【4968】非常に強い妄想体験を持っている人がなぜ精神科Q&Aに質問するのか?
Q: 30代男性です。あまり他人の質問に介入するのは良くないかもしれませんが
【4413】好きな人に食べられたい で気になったことがあります。
それはこの質問者の方が非常に強い妄想体験の中にいらっしゃるのに林先生にこのサイトで問いを投げかけていることです。
どうやらイデア界という場所におられる方に会うために自死を考えておられるようで、質問文からはそのおそれがかなり強そうな感じがしますが、これがどうにも釈然としません。どっぷりと妄想幻覚に浸かっているなら林先生に質問せず(残忍な言い方ですが)迷わず行動されていそうなものです。もしかしたらごく僅かに病識や病感があるのか、それとも止めてほしいのか、妄想がまだ不完全なのか?林先生はどうお考えでしょうか?私も似たような妄想を持っていたことがありますので気になります。
林: このご質問は、【4567】純粋な被害についての相談を林先生にする方がいるのはなぜでしょうか と同趣旨であると思われます。回答は【4567】の通りですので【4567】をご参照ください。【4567】から一部転記いたします:
精神病(特に統合失調症)の病識、すなわち、自分が病気であるか否かについての認識の本質にかかわるご質問です。ご指摘のように、質問文からは、本人は自分が病気であるなどとは全く思っていないことが読み取れるのに、精神科Q&Aに質問される方はたくさん存在します。 この点については、【1514】皆と同じようにipodの手術を受けたい の 続き に記したように、また 【3158】病識の無さのレベルについて の質問者が推定しておられるように、「自分が病気であるなどとは全く思っていない」という表面的な言葉に反して、内心では自分の精神の変調を自覚している、というのが一つの説明といいますか解釈ということになります。(その「自覚」は意識されていない「自覚」ですので、「自覚」という言葉の本来の意味とは異なりますが)。ただし「解釈」とはいうものの、現実には、「自分は病気ではない」と断言する一方で精神科に通院して薬も飲むケースは膨大に存在しますので、この「解釈」は、証明する方法こそありませんが、正しい解釈であることは確実に近いと思われます。
(2025.7.5.)