精神科Q&A
【0301】17歳の時に自殺を図った私の弟は本当にうつ病でしょうか
Q: 現在32歳になる私の弟は17歳の時に自殺を図りました。一命は取り止めましたが、その後、2年近く精神科へ入院いたしました。医師からは、原因は不明ですとだけいわれました。退院後15年ほどたちますが、その間に、就職もし、結婚もし子供にも恵まれましたが、2年ほどまえから、体がだるいなどの症状を訴え、再び精神科の診察を受けました。結果はうつ病との事でした。その後は自殺未遂など図ったようです。
現在は、大分落ち着いてきたようですが、薬のためか、言葉を話すときに口がうまくまわらないようです。よく、うつ病では、倦怠感や何事もやる気が起こらないと聞きますが、弟の場合は、意欲的に動いているようです。ただし、すぐに疲れてしまうようです。そして、何かを教えても以前よりは理解力がありません。本などに出ているうつ病の症状とは、違うようなのですが?
林:あまりうつ病らしくない症状と経過に見えます。 17歳で自殺企図、その後2年近く入院、という部分だけを見れば、もっとも考えられるのは統合失調症(精神分裂病)です。しかし当時の症状がまったく不明ですので、何ともいえないところです。ただ言えるのは、17歳でうつ病というのはまれであることと、うつ病で2年近くも入院が必要になることもまれだということです。
仮に統合失調症(精神分裂病)であったとして、その後普通に就職・結婚されたということに、まったく矛盾はありません。統合失調症(精神分裂病)の最初の症状がいかに重くても、このようにすっかりよくなられることはよくあることです。そのままずっと良い状態が続くこともあれば、何年もたってから再発することもあります。再発は幻覚や妄想が出ることが多いのですが、一見するとうつ病のような症状(「すぐ疲れてしまう」「理解力がない」)になることもあります。これを陰性症状といいます。ただし、薬の副作用である可能性もあります(だからといって薬を不用意に中断してはいけません)。
結局、弟さんの診断のポイントは、17歳のときの症状だと思います。当時の主治医の先生に確認するのがもっとも確実でしょう。