【3475】中学時代にどこかに相談すれば病気は防げたのでしょうか
Q: 40代の女性です。 24歳の時から精神科に通院し、今は統合失調感情障害と言われています。過去のことを聞いてもどうにもならないと思うのですが、気になるので相談します。
中1までは学級委員を務めるくらい活発な女の子でした。ところが中2になりクラス替えをすると友達関係に悩むようになりました。担任の先生にも元気がないと目をつけられ、事ある事に面談をしました。その頃私が考えていたのはこんなことです。
自分は友達と何かが違う、周りが楽しいと思うことも同じように感じない。自分が幸せになれないと思っていました。
休み時間は1人で本を読んで過ごし、みんなが教室移動した後の真っ暗な教室で、ひとりでいることもよくありました。成績も2段階ぐらい下がり、体調不良を訴えて保健室に行くもベッドに横にはならず、椅子に座って1時間ぼーっと過ごすと言うこともありました。家に帰れば死にたいと思い、涙ながらに手首を切ってたこともあります。
また、1人で部屋にいると妄想というか膨らみ、頭の中でいろんな人が話しかけてくるので、それに声に出して答えていました。兄弟がいないのでそれが異常なことだと思わず、友達ができたように楽しかったのです。
自分は周りの友達とは違うという根本的な悩みは解決せず、カウンセラーと呼ばれる人や精神科のドクターに話を聞いてもらいたいと思っていましたが、親が厳しかったので自分からは言い出せず、また田舎で偏見も強かったので叶いませんでした。
受験には何とか合格し、進学しました。その頃には悩みは少し解消していましたが、高3の終わり頃、席替えで前から2番目の席に行くと、後ろから見られているような感じになり全く授業に集中できなくなりました。
一浪して大学に進学すると、今度はハイになり1年生の時は怖いもの知らずでした。
実験の授業中もずっとしゃべりっぱなしだったり、告白して振られた男性に長い嫌味の手紙を送りつけたり…。
大学院に進学した後、家族の病気をきっかけに私が不眠に陥り当時通っていた大学の保健管理センターに行き、そこから精神科を紹介されました。
私はいつからおかしかったのでしょうか?
思っていたように中学時代からどこかに相談していれば、病気になることは防げたのでしょうか?
今は相談機関も進歩していますが、当時はネット等なくひとりでもんもんと悩んでいました。今でも引っかかってる位です。
同じように今でも悩んでいる中学生がいたら参考になればと思い相談します。
最後に一つだけ。
いま、主治医から幻聴は無くならないみたいだねと言われています。
これから先の予後にどんな影響がありますか?
林:
中学時代からどこかに相談していれば、病気になることは防げたのでしょうか?
これはかなり難しい質問で、現代の精神医学の大きな問題の一つに密接に関係しています。それは、
精神病の早期の徴候とは何か?
そして、
その徴候が認められたときはどうすべきか?
という問題です。
(この【3475】の質問者は統合失調感情障害と診断されているとのことですが、統合失調感情障害は統合失調症にかなり近い病気です。現代の診断基準では両者は別項目になっていますが、生物学的には、つまり病気の基盤にある脳内のメカニズムにはかなりの共通点があり、別々の病気としているのは診断基準における便宜上のことにすぎません。また、それらをあわせてどう呼ぶかについては、「精神病」とするのが一つの一般的な呼び方ですが、「精神病性障害」という呼び方などもあります。この【3475】の回答では以下、「統合失調症等」と呼ぶことにします)
この問題に関する質問は精神科Q&Aにもたびたび頂いています。【2007】統合失調症らしい症状が私にはあるのですが、悪化のおそれがないのなら病院には行きたくありませんなどをご参照ください。
現代の精神医学の大きな問題の一つである以上、
中学時代からどこかに相談していれば、病気になることは防げたのでしょうか?
に対する答えは「わかりません」が正しい答えと言えますが、この【3475】の質問者の意図である、
同じように今でも悩んでいる中学生がいたら参考になればと思い相談します。
という観点からすれば、
この【3475】の質問者のようなケースでは、中学生の時点で相談(受診)したほうがよい
とまでは言えると思います。
なぜなら、統合失調症等では、前駆期や発症の初期に自殺のおそれがあるからです。(【0688】14歳のある日突然自殺してしまった息子、【0301】17歳の時に自殺を図った私の弟は本当にうつ病でしょうか、【2010】娘が自殺しました。精神科に行くべきだったのでしょうか
などをご参照ください)
つまり、中学生の時点で病気の「発症」が防げたかどうかはともかく、「自殺に至るような著しい悪化」は、受診すれば防げることが大いに期待できるからです。この【3475】のケースは幸いそのような著しい悪化には至りませんでしたが、【2010】のような経過も考えられたわけで、【2010】は精神科を受診していれば最悪の結果は回避できたでしょう。【0688】のようなケースはあまりに突然ですが、それでも振り返ってみれば精神病の徴候は認められており、精神科を受診していれば・・・と悔やまれるところです。
最後に一つだけ。
いま、主治医から幻聴は無くならないみたいだねと言われています。
これから先の予後にどんな影響がありますか?
「予後にどんな影響」というのは曖昧で、質問の意図が不詳ですが、これからの経過についての質問であると広く解釈すれば、「再発・再燃を防止するため、定期的な通院・服薬が必須」という答えになるでしょう。(「幻聴」は「病気の症状」ですので、その有無が予後に「影響」するかしないか、という質問は成立しません。「幻聴が続いていることから今後の経過がどう予測できるか、また、その経過をよくするためにはどうすべきか」という質問なら成立します。上記はそれに対する答えです。)
(2017.7.5.)