【5013】睡眠薬による異常行動で困っています
Q: 大学生21歳男性です
2年ほど前から不眠症、抑うつにて精神科に通っておりますが、睡眠薬服用後の健忘があまりにも異常でこまっております
以下処方された(されていた)睡眠薬
- 今年まで
- ブロチゾラム0.25 デパス1mg
- ブロチゾラム0.25 デパス2mg
- サイレース1mg デパス0.5mg
- デエビゴ10mg
- サイレース1mg デパス0.5mg
- ブロチゾラム0.25 デパス3mg ランドセン1mg
ベンゾジアゼピンばかり、というような印象がありますが、デエビゴでは入眠困難かつ3時間の中途覚醒が防げないからであって、相談した結果です。
主治医は”慣れる” ”よくある” といいますが、私にはこれが2年目で、なれるという段階ではないはずです
さて、健忘による異常行動としては
- 料理をする
- 切り裂いた本を炒める
- 割れるものを破壊する
- 包丁やナイフでモノを切り刻む
- それに伴って怪我をするため部屋に血がつく
- 文章ですらない意味不明な文言を送信する
- 意味不明な落書きを壁や床あるいは物にする
- 薬を全部飲む
- 薬を一箇所に隠そうとする
- 何かを探そうとして家中を探す
- それらの様子をスマートホンで撮影する
- 徘徊する
- 誤って飲まないようにしておいた薬を探しあてて飲む
これらのことは「ほとんど一切の記憶がなく」撮影されたものや目覚めてからでしか把握できないことであって行為中の記憶があったとしてもごく断片的です。さらに、「一度しか」おこらないわけでもなく、落書きや薬を全部飲むのような行動が頻繁な印象があります。
特に薬を大量に飲んでしまいますと、睡眠薬が足らなくなるうえ体に悪影響だと思いとても不安なのです。
*慣れる* とか *よくある* と言われましてもこのようなことが収まらねば睡眠薬が不足する上に経済的にも社会的にも問題を生じることになるはずです。
主治医は健忘で料理をしたなんて聞いたことがないともおっしゃられました。
これは何らかの疾患といえるのでしょうか。
少なくとも睡眠薬を「飲まない」ことによる解決方法はできないと強く思っております。
林: これは睡眠薬によって起こるよく知られている副作用です。
【1998】就寝前の薬を飲んだ後に記憶が飛ぶようになりました 、【2608】うつ病と夢遊病、【4452】薬の副作用としての夢遊病は寝る前の気持ちに関係しますか なども同様の副作用ですのでご参照ください。
対策としては原因となる睡眠薬を徐々に減量し中止するのが唯一の方法です。但し薬の副作用が問題となる場合の常として、その薬が必要だからこそ服用しているのであって、「減量して中止」という対策は、理論的にはその通りでも、現実にはそんなことはできないということはしばしばあります。この【5013】でも
少なくとも睡眠薬を「飲まない」ことによる解決方法はできないと強く思っております。
とのことですから、減量して中止せよと言われてもそうはいかないということになると思います。
けれども、対策は 睡眠薬を「飲まない」 ではなく、上の回答の通り、「原因となる睡眠薬を徐々に減量し中止」です。つまり、睡眠薬の副作用といっても、どの睡眠薬でもこの副作用が出るというわけではありませんから、「減量して中止」するのは、「原因となる睡眠薬」です。【5013】の質問者が服用されている睡眠薬のうち、この副作用の原因となる睡眠薬は、サイレースとブロチゾラムです。それからデパスは睡眠薬ではありませんが、同様の副作用が起こり得ますので、減量して中止を目指すのは、サイレース、ブロチゾラム、デパスということになります。これら3つの共通点は、ベンゾジアゼピン系の薬であるということです。(デパスは厳密にはベンゾジアゼピン系でありませんが、同種であるということができます)。【5013】の質問者が経験された症状(睡眠随伴症状)は、睡眠作用のある薬であればどの薬でも発生し得るとまでは言えますが、発生頻度には大きな違いがあり、ベンゾジアゼピン系以外の薬では発生はかなり稀です。デエビゴはオレキシン受容体拮抗薬で、ベンゾジアゼピン系でありませんので、デエビゴが原因という可能性はきわめて低いですから、服用を継続して構わないと思います。但し【5013】の質問者の処方内容からみて、サイレース、ブロチゾラム、デパスをすべて中止した場合、デエビゴだけで睡眠がとれるとは考えにくいので(デエビゴを極量まで増やしたとしても難しいと思います)、他の薬を追加することが適切でしょう。その場合の候補としては抗精神病薬で、私の経験上は、このような場合には第一世代と呼ばれる昔からある抗精神病薬が適切だと思います。
(2026.1.5.)



