【4701】薬を減らさないことのデメリットを知りたいです (【4431】〜【4681】のその後)

(林注:【4431】暴れてしまったりします。私は統合失調症ですか? 【4441】統合失調症の治療が始まりました。時々暴れてしまいます。 フローを体験したいです。 【4451】薬は効いているように感じますが、私は本当に統合失調症でしょうかの、【4471】本当に幻聴でしょうか  、【4481】統合失調症の症状はおさまってきましたが、つらいです  、【4491】不安、うつ、誇大感、常同行為【4511】落ち着きがなくなる。偉人になりたい。【4521】興味の喪失。幻聴の消長。早く治りたい。人への憎悪。【4531】統合失調症の発症はいつだったのでしょうか  、【4551】統合失調症は治ったのでしょうか、それとも治っていないのでしょうか 、【4561】急にではなく段階的に治っていくのでしょうか【4581】転院することになりました【4611】入院翌日に退院しました【4621】承認欲求もしくは賞賛への執着【4631】1年前よりは良くなっているのは確かだと思います【4641】悪い幻聴が減りました【4661】主治医から薬を減らそうかと言われました【4671】幻聴はほとんどなくなってきました【4681】意欲が出てきました の質問者 (【4431】の時点で17歳の男性)から、その後の一ヶ月に6通のメールをいただきました。順に示します)
Q:
1 X+19月5日
以前、ASDの傾向があると言われました。その後、心理テストを行なった心理士(?)さんに心理テストの結果の詳細を教えてもらいました。何を言っていたのかほとんど覚えていませんが、総合IQのようなものが84で普通より少し低いことと、ワーキングメモリが84だったのを覚えています。他にも三種類ほどIQのようなものがありましたが、それらは忘れてしまいました。その方が言うには、私は自分の気持ちを抑えがちで、長い話を聞いて頭の中で整理するのが苦手であるそうです。これ以外のことは忘れてしまいました。

現在の薬ですが、ロナセンやエビリファイなどなのですが、薬を飲みやすくするために一袋に薬をまとめてあるので、何mgなのかわかりません。ロナセンテープ2枚とエビリファイ24mgかもしれません。
他にも足のむずむずを抑える薬を飲んでいます。

薬を減らさないことのデメリットについて知りたいです。まず私はもう二度と幻覚を体験したくないです。最近は精神科に通うたびに主治医は薬を変更しようかなど、私に相談しますが私は今のままがいいので薬を減らしていません。できれば、このまま死ぬまで薬を減らさず精神が安定した状態で生きていたいのですが、薬をずっと減らさないとなにか悪いことが起こったりするのでしょうか?私は1型糖尿病で直近のヘモグロビンA1cはたしか7.3でした。良いわけではないですが、悪くもないです。薬はやはり減らしたほうがいいのでしょうか?確かに足がむずむずする症状があります。病院の診察までの待機時間も足をバタバタさせてます。しかし、足のむずむずよりも統合失調症の症状の方が怖いです。

2   X+19月18日
競技プログラミングはまだ続けています。最近少し体調が悪くてできないこともありましたが、続いています。統合失調症の症状が激しかったころは何かに夢中になることはありませんでしたが、今はそれなりに夢中になれています。最近は数学にも興味が湧いてきたので数学も少しずつやっています。ASDに関する精神科医が書いた本を読んだのですが、難しい内容でも興味があるならやってみるといいようですので挑戦します。昔は自分より優れた人がいるとやる気がなくなるようなことがありました。人生は不平等であると思いそのことに憤りを抱いていましたが、今は受け入れられています。

3  X+19月22日 その1
最近薬を飲み忘れることがあります。環境が変わった影響だと思います。特に激しい幻聴などは起こりません。ただ、少し体調が悪いと感じることがあります。季節の変わり目だからかもしれません。薬を飲み忘れないように注意します。

4  X+19月22日 その2
残っている薬の数を数えたところ二日ほど飲み忘れているようです。今日も飲み忘れています。今日は朝から憂鬱でなんだか、自分が生きているのかわからないような感覚でした。また、ショーペンハウアーの本を読むなど、統合失調症が激しかった頃と同じようなことをしていました。気をつけます。

5  X+19月23日 その1
以前も質問したような気がしますが、薬を減らすメリットはあるのでしょうか?

6  X+19月23日 その2
吐き気は少し残っていますが、残便感や頻尿のような症状は完全になくなりました。

 

林: これまでの回答の通り、あなたの統合失調症は順調に回復しています。特に【4621】からはその回復は一段上の段階に達し、それ以後も順調な回復が続いています。このような順調な経過をたどっているとき特に注意すべき点は、油断して薬をやめたり急に減らしたりしないことです。仮に今はそういうことをしていなくても、将来において必ず、もう薬はやめていいのではないかと思うときが来るものです。そして実際に薬をやめてしまい再発するというのが、非常によくある経過です。

ただしあなたの場合は、糖尿病を合併しているという特殊事情があります。抗精神病薬の中には、糖尿病の場合は禁忌(つまり、糖尿病の人は飲んではいけない)薬がいくつもあります。現在あなたに処方されているエビリファイ、ロナセンは、禁忌ではありませんが、糖尿病を悪化させるおそれは否定できません。したがって、定期的に糖尿病の検査をすることは必須ですし、また、薬の量を必要最小限にする必要があります。

最近は精神科に通うたびに主治医は薬を変更しようかなど、私に相談します

主治医の先生のこのご相談は、そのこと、すなわち、糖尿病を合併しているあなたのためには、抗精神病薬は特に最小必要量にとどめる必要があることから来ていると推定できます。
他方で、

私はもう二度と幻覚を体験したくないです。 [・・・] 私は今のままがいいので薬を減らしていません。

あなたのこのようなお気持ちもよく理解できるところで、そして、一般論としては、統合失調症の方はよくなると性急に薬を減らして悪化してしまうことが多いので、あなたのこの姿勢は一般的にはむしろ望ましいと言えます。

すると【4701】の現時点では、薬を減らす・減らさない(減らして様子を見る)ことの、どちらも一理ある方針であるということになります。
もし今の薬が、統合失調症のこの時期の量としてあまりに多すぎるということであれば、「減らして様子を見る」方針に傾きますが、量が不明とのことですので、その判断をここでお示しすることは不可能です。

(2023.7.5.)

その後の経過 (2023.8.5.)

05. 7月 2023 by Hayashi
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