【2693】7年も浮き沈みもない双極性障害なんてあり得ますか

Q: 私は31歳、女性、専業主婦です。現在、双極性障害2型と診断されています。 確かに若い頃はめちゃくちゃでした。 17歳で家出をし水商売の世界に入り、なにかに優越感を感じたり他人との衝突も多かったです。20代半ばには大量服薬での自殺未遂に失敗し、命を落としかけたこともありました。 今考えると信じられないことばかりしてきた気がします。

20代前半…やたらと自分に自信がある。プライドが高すぎた。例えば、どこへいっても他人から好かれる。(特に男性)自分が何をしてもうまくいく、仕事ができる優れた人間。翌朝仕事でも誘われれば必ず付き合う。誰といても話が途切れない。人を楽しませるのが得意。これらは多少勘違いしている部分もあると思いますがが、実際そうだったと思います。
抑えられない怒りを感じた。23〜5歳…社会人時代、上司からパワハラを受け、会社を辞めうつ状態になり寝たきりになったが(この頃に心療内科を受診し「うつ病」と診断される。)うつ病が良くなってくるとその上司に対して沸々と怒りが湧いてきて辞めた会社にいきなり乗り込み、自分が受けたパワハラを訴え裁判をしてもいいくらいだ、と怒りをあらわにした。その後、何日か経って後悔しだして再びうつ状態になる。

その他例をあげると、両親への反抗も凄まじく、ちょっとした一言に腹を立て取っ組み合いの喧嘩になる。 お付き合いしていた男性と大喧嘩になり、ガラスを割り10針縫う怪我をする。その後、「なんてことをしてしまったんだろう」と猛反省し再びうつ状態になる。そんな繰り返しの日々でした。(この頃から「双極性障害2型」の診断を受ける)

自殺願望 26歳…情緒不安定になり、大量服薬により救急搬送されるが一命を取りとめる。 その一方で、人が怖い、人と話すのが怖い、人の視線が怖くて社会不安障害を発症。手の震え、顔の引きつり、両目眼瞼下垂などの身体的な症状も発症。

投薬は、25歳頃より、デパケンR・ジプレキサ・インデラル・サイレース・ヒルナミンとなりました。 それから現在に至るまで7年間、社会不安障害以外の症状は出ておらず、たまに情緒不安定になったりするが特に問題のないレベルです。 30歳で結婚もし、普通に暮らしています。気分が上がることも下がることもあるが人並みです。ただ異常に自分に自信がなく、自分の主張を言うことをあまりしなくなりました。しかしうつ状態といった感じでもありません。 現在投薬も変わり、ラミクタール15mg、エビリファイ5mg、インデラル、レキソタン15mg、サイレース、コントミンとなっています。

ここで質問なのですが、
・双極性障害2型の診断に疑問を抱き始めています。一過性の反抗期みたいなものだったのではないか?ということです。人には反抗期があると思いますが、その大きさは人それぞれだと思います。私の場合、それが病的に値するかは分かりませんが、もう7年も何も症状が出ていません。薬のおかげだと言われればそれまでなのですが、それにしても7年も浮き沈みのない双極性障害2型などありえるのでしょうか? うつ状態も特にありませんし、躁状態も特にありません。 結婚して主治医が変わり、紹介状を持っていったのですが、上記の過去のことばかりが書かれた紹介状だったためか(紹介状の内容は読みました)5分診療で薬も変わらず、普通の話をして(落ち着いていますね等)とぼとぼと帰ってきます。疑問を抱かざるを得ません。 私としては、もう双極性障害に対する薬はいらないです。副作用として多食が出ているぐらいで日に日に肥満になっていっているだけです。薬を飲み始めてから20キロ近く太りました。 現在の主治医に「ラミクタールとエビリファイを外して欲しい」と言ってみたいのですが、それは危険な考えですか? やはり前の主治医の言うとおり、私は双極性障害2型で一生薬を飲み続けなければいけませんか? 前の主治医の指摘のとおり私が双極性障害なら、現在の主治医が薬をやめさせてくれることもないような気がします。 だからといって、また別の病院を探して「私は社会不安障害なのでレキソタンをください」なんて言うのもおかしい気がしますし、紹介状を持っていったらまた双極性障害の診断が下るでしょう。 どうしたらいいでしょうか?

林: これは双極2型障害(双極性障害2型)か、あるいは境界性パーソナリティ障害か、診断が難しいケースです。双極2型障害という概念が一般的になってきたのは比較的最近で、この【2693】はかつてであれば境界性パーソナリティ障害と診断されていたでしょう。精神科Q&Aに掲載されている1997年からのケースの中で、境界性パーソナリティ障害と回答しているものの少なくとも一部には、現代であれば双極2型障害と診断されるものがあると思います。但し、どちらの診断が本当に正しいかは難しいところです。今の時代の精神科では、診察した医師によってかなり異なるというのが現実です。

というわけでこの【2693】も、双極2型障害(双極性障害2型)か、あるいは境界性パーソナリティ障害か、診断が難しいケースということになります。しかしどちらかといえば、双極2型障害の可能性のほうが高いように見えます。
そこで回答ですが、

7年も浮き沈みのない双極性障害2型などありえるのでしょうか?

もちろんあります。薬物療法が奏功すれば、7年といわず一生にわたって安定が続きます。躁うつ病(双極性障害)はきれいに治る。それは薬が効くからです。42年間も安定が続き、62歳で薬をやめた途端に再発した実例も、躁うつ病   患者・家族を支えた実例集 に case 5として収載してあります。

また、この【2693】はそもそも、

それから現在に至るまで7年間、社会不安障害以外の症状は出ておらず、たまに情緒不安定になったりするが特に問題のないレベルです。

とのこと、完全に安定しているとまではいえないでしょう。
そして薬をやめたいという希望が強い人は、自分の症状について「特に問題のないレベルです」と申告し、それは客観的な所見とは乖離していることがしばしばあります。

私としては、もう双極性障害に対する薬はいらないです。

長年安定が続いた方がそのように考えることは非常に多いです。そして薬をやめて再発することが非常に多いです。
試みに薬を中断するのであれば、その後も信頼できる医師に定期的に診療を受け続けることが必要です。

(2014.6.5.)

05. 6月 2014 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 境界性人格障害, 精神科Q&A, 躁うつ病