【4777】コミュニケーションが苦手なだけでは発達障害とはいえないのでしょうか

Q: 30代女性です。
コミュニケーション、特に雑談や人の輪に入ることが幼少時から苦手です。
現在も職場で周りの同僚たちが雑談で盛り上がってる横で話に入れず、無力感を日々感じています。

仕事上必要な最低限のコミュニケーションはできるのですが、それに付随するようなちょっとした雑談などができません。

例えば
・話に入るタイミングや何を話せばいいかがわからない
・外出からオフィスに戻った際に同僚に「外寒かった?」と聞かれ「忘れました」と答えてポカンとされる (外にいる時そもそも温度を全く気にしていなかったため寒かったかどうかわからない。 また、自分の体感と他の人の体感が全く違うこともあり得るため軽く答えられない)
・お土産のお菓子をもらったときに適切な反応が瞬時にできない。お礼は言えます。
などがあります。

小学校3年から中学3年までは友達がいましたが、高校に入学して人間関係に溶け込むことができず不安になり、退学しました。

人間関係以外では下記のような状態もあります。

・方向音痴、空間感覚がない
(ファミレスでトイレの帰りに席に戻れない。 大学で同じ大教室なのに、別のドアから出入りした際に違う教室だと勘違いしていた。  移動する際もすべて「このポイントで曲がる」などの道順だけで覚えているため、方向の感覚が無い。)
・車の運転免許を取るのに規定時間数の2倍時間がかかる
・マニュアルや決まった答えがある仕事はできるが、自分で考えたり創造することができない。
(学生の時美術の授業で作品を作るのも発想が何も出てこず苦手だった。模写ならできる。)
・強迫的傾向
(図書館や本屋の本を触れないなど。 児童期はぬいぐるみを決まった順番に並べてぬいぐるみの名前を順番通りに暗唱してから寝る習慣があった。)
・常に無愛想な態度になってしまう
・女性らしいファッションや振る舞いができない
また、女性ならではの美容などの会話に入れないどころか、引け目を感じる。
・駅などで人がぶつかってきたりすると自分が馬鹿にされていると思って過剰に怒りを感じ、やり返そうとしてしまう。
・人生でいいことなど何もない、頑張っても何も報われない、自分は死んだ方がいい、などのネガティブな考えが頭に浮かぶことが多く辛い

なんとか性格の合う夫と結婚することができましたが、今後子どもができた場合にいわゆるママ友などの女性同士の人間関係が増えることを考えると憂鬱でたまりません。

 

林:
コミュニケーションが苦手なだけでは発達障害とはいえないのでしょうか

まずこのメールタイトルのご質問にお答えします:  コミュニケーションが苦手なだけでは発達障害とはいえません。いえるはずがありません。コミュニケーションが苦手なだけで発達障害といえるのであれば、主観的に「自分はコミュニケーションが苦手」と自認する人は全員が発達障害ということになります。また、客観的に「この人はコミュニケーションが苦手」と判断できる人も全員が発達障害ということになります。そのようなことがありえないのは当然です。したがって、「コミュニケーションが苦手なだけでは発達障害とはいえないのでしょうか」に対する答えが「いえません」であるのはあまりに自明ですので、この質問は質問として成立していません。

けれども【4777】の具体的な質問内容は、メールタイトルとは別のものになっています。すなわち、【4777】の質問者は、「コミュニケーションが苦手」という抽象的なことをおっしゃっているのではなく、ご自身の具体的な問題について質問しておられますので、無意味であるのはタイトルだけで、質問内容は十分に意味があるものになっています。そして、ご自身のコミュニケーションの問題として質問者が挙げておられる内容は、発達障害の色彩があるものです。そしてさらに、「人間関係以外」として挙げておられる内容も同様で、たとえば「方向音痴、空間感覚がない」の内容は、発達障害の方によく伴う症状です。

したがいまして、【4777】の質問者には、発達障害の傾向があるとまでは言えます。ただし「発達障害の傾向がある」と「発達障害と診断できる」は別で、そして、メールの記載内容からは、よほど確実に発達障害と診断できる例 (たとえば 【4317】弟は発達障害でしょうか? 病院に連れてゆくべきでしょうか?、 【3803】いくら注意しても全く改善が見られない後輩、 【1677】自閉症の息子に毎日「お母さん死んで1!」といわれ耐えられません、 【1676】アスペルガーの息子が、母親である私を「エロイ」と言って譲りません、 【1592】成績は最低だが記憶力は抜群の弟) 以外は「発達障害の傾向がある」とまでしか言えませんので、【4777】について言えるのも「発達障害の傾向がある」までにとどまります。

(2024.1.5.)

05. 1月 2024 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A