【4317】 弟は発達障害でしょうか? 病院に連れてゆくべきでしょうか?

Q: 私は10代女性です。今年高校生になる弟について質問させていただきます。
弟は
・話が分かりにくく会話が下手
・思考回路が幼稚
・すぐパニックになる
・覚えているはずのことを忘れる
ということが多く、発達障害ではないかと疑っています。私自身ADHDでコンサータを服用しています。私の父もしょっちゅうものをなくす、落ち着きがない、人の話を聞かず自分勝手に解釈するなどADHDのような症状が見られます。
現段階では弟本人は特に困っていないようですが、一度病院でみてもらったほうが良いのでしょうか?
母も弟は発達障害ではないかと疑っているようですが、医者にかかるほどひどくなく、弟自身の努力でどうにかなるのでは、と言っています。外では家族の前ほどパニックがひどくない(=自分で制御できるのではないか?)ことに加え、ひとたび発達障害という診断を受けると、弟は発達障害を理由というか言い訳にして本来できることまでやらなくなる事を危惧しているようです。

以下は弟についての具体例になります。

(1) 話が分かりにくく会話が下手
まず、自分の興味のあることしか話しません。家では弟以外あまりテレビを見ず、私自身興味がないのですが、彼はしょっちゅうテレビの話を振ってきます。お前以外みんな興味ないから違う話をして、と何度言い聞かせてもテレビの話をします。以前遠足に浮足立っていたときは母に遠足のことばかり聞いていました。場の’流れ’を読むのも苦手で、一瞬黙ったすきに全く関係ない話題を出すことがあります(ただしこれは改善傾向にあります)。
明日出かける時間を聞いたのに友達との待ち合わせ場所を答えるなど、人の話を聞かない、というより話を理解せずに返している傾向があります。質問を完全に無視して話すことも珍しくありません。聞かれたことを勘違いし、いわゆるアンジャッシュ状態になることもあります。頭の中で「こうだろう」と決めつけた事を訂正するのに時間がかかっているようです(これは私も同様です)。
主語、目的語が抜け落ちやすく、何を言いたいかよみとれないことが多いです。「今日ね、学校でグダグダだったんだ」などと言います。こちらが「何がグダグダだったの?」と聞き返すと「総合の授業」という感じで返してくれるので、彼の頭の中で分かっていることを省略しているように見受けられます。また、言葉の使い分けも苦手なようです。例えば、話す、尋ねる、答えると使い分けられるところをすべて「言う」で代用することがあります(例:「今日〇〇先生が××って言ってて、隣の子に〇〇って何?って言われたから僕はこれのことだよ、って言った」)オノマトペの使用も多いです。
この他、’てにをは’ や する/されるを言い間違えることがあります(友達がやった、とすべきところを友達がやられた 、と言うなど)。こちらは歳を重ねたのか、私と母が口酸っぱく正したからか、少なくなりつつあります。むしろ父がいい間違えたとき(父は助詞「が」と「に」を取り違えることが多々あります。弟も同じなのですが、私が指摘すると父は助詞を直し、弟は動詞を直します)、それを訂正できるくらいになりました。

(2) 思考回路が幼稚
少し考えれば分かることや、常識に照らし合わせれば分かることを聞いてきます。以前、非耐熱の木製お椀を電子レンジにかけてだめにした時、何を思ったのか「このお椀をオーブンに入れる人っているの?」と尋ねてきました。「常識的に考えて、いるわけないでしょう」と返すと「そっかぁ」と納得します。何も考えず話しているような状態です。また、母に叱られている時に平然と屁理屈をこね、さらに怒られることもしばしばです。高校生ともなれば親に叱られている途中変に口ごたえをするとまずいことになる、ということは分かっても良さそうなものですが、弟にはぴんとこないようです(これは人の話を理解していない、場の空気を読めないことも関係しているかもしれません)。
これと関連するかは微妙ですが、弟は会話で聞き逃したことがあると、文脈から推測できる単語であろうが聞き直してきます。ある程度自分で推測するよう言っていますが、効果が見られません。

(3) すぐパニックになる
焦ったり、やりたくない事を強制的にやらされたりすると体をひどくかきむしり、悪態をついたり物を投げたりします。
そのせいで30分程度で終えられる宿題に何時間もかけてしまいます。こうなると両親が何言っても開き直りまるで聞き入れません(父はこの状態の弟が苦手らしく、叱ることを放棄しては母に怒られています)。パニックがすぎるとしおらしくなったりケロッとしたりしています。また、少し思い通りにいかないときも大げさに悪態をつきます(ついさっき、教科書を別の場所に無断で移動した父親をテメエ呼ばわりして罵倒し、両親から説教を食らっていました)。母によると上記のような行動を学校から聞いたことはないとのことで、家族だから甘えている面があるかもしれません。小さいころはひどく泣きわめいて暴れていたので、歳を重ねることに落ち着いてきてはいます。しかしちょっとしたことで切れたり悪態をつく癖は治っておらず、正直社会でやっていけるか不安です。

(4) 覚えているはずのことを忘れる
授業で習ったはずのことができなくなります。このせいで父や母は苦労しています。日常でも知っているはずの言葉を聞いてくることがあります。パニック状態のときはよりひどくなります。会話していても話がさっきと食い違い、話の道筋が見えなくなることがあります。

その他発達障害が疑われる事柄です。
(5) 匂いに敏感。幼稚園のとき、お遊戯会の衣装の匂いを泣いて嫌がった。
(6) 小学校低学年まで緘黙気味で、クラスの子と全く話さなかった。学年が上がると嘘のようにおしゃべりになった。
(7) 何でも大げさに言う。とくに自分の嫌なことはオーバーに表現する。
(8) 独り言が多い。
(9) どこでも大声で歌を歌う。「うるさいよ」と注意しても「姉ちゃんこの曲知らないの?」とずれたことを返し、一向に直る気配がない。
(10) 広告などの売り文句を真にうける。

 

林: 弟さんは発達障害(広汎性発達障害)に間違いありません。具体例として記されている(1)から(10)はいずれも発達障害であることを強く支持するものです(一つ一つだけを取り上げれば、発達障害でなくてもありうる項目がいくつかありますが、全体像としてみれば、どの項目も発達障害を強く支持する所見と言えます)。また、質問者であるお姉様がADHDであること、お父様も発達障害と思われることを合わせれば、弟さんは発達障害に間違いないと結論できます。

問題は、では病院を受診すべきか という第二のご質問です。
これだけ確実な発達障害の所見があれば、「病院を受診して診断を受け、発達障害としての適切な支援を受けることが弟さんにとって最善です」というのが当然の回答になると言えるでしょう。弟さんの受診について、お母様が消極的であることの理由として、たとえ発達障害であったとしても、
(1) 医者にかかるほどひどくなく、弟自身の努力でどうにかなるように思われる。
(2) ひとたび発達障害という診断を受けると、弟は発達障害を理由というか言い訳にして本来できることまでやらなくなるおそれがある。
という二つが挙げられていますが、(1)については、そのようにして学生時代を何とか切り抜けたものの、社会に出てから発達障害による問題が顕在化し、もっと前から支援を受けていればそういう問題は発生せずに済んだのに、という残念なケースはたくさん存在しますので、たとえ今のところは大きな問題がなくても、将来を考えると診断と支援が必要であると言えます。それに、弟さんについての具体的な描写をみますと、弟さん自身の努力で解決できるレベルはゆうに越えていると思われます。
そうしますと先ほど述べた通り、「病院を受診して診断を受け、発達障害としての適切な支援を受けることが弟さんにとって最善です」ということになりますが、現実には、発達障害の適切な支援を提供できる場所がどれだけあるかという問題があります。つまり今の日本の現状では、発達障害の診断まではできても、支援のシステムがない医療機関が大部分だということです。そうしますとお母様の第二の危惧、すなわち、診断は受けたものの本人にとっても周囲にとってもかえってデメリットしか残らないという事態が発生し得ます。
ですので、受診する場合は、その病院で支援までが可能なのか、あるいは支援が可能な施設等へのルートを病院が持っているかという確認が事前に必要ということになります。実際には発達障害を支援する社会資源にはかなりの地域差があるというのが現状です。

(2021.5.5.)

05. 5月 2021 by Hayashi
カテゴリー: ADHD, 発達障害, 精神科Q&A タグ: |