【3835】統合失調症と診断されてその後5年間の断薬、セカンドオピニオンを受けたほうが良いのか?

Q: 私は30代男性です。 今回、ご相談したいことは、

1、私の文面から林先生が判断できる症例や事例
2、今後私がセカンドオピニオンを受けるべきか

先生の判断を仰ぎたく、ご相談させていただきます。
お忙しい中だとはございますが、よろしくお願いいたします。

現在私は統合失調症と診断されています。
その診断を頂いてから10年が経ち、障害基礎年金も受給しております。

5年前、薬が合わず自己判断で全ての服薬を中止し、一時期、錯乱状態になり緊急入院一歩手前までゆきました。

その時は、主治医から「きちんと服薬するように」と、注意頂きましたが、その後もそのまま自己判断で1錠も服薬せず5年目が経ちます。

それからは精神状態に波がありましたが、徐々に精神状態が安定してゆき、現在では車の運転も出来るようになり、受験勉強を始め、30歳手前で大学進学も果たすことが出来ました。
(錯乱後も服薬を中止した事は、主治医に伝えており、その時は精神状態も安定しているということで、何かあれば電話予約で診察を受ける形をとっています)
(また、主治医が仰るには「服薬しなくて良い統合失調症の方も多くいる」 とのことでした。)

断薬後は徐々にですが、家族や友人とのコミュニケーションも円滑に且つ軋轢もなく出来るようになり、インターネットを使ったウェブサイト構築や、アルバイトなども精力的に出来るようになりました。

服薬中では、活字を読むことさえも出来ない状態でしたが、今では昔の集中力と認識力が戻り、 学習や読書が出来るようになりました。

林先生の掲示板では統合失調症と診断された方が、自己判断で服薬を中止され、状態が悪化している方を多く見受けられます。

私の場合は彼らとは反対で、回復(私の主観ですが…)方面へと向かっている認識です。

私も統合失調症と診断された方が、勝手に自己判断で断薬する危険性は、精神科医の先生方の著書や一般向けの書籍で認識しているつもりです。

その上で、断薬という自己勝手な行動を取り、その後、私が何もなく過ごせている状態も不思議で、主治医の統合失調症という診断が今でも正しいか疑心暗鬼の状態です。

私のような事例をネットで調べるにも、怪しい陰謀論ばかりで、信用における情報がありませんでした。

ネットの文面だけの情報では、お伝えできる内容に限度があるのも承知しております。

しかし、林先生の著書も何冊か拝見し、ご相談してみようと判断させていただいた次第です。

1、私の文面から林先生が判断できる症例や事例
2、今後私がセカンドオピニオンを受けるべきか

先生が現時点で、判断ができる情報がありましたら、是非教えていただきたく存じ上げます。
よろしくお願いいたします。

 

林:
1、私の文面から林先生が判断できる症例や事例

このご質問の「判断できる症例や事例」の意味が今ひとつわかりかねますが、質問者の診断についての問いであると解釈してお答えいたしますと、質問者のこれまでの症状と経過については、

統合失調症と診断されています。  (10年前)

5年前、薬が合わず自己判断で全ての服薬を中止し、一時期、錯乱状態になり緊急入院一歩手前までゆきました。

症状についてはこの二つの記載しかなく、いずれも当時の症状が不明です。

そしてそれから5年間は服薬なしで、

精神状態に波がありましたが、徐々に精神状態が安定してゆき、

その後、少なくとも質問者の主観的には寛解状態に至った、という経過が読み取れます。

すると、第一に、そもそもどのような精神症状があったか不明ですので、診断については判断できません。また第二に、現在の状態についての客観的な情報がありませんので、現在、本当に寛解状態に至っているかどうか判断できません。特に、もし質問者が統合失調症であるという診断が正しかったとすると、統合失調症の方の、「薬をやめたらよくなった」という自己報告は、逆に症状の悪化の徴候ないし証拠であることが常ですので、この【3835】のケースの現在の状態は全く不明ということになります。

しかしここまで厳密に話をしようとすると、統合失調症と診断された当事者からの質問メールからは、ほとんど何も判断できず、回答できないということになりますので、上記の第一の点はともかく、第二の点については、質問者の記述の通り、寛解状態が続いていると仮定してお答えすることにいたします。(さきに「「薬をやめたらよくなった」という自己報告は、逆に症状の悪化の徴候ないし証拠であることが常」とお書きしましたが、たとえば【2444】私は自然治癒力で統合失調症を治しました などとは全く異なり、この【3835】の文章からは統合失調症の悪化は一切読み取れませんので、少なくとも積極的には、この【3835】の質問者の主観的状態が客観的所見とは異なると判断する根拠はありません)

そうしますとこの【3835】は、「服薬していないのに寛解状態になった統合失調症」ということになります。このようなケースは稀ですが存在することは確かで、精神科Q&Aにも似たケースとして【2115】急性一過性精神病と診断された妻の経過【2072】小中学校時代の私は統合失調症だったのでしょうか。今も独り言だけはあります。‏などがあります。
もっとも、【2115】は統合失調症ではなく急性一過性精神病ですが、この二つの区別は、一応は精神病症状の持続期間によりますが、実のところは曖昧です。また【2072】は、完全寛解とは言えませんので、おそらくこの【3835】とは異なると言えるでしょう。

2、今後私がセカンドオピニオンを受けるべきか

このご質問を考えるにあたっては、先に棚上げした問題、すなわち、第一に、統合失調症と診断された時の元々の症状はどうであったかのか、また第二に、現在が質問者の言うように本当に寛解状態なのか、ということが重要になります。セカンドオピニオンを受けて、この2点について医師に判断を求めることは大いに意義があるでしょう。その際にはご本人だけでなく、ご家族からの客観的情報を医師に提供することも必要です。

その結果、「最初の症状は確かに統合失調症だったが、(最終的に症状が出てから5年後の)現在は確かに完全寛解」という結論になれば、服薬せずに経過観察が適切ということになると思います。

(2019.6.5.)

05. 6月 2019 by Hayashi
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