっていうものに手を出したりして、吐くのがやめられずに食道が傷ついて血を吐いて入院しました。

あとは、切るときは多分解離の一種みたくなってます。それは昔からありましたが、神聖な空間に入って、白いところに自分だけ別世界にいます。痛くないです。痛みはどうでもよくなるので。

とにかく一番になりたかった。先生の一番に特別になりたかった。それで努力しました。先生の中から自分が消えたら終わりでした。先生の気を引くためだけに努力しました。とにかく見てほしかった。他の患者さんより見てほしかった。

「先生私を見て」
「こんなに苦しいの助けて」
「どこにも行かないで」
「見放さないで」
そんな気持ちがすごく強かったです。

家に警察が来るほどでした。「死ね!死ねえええ!私はこんなに苦しいのになんで!!死んでしまえ!!どれだけ苦しいかもわからないくせに!!死にたい早く死にたい死にたい!!助けてよねえ!!」と泣いて叫んで暴れて過呼吸、とかの繰り返しでした。

そういう爆発スイッチが入るきっかけはいつも些細なものでした。
とにかく苦しくて死にたくて仕方がなかったです。

こんな感じで長い文章をごめんなさい。

留意していただきたいことは、
・現在も通院は一回もやめることなく継続していること
・カウンセリングをしていた時期もあったこと
・主治医の先生との信頼関係は築けていると思うこと
・虐待の事実は一切ないこと
・家の空気は悪いことも多く、父を母と一緒に嘲笑うのが楽しいことがある、父は冷血で私たちに関心がないが、笑って話すこともたまのたまにはある、母は優しすぎるくらい優しくて、こんなに私が迷惑をかけまくっているのにも関わらず、笑って接してくれるとてもやさしい人です。機能不全っぽいところはあるかもしれませんが、機能不全家族の特徴にあてはまるかは詳しくはわかりません。父は本当に大嫌いなことが多いですが、母はとてもやさしくて大好きなことのほうが多いです。
・記憶がなくなることはありません。
・主治医の先生に尋ねたことはありますが、境界性パーソナリティ障害ではないとの答えでした。
・泣いているのがたまに自分で演技なのではないか、と思うことがあります。今までも先生の気を引くために症状を自分で作っているようなことが何度もありました。ただ、口で症状を言うだけ、とかではなくて、本当にその病気の症状が作れてしまいます。解離した世界も、腕が自分のものじゃないみたい、と思い込んだら、そう見えてしまったり、などです。病気に当てはめるために症状を作ろうとしても、ふつうは作れないのでは?とも思います。
・質問が多くてメールも長くて本当に申し訳ないです。ごめんなさい。

主治医の先生に短い診察時間でこんな長文をまとめて聞くことは難しいし、何度も聞いてこの期に及んでまた聞いて、うざがられるのはもう嫌なので林先生に聞かせてください。

私の文章は足りないことが多く、またわかりにくいかもしれないので、林先生が回答されているもので類似していると私が思うものは【1677】自閉症の息子に毎日「お母さん死んで!」と言われて耐えられません【3487】大暴れして入院を繰り返している18歳の娘【3386】パーソナリティ障害が体調に変化を及ぼすことはありますかなどです。

お忙しいところ大変恐縮ではありますが、お願いいたします。

 

林: 症状を、そのときの気持ちもあわせて、詳しくお知らせいただきありがとうございました。

(1) アスペルガー症候群と境界性パーソナリティ障害が同時に存在することはありえますか?

通常はこの二つは別の概念として扱われます。つまり、仮に、診断がアスペルガー症候群で、しかし症状として境界性パーソナリティ障害に似たものが出ているときは、アスペルガー症候群と境界性パーソナリティという二つの診断名をつけるのではなく、アスペルガー症候群の二次的な症状として境界性パーソナリティ障害に似た症状が出ていると考えます。けれどもそれは考え方にすぎず、二つの診断名をつけるという考え方もあります。

(2) 虐待がなくても境界性パーソナリティ障害になることはあるのですか?

あります。

(3) 私の下記に記す状態は境界性パーソナリティ障害ですか?

境界性パーソナリティ障害にかなり似ています。

(4) 自閉症スペクトラム(アスペルガー)で、下記に記す状態は説明できますか?

少なくとも自閉症スペクトラムに特徴的な症状とは言えません。けれども(1)にお書きしたとおり、「アスペルガー症候群の二次的な症状として境界性パーソナリティ障害に似た症状が出ている」と考えることはできます。

(2018.4.5.)

05. 4月 2018 by Hayashi
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