精神科Q&A

【2115】急性一過性精神病と診断された妻の経過


Q: 三十代既婚・子なしの男性です。急性一過性精神病と診断された妻の経過を読んで頂き、今後病状を悪化させない・再発させないために注意すべき点等がありましたらアドバイス等お願いします。

ちょうど一年程前、私の妻(三十代)が急性一過性精神病と診断されました。今日までの経過として、まず妻の異変に気づいたのは、妻が働いていた仕事(派遣)が打ち切りになるという事を発病の一か月程前に知り大変落ち込んでいました、心配はしていましたが元々気が強い性格の妻なのでそれ程気にとめていませんでした。しかし突然、強烈な「怒り」を伴った発言をするようになり話の内容を繰り返し、支離滅裂な会話が続くようになりました。内容は職場で嫌がらせを受けた等の良くある感じの内容だったので、退職日も決まっていたこともあり、その場はなんとか落ち着かせていました。しかしながら次の日もその「怒り」は収まらず、嫌がらせの内容もエスカレートし、職場・派遣会社を巻き込み謝罪をさせるような事を言い出し、その謝罪の日取りまで決めて来ました。私も嫌がらせの内容にある程度憤慨していた部分がありましたが、あまりのエスカレートぶりに相手方に謝罪させるのを止めるよう説得を試みていました。その間自宅では壁を叩いたり、「隣の人に話を聞かれる」や「この話を誰かにしたら殺される」等のある種独特の「妄想」が現れ始めました。 学生時代心理学を専攻していた私は多少の知識があったので「これはまずい」と思い近所の心療内科に連れて行き(診療中は本人は冷静でした)、ハロマンス注射(一か月分)と睡眠薬をもらい妻の実家で静養させようと思い実家に預けました(おかしいと思い始めてから5日目位でその間妻は殆ど寝ていない、私も殆ど眠れず。) しかし落ち着いた様子をみて義母が睡眠薬を飲ませず部屋でそっとしておいたらしく結局妻は一睡もしていないということでした。様子がまたおかしくなったという連絡に愕然とし、とにかく睡眠薬を飲ませてよく眠らせるように頼みました。しかし様子は悪化する一方でとうとう御両親にも手を挙げるようになり、上記とは別の病院へ緊急入院することになりました。(一週間目) そこでは2週間程の入院で退院しまし、自宅療養の切り割ってからは近所のクリニック(上記とは別の)に通院するようになり、リスパダール3mg・ワイパックス(調子が悪いとき)・睡眠薬を服用するようになりました。退院したての3か月位は異様なほどの「不安感」「焦燥感」に取りつかれており、被害妄想はなくなりましたが関係妄想が強くなりました。それから、リスパダールの量が3mg→2mg→1mg→0.5mgとなり0.5mgが半年程続いております。ワイパックスも飲まなくなり本人もかなり良くなったと安心しています。
話が長くなりましたがこのような経過を辿り、今後再発・悪化を含め注意すべきことなどがありましたらアドバイスを頂けないかと思います。宜しくお願いします。 
追伸:このHPを見て、早期発見早期治療がいかに大切か知りました。私の対応は若干遅かったのではないかと今でも反省しており、妻には辛い思いをさせたと思っています。同じような境遇で今現在悩んでおられる方がいましたら、絶対に病院に連れて行ってあげて下さい。えらそうな事を言える立場ではありませんが、そうなってからでは家族だけではどうしようもないですし、治療も出来ません。必ず・必ず治療を受けさせて下さい。患者さん・その家族含め私の経験から言うと辛い思いはして欲しくないです。たった一年の間でしたが、もうあのような経験は二度としたくありません。なので似たような境遇の方がいましたら一日でも早く治療を受けさせてあげて下さい。



林: 読者の方々にご配慮くださりありがとうございます。この【2115】の質問者の体験とアドバイスは、多くの読者の方々にとって大変貴重なものになると思います。

急性一過性精神病性障害とのことですが、この診断名が告げられるのは、(1)文字通り急性に発症し、一過性におさまった場合  (2) 急性期に、暫定的につけられる場合  (3) 本当は統合失調症の可能性濃厚(または、統合失調症と確定診断されている)だが、本人や家族の心情を考えて統合失調症という病名を告げることを回避する場合
などがあります。この【2115】は、(3)にあたると思います。ここに書かれた経過は、急性一過性精神病性障害とはいえず、統合失調症の急性発症とみるべきです。したがって、

今後再発・悪化を含め注意すべきことなどがありましたらアドバイスを頂けないかと思います。

それは、統合失調症の再発・悪化についての注意が必要という答えになります。一般論としては、服薬を続け、過剰なストレスを避ける、ストレスがかかる時期には再発の徴候に注意し、一時的な増薬を躊躇しない、などが挙げられますが、具体的な方策はケースによって違いますので、主治医に先生によくお聞きください。

なお、一部不明な点があります。特に重要なのは、

被害妄想はなくなりましたが関係妄想が強くなりました。

この部分で、「被害妄想」「関係妄想」という用語は、質問者がどのような内容を指して言っておられるのかが不明です。症状は医学用語を使わず、具体的に書かれていてはじめて診断の参考になるものです。

(2011.9.5.)


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