【3856】彼の虚言は常態化していることがわかりました(【3822】のその後)

Q: 【3822】私にだけ病的な虚言を吐く知人 の質問を送った20代女性です。
回答してくださりありがとうございました。

前回メールを送信した後、分かったことがあるので報告させて頂きます。

林先生が仰った「虚言が常態化している」というのはまさにその通りでした。
AはB以外にも私に何人かの友人を紹介していたのですが、先日そのうちの一人の大学時代からのAの友人(Cとします)と連絡を取りました。
その際CにAと連絡を絶ったことを伝えたところ、Aからその話を聞いていたようだったのですが、話の内容は全く別物になっていました。
Cが聞いた話では、私がAに恋愛感情を持ち、誤解してAの彼女について怒った(?)というような内容だったそうです。
Aはなぜ彼女でもない女にそんなこと言われなきゃいけないのか、気持ちが悪い、と言っていたそうです。
腹が立ったのでCにAとのことをすべて話しました。すると、CはAについて色々な話をしてくれました。

Aは大学時代から虚言で有名で、とにかく自分は才能があり有能で、褒め称えられたり大勢に好かれたり女性にモテて魅力があるんだと周囲にアピールしていたそうです。
しかしそれが現実離れしていることや、疑問に思った人が追及するとその人を拒絶し、新たに虚言を繰り返し、結局Aは大学で孤立しました。
Aが大学を休学したのは、度重なる虚言により孤立したことが理由でした。
私も上記のような内容の話をAから繰り返し聞かされていました。冗談だろうと流していたので、いつも「ほんとナルシストだね」と適当に返事をしていたのですが、Aは不満そうでした。

数か月前Aが私に「高校の同級生と喧嘩して絶交した。あいつらは馬鹿だ」というような話をしてきたことがありました。理由はよく分からなかったのです
が、Cはそのことも知っていて、Aと高校の同級生が飲みに行ったとき、また嘘をついて人を馬鹿にするような態度を取ったことに同級生たちが怒り、絶交になった、ということでした。

CはAについて、「あいつは病気。頭がおかしい。みんなに嘘をつく」と言いました。
それを聞いたとき、BとCのAに対する印象の違いになんだか妙な気持ち悪さを感じました。
BがAと知り合ったのはAが大学を休学しアルバイトを始めてからだったそうなので、大学時代を知るCの話は信用できると思います。

なぜAはたくさん嘘をつくのにまだ友人でいるのかとCに聞いたところ、「自分(C自身)はクズだから、クズといるのが楽しい。Aは最低だけど遊んで楽しければ嘘つきでもいい」と言いました。
しかしCはAに再三もう嘘はつくなと忠告していたそうで、今回の私の話を聞いてかなり失望していました。
Aが大学で孤立したとき救ってくれたのは現在付き合っている彼女だったのに、彼女についてまで嘘を吐き浮気心があったのは、人間として最低だとCは言いました。

美少女L、その他、の虚言 を読み、Aは自己愛性パーソナリティー障害なのではないかと思いました。
”虚言”についてもネットで調べ、空想虚言癖というものがあるということも知りました。
なんでも病気に当てはめるのはおかしいですが、Aは病気だとしか考えられない。異常なんです。

Aから家庭環境の話をされたことがあります。
幼い頃父親が仕事をクビになり、酒に溺れ自分はよく殴られた、兄弟の中で一番苦労したのは自分だ、というような話です。真偽は不明ですが。

「私にだけ病的な虚言を吐く」と前回のメールで書きました。しかし林先生の仰る通り、Aは私にだけではなくCにも嘘を吐いていました。過去には大学でも、高校の同級生にも。

関係を絶った私にはもう関係のないことですが、Aはこれからも虚言を繰り返すのだと思います。
そしていつか社会的に破綻してしまうのかな、と想像します。
Aに対して感じていた怒りはとうの昔に消え去り、今こうしてAを思い出すと、可哀想な人だと思います。
何が病的な虚言を吐く人間を作り出すのでしょうか?

思い返せばAはいつも必死で、わざわざ他人に喧嘩を売りにいき自分の優位性をアピールすることもありました。
私自身も、良い勉強になったと思います。
>>世の中には病的な虚言の人は想像以上に多い
ということを十分認識して、しっかり軸を持って生きていこうと思います。

 

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。特にこのような虚言については、実際には相当な数のケースが存在すると思われるのにもかかわらず、いわば精神医学の死角にあるといった状況で、臨床経過も類型もほとんど知見として確立しておらず、したがって対応法や治療法も確立していないという状態ですので、今回いただいたような情報は大変貴重でありがたいです。

何が病的な虚言を吐く人間を作り出すのでしょうか?

そのご質問に対して、現代の精神医学は明確な回答を提示することができません。
しかし今回お知らせいただいたような情報を蓄積していくことで、病的な虚言の本質が明らかになっていくことと思われますし、逆にこのような情報の蓄積なしには、いつまでも病的な虚言の実像はつかめず、それは本人にとっても周囲にとっても不幸なことです。

このケースについては、

Aは自己愛性パーソナリティー障害なのではないかと思いました。

今回いただいたメールを拝見しますと、そのご指摘はかなり正しそうです。そして、病的な虚言をするケースの少なくとも一部は自己愛性パーソナリティ障害であると思われます。(ここで「一部」というのは「少数」という意味ではありません。自己愛性パーソナリティ障害の率は「かなり高い」と私は推定しています)

>>世の中には病的な虚言の人は想像以上に多い
ということを十分認識して

その認識はとても重要です。
精神医学の立場としては、その先、すなわち対応法や治療法を提示すべきですが、上にお書きしたように、虚言は精神医学の死角にあるというのが現状ですので、現時点では「その認識が重要」が最も現実的なアドバイスということになるかと思います。

(2019.7.5.)

05. 7月 2019 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 精神科Q&A, 虚言 タグ: |