【4246】攻撃的な言動と性的逸脱行動。あれは躁状態だったのでしょうか。

Q: 私は40歳女性です。
ADHDとASD傾向がベースにあり、双極性障害2型という診断で7年ほど精神科に通院しています。たしかに自分には発達障害があると思いますが、過去の自分についてすべて主治医に話したわけではなく、本当に双極性障害なのだろうかと疑念が湧くことがあります。先生はどう思われますか?

子供の頃からの大まかな性質は以下のような感じです。

・こだわりが強くしつこい(嫌なことをくり返し思い出すなど )
・興味のあることに過集中になる(ほかのことを疎かにする)
・慎重なわりに早とちりや見落としが多い
・感覚過敏がある(温度、薬、体内ホルモンなどの変化に弱い)
・環境変化に弱い
・対人緊張が強い

またストレスを受けると体調が悪化しやすく、幼少期は頻尿、チック、学生時代から呼吸器と消化器の不調 、微熱などに悩まされました。比較的穏やかな性格ですが、人間関係が苦手で孤立しがち、縛りの多い環境になじむのが苦手で学校生活が苦痛、社会人になってからは、気が利かない、行動が不器用、表情が少ないなど言われました。一方で得意な仕事などは評価されました。

大学時代から一人暮らしをしましたが、わけもなくひどく落ち込む時期があったり、体調を崩すと将来を悲観したり、気分の波があることに気づきました。一時的に幻聴のようなものが聞こえたことがありました。(ネガティブなことを言われて泣いたりすると「言ってない!」と言われる)一方で学外でも精力的に勉強し、頭の回転が速くなった感じがして自信と希望に溢れ、友人には「いつ寝ているのか」と言われていたこともありました。

今も調子のよい時と悪い時では、物事の感じ方が全く変わってしまう気がします。

調子が良い時:
・気持ちに余裕があり、人を思いやれる、物事を前向きに考えられる
・人に会ったり話がしたくなる、よく出かける
・ものづくりのアイデアが浮かんだりどんどん作り上げたりする
・買い物や読書量が増える 資格取得や事業を始めたことも。

調子の悪い時:
・家族、身近な人の嫌なところばかりが目に付く
・人が自分に良くないイメージを持っているように思いこむ
・人と会いたくなくなる ニュースなどの情報に影響されやすくなる
・楽しいことをしても気持ちが上がらない、絶望的になる

社会人一年目を終えて、付き合って半年の人と結婚しました。
結婚した途端、家事に完璧を求められ、主人を立てろ、女性らしくしろと言われ、セックスレスになり、自分の趣味にばかり没頭して私に向き合ってくれなくなりました。
義実家の借金を隠されていたり、義母にお金を無心されるなどのストレスもありました。
また、子供の頃から自分の親に受けたストレスなどもはっきり自覚するようになりました。(過干渉、コントロール、批判的な言葉、病気への無理解、性的からかいなど)

度々怒りで頭がいっぱいになり、攻撃的な面が出てきました。夫を論破しようとする、夜中に怒鳴るのをやめない、ベッドを蹴る、物を投げるなど。夫は対応に困っていたようです。

性欲も亢進し、アダルトチャットをしたり、自分の身体の写真をアップしたり、部屋に呼んだりホテルに行ったりもしました。ヌードモデルをしようとしましたが、それは実現しませんでした。快楽が欲しかったのか、誰かにかまってほしかったのか、よくわかりません。

その後、身体の具合を悪くして入院したのですが、小児病棟の泣き声で丸三日眠れず、自主退院しました。退院してしばらくすると、アイデアが止まらなくなり紙に書き綴る日が続きました。論文調で次々にいろんな考えを書いていました。「これで鼻を明かしてやる」と言って夫に怪訝な顔をされ、父「特許を取らなくては」と電話してなだめられました。

その後も何度かチャットや掲示板にハマる時期がありました。
ネットを通じて出会った人と恋愛関係になり、離婚しました。そして現在まで十数年新しいパートナーと一緒に暮らしています。

一緒に暮らし始めて数年は、激しく怒って急激に落ち込んだりするようなことがまた度々ありました。同じようにセックスレスや相手の親の問題などがありました。

また繰り返してしまってはいけないと自ら精神科を受診しました。今は性的逸脱はありません。パートナーにはかなり穏やかになったと言われます。ただ、気分や体調の波は続いており、時々不安がとても強くなったり、フラッシュバックによって怒りを強く感じることがあります。

 

林:
ADHDとASD傾向がベースにあり、双極性障害2型という診断で7年ほど精神科に通院しています。たしかに自分には発達障害があると思いますが、過去の自分についてすべて主治医に話したわけではなく、本当に双極性障害なのだろうかと疑念が湧くことがあります。先生はどう思われますか?

このうち、

ADHDとASD傾向がベースにあり、

それは確かにありそうです。ただし言えるのは「ADHDとASD傾向」までで、ADHDないしはASDと診断できるかどうかまではわかりません。
したがって、

たしかに自分には発達障害があると思います

それはわかりません。その傾向はあると言えるまでにとどまります。

本当に双極性障害なのだろうかと疑念が湧くことがあります

メールに書かれている  攻撃的な言動と性的逸脱行動  などは、双極性障害の躁病相の症状として矛盾はありません。ただし、双極性障害と診断できるかどうかはそれらの経過が重要です。つまり、そうした などがある時期とない時期が明確に分かれていて、それらがある時期は数週間から数ヶ月程度は続いていること、このような経過でない場合は、双極性障害という診断には疑問符がつくことになります。
また、 調子の悪い時 として記されている内容の少なくとも一部は、双極性障害のうつ病相として矛盾はありませんが、こちらについても経過(持続期間)の情報が必須です。
このメールには症状がかなり具体的に記されていますが、上記についての記載がないため、

本当に双極性障害なのだろうかと疑念が湧くことがあります

その疑念にお答えすることは困難です。

(2021.3.5.)

05. 3月 2021 by Hayashi
カテゴリー: ADHD, 発達障害, 精神科Q&A, 躁うつ病 タグ: |