【4153】うつ病もとりあえずリチウムで良いのでしょうか?
Q: 25歳の妻のことで相談です。
2年程前から体調を崩しており、胸が苦しいと言って救急車で運ばれることが3回ありました。内科や呼吸器科などいろいろと行って精密検査も受けたのですが異常なしと言われ、心療内科の受診を勧められたようなのですが本人はそれを「気のせい、気持ちの問題ってことか」と解釈してしまったそうで、受診に至りませんでした。(私も知識不足だったことを反省しています)本人は「私の体力がないのが悪い」と言い、朝は体をなんとか引きずるようにして休まず仕事に通い、帰ってくると倒れるように眠っていました。このときも毎日腹痛と微熱があったそうです。(心配をかけないために黙っていたそうでこれは最近知りました。私はてっきりひどい肩こりがあるのだと思っていました)
いわゆる精神症状と思われるものが見当たらず、私や友人とも笑顔で会話し、趣味のイラストを描いてSNSに投稿するなど気持ち的にはそれなりに元気に見えました。
しかし3ヶ月程前から食欲がなくなり、ろくに食事しない・頭がぼうっとすると言って本が読めなくなる・日中にずっと眠いか寝ている・入浴が好きだったはずなのにお風呂に入るのがどうしても辛くて入れないと言うことがあり、また、「職場のみんなに嫌われている」「Twitterでみんなが私の見えないところで悪口を言っているに違いない」「自分は社会にとって価値がない」などと度々言って泣くようになりました。理由を尋ねると「私はたいして成果も出していないのに、一部役員に気に入られたことで社内イベントで表彰などされて良いポジションを得てしまったため、みんなに嫌われ軽蔑されている」とのことで、証拠としては「社内の友人2名にTwitterとinstagramでフォローを外された」からだと言います。本人たちから直接何か言われたことは一度もないそうですが、会社で会ってもなんとなく彼らの態度がよそよそしい気がすると言います。
私としては正直、そのくらいのことはよくあることだと思いますし、たった2人と多少疎遠になっただけで社内全体(かなりの人数がいます)から嫌われているというのは飛躍しすぎだと思います。しかし運の悪いことにそのフォローを外されたタイミングというのが2名同時だったらしく、妻は「彼らが話し合って私を仲間外れにしたのだ」と言います。そして妻以外の人たちはTwitter上で頻繁にお互いにやりとりを交わして楽しんでいるのに、妻の書き込みにだけは誰も反応を送ってこない(昔は送ってきたのに、ゼロになった)のだと言います。
たまたまだと思いますが、まあそういうことも実際にあるかもしれません。私もなんとなく気に入らない相手をmixiなどで意図的に仲間外れのようにした経験や、軽く無視した経験がありますし。
実際そうなのだとしても実害は出ておらず、そんな人、気にしなくていいと思うのですが、繊細な人にとってはショックなのはわかります。
妻とは元同級生で高校時代からの付き合いですが、昔からどう見ても敵を作るタイプではない(いわゆる平和主義のお人好しタイプ)で、愛想の悪い私よりよっぽど万人から好かれる人気者で、友人もたくさんいます。誰だって多少、誰かからなんとなく嫌われることはあるかもしれませんし、さすがに「みんな」から嫌われているなどというのはほとんど妄想だと思うのですが、あまりに毎日ずっとそのことばかり言い、食事もとらずに泣いてばかりいました。
さすがにおかしいと思い心療内科を受診させたところ、躁うつ病(双極性障害)と診断されてリチウム(200mgを朝晩)を飲むことになり、休職することになり、現在2ヶ月程服用しています。
しかし、食事とお風呂などはできるようになったので良くなっているのかな、と思っていたのですが、妻は相変わらず「私は不当に高い評価を受けたことでみんなからの信頼を失った」「軽蔑されているので、もうこれまでのように同じ業界で仕事することはできない」などと言っています。
妻は思いやりもあって、逆に私は適当で冷淡なほうなので、私のほうがよっぽど人から嫌われているのですが。
しかし私の場合は、食って寝れば嫌なことも忘れるほうで別に気になりません。なんだか真面目な人ばかりが損をしているようでかわいそうです。
ここでご質問なのですが、妻は本当に躁うつ病なのか?リチウムだけでいいのか?ということです。先生に躁うつ病と診断された根拠として「睡眠を減らして働いても大丈夫だった時期があるか」「なんでもできるような気がして希望に満ちていた時期があったか」を聞かれて「はい」と言ったため、そのとき躁状態だったと判断されたそうです。ですが、そのくらいのことなら誰にでもあると思うのと、10年以上付き合いのある私から見て、そもそもそれが妻の性格で、ろくに息抜きをするということがなく、いつもいつも笑顔で努力ばかりしている子でした。
いままでそうだった人がうつ状態になったら、普通にうつ病ではないでしょうか?
性格的には人の顔色を伺うところがあり気は弱いほうで、自分よりも相手が喜ぶように振る舞ってしまうような感じです。
昔から期待に応えないと泣いたり無視したりするという彼女の母親が2年程前から甲状腺の病気になって仕事を辞めて落ち込んでおり、暇だからといって妻に毎日1時間近く電話をかけてきては愚痴を言い、電話に出ないと「薄情者」などとヒステリー気味に言うような時期があったので、今回の不調にはその影響もあるのかもしれません。(これに関しては私が義母に控えるよう言ったため現在表面上は収まりましたが、妻は母が号泣していたり激怒していたりする夢を頻繁に見ると言って、朝起きると泣いていることが多いです。)
そこで私も一緒に受診して上記のことを話した結果、たしかに躁うつ病とは言えないかも、うつ病かもしれない、とのことでしたが、この先生はリチウムに関して何かの研究で有名な方だそうで、「躁うつ病にしろうつ病にしろ、とりあえずリチウムを飲めばどちらにも効く。うつ病の薬より副作用もないので、どっちにしてもまずはリチウムで始めるのが一番良い。水道水にも含まれているくらい安全な成分なのだし、あくまで少量の処方なのだから気にする心配はない」とのことです。
ちなみに妻本人は「いままでの自分は無理をしていただけで、今は休職により怠け癖がついてしまった。これが本当の私なんだと思う。もう一生元には戻れない。いままで関わってきた人に申し訳ない」「薬を飲んでもたいしてよくならないというのは甘えだという証拠だ」というようなことを言っています。泣いて悲しんでいるというというよりは、もう諦めてしまった虚無感のようなものが漂っています。
そして休職に心配した妻の会社の同僚や友人たちからたくさんの差し入れが届いたり励ましのメールが来たりしているのに、それでもみんなから嫌われていると言い張ります。
また、病気のせいなのか薬の副作用なのか、最近まっすぐ歩くのが怖い、階段をくだるときにふらついて足を踏み外しそうになる、と言います。
そしてリチウム服用前よりも、あまり嬉しくも悲しくもない。感情が薄くなったと言っています。薬の副作用でしょうか?うつの悪化でしょうか?
勤勉に生きてきたのに、こんなことになってしまうなんて本当にかわいそうに思います。
このままリチウムを続けていればよくなるのでしょうか? それともうつ病の薬を飲んだほうがいいのでしょうか?
あとはこれは今更ですが、これから受診される方のために聞きたいんですけど、そもそもの妻は2年前の身体症状が始まっていたときからうつ状態だったのでしょうか?その頃に心療内科でちゃんと治療を受けさせていればこうなる前に助かったのかなという気持ちがあります。(身体症状だけで心療内科の受診に至るのは難しいと思うので、他の方のご参考のためにも事例としてお聞きしています)
なんとか助けてあげたいです。ご意見をぜひお願いします。
林: この状態でリチウムだけの処方による治療という方針には賛成できません。このままでは改善の見込みは乏しいと思います。
「躁うつ病にしろうつ病にしろ、とりあえずリチウムを飲めばどちらにも効く。うつ病の薬より副作用もないので、どっちにしてもまずはリチウムで始めるのが一番良い。水道水にも含まれているくらい安全な成分なのだし、あくまで少量の処方なのだから気にする心配はない」
主治医のこの説明は不合理です。理由を順にお示ししますと、
躁うつ病にしろうつ病にしろ、とりあえずリチウムを飲めばどちらにも効く。
そんなことはありません。つまり薬物療法の大前提の時点でこの医師は誤っています。
うつ病の薬より副作用もないので、どっちにしてもまずはリチウムで始めるのが一番良い。
そんなことはありません。「(リチウムが)うつ病の薬より副作用もない」とは一概に言えません。また、「どっちにしてもまずはリチウムで始めるのが一番良い」という方針は、現代の精神医学の標準的な考え方からは逸脱しています。(現代の精神医学の標準的な考え方についてはたとえば日本うつ病学会の治療ガイドラインに記されています。そこではリチウムは「推奨される治療」ではなく、「必要に応じて選択される推奨治療」として位置づけられています。そこに記されている「抗うつ効果増強療法」とは、抗うつ薬などによる治療の効果を増強する治療という意味ですから、単独で用いることは推奨されていません。この種のガイドラインは、【4152】にも説明した通り、あくまで目安であって、絶対的なものではありません。しかしそうは言っても相当な科学的根拠等に基づいて作成されているものですから、ガイドラインから大きく外れた治療を選択するのであれば、それなりの根拠が必要ですが、この【4153】にそのような根拠があるとは読み取れません。主治医の信念だけが根拠としか思えず、その主治医が仮に「リチウムに関して何かの研究で有名な方」であったとしても、彼の研究や信念が膨大な科学的根拠を覆せるだけの根拠があると推定することはできません。特に【4153】にリチウムが開始されたのは治療開始の時点ですから、公式のガイドラインを十分に尊重すべき時期であるといえます。反対にある程度の期間治療を続けても症状が改善しないような場合には、ガイドラインから外れた治療法を試みることが適切な場合もしばしばありますが、この【4153】は明らかにそのような場合には該当しません。
水道水にも含まれているくらい安全な成分なのだし、あくまで少量の処方なのだから気にする心配はない
この説明は論理が崩壊しています。なぜならここで説明されているのは、「安全で少量だから心配ない」ということのみであって、効果については何も述べられていません。薬を飲むのは症状を改善させることが第一の目的で、安全であることはそれと同等に重要ではありますが、安全であるというだけでは薬を飲む意味がありません。
一方、診断が躁うつ病(双極性障害)であれば、今の状態がうつ状態であっても、抗うつ薬でなくリチウムで治療を開始するのは適切な治療の一つであると言えます。(【4116】抗うつ薬を使っても状況が好転しないなら、双極性障害の可能性を考えて気分安定薬を使ってみるという試みはないのでしょうか、【4115】擬態うつ病だと思っていましたが、躁うつ病の薬を飲んだら意外にも症状がかなり改善されました(【2315】のその後) 、【3600】その後診断名が双極性障害になりました(【2896】のその後)などもご参照ください。これらの例から読み取れるように、当初うつ病とみられていたものが後に躁うつ病であることが判明するというケースは少なからずあります。したがって、たとえある時点における症状がうつ状態であっても、過去に躁状態があったかどうかは重要な情報です。もし躁状態があれば、抗うつ薬でなくリチウムなどで治療を開始するというのは適切な方法ということになります。また、たとえ過去に躁状態がなくても、未来に躁状態が出現し、その時点になって初めて躁うつ病であることが判明することもありえるわけですから、【3499】うつ病の再発を繰り返している私は双極性障害なのでしょうか に見られるように、うつ病の治療を一定期間行っても改善しないときは、躁うつ病の可能性ありと推定するのも合理的ということになります。
けれどもこの【4153】のケースは、
先生に躁うつ病と診断された根拠として「睡眠を減らして働いても大丈夫だった時期があるか」「なんでもできるような気がして希望に満ちていた時期があったか」を聞かれて「はい」と言ったため、そのとき躁状態だったと判断されたそうです。
これだけで躁状態だったと判断するのは不合理です。
なぜなら、
そのくらいのことなら誰にでもあると思う
と質問者がおっしゃる通りだからです。
したがってこの【4153】ケースでリチウムで治療を開始するのは不合理ですが、2ヶ月たった時点での、
食事とお風呂などはできるようになったので良くなっているのかな、と思っていたのですが、
この状態は慎重に評価する必要があります。このように行動が改善することが、病気の改善の兆しであることはしばしばありますので、リチウムの効果が出ているかもしれないと一応は考えられます。しかし、
妻は相変わらず「私は不当に高い評価を受けたことでみんなからの信頼を失った」「軽蔑されているので、もうこれまでのように同じ業界で仕事することはできない」などと言っています。
この様子からは、少なくともはっきり改善しているとはとても言えません。
そうは言っても、うつ病に限らず精神疾患では、本人の訴えそのものは変わらなくても、行動が変わることで、改善傾向にあると判断できることはしばしばありますので、たとえ口から出る言葉はネガティブなものばかりでも、「食事とお風呂などはできるようになった」は改善の兆しであるかもしれないと考えられますが、他の言動からみて、結論としては全く改善していない、むしろ悪化していると判断できます。「食事とお風呂などはできるようになった」のは、薬の効果でなく休養の効果であるとみるべきでしょう。
他の言動とは次のものを指しています。
泣いて悲しんでいるというというよりは、もう諦めてしまった虚無感のようなものが漂っています。
そしてリチウム服用前よりも、あまり嬉しくも悲しくもない。感情が薄くなったと言っています。
これは非常に危険な徴候です。うつ病というと、気分の落ち込みや悲しみが典型的な症状として紹介されるのが普通ですが、真に重症になると、気持ちの動き自体が停止してしまいます。すなわち「あまり嬉しくも悲しくもない。感情が薄くなった」というのがまさにそれにあたります。【4153】のこの状態は、「食事とお風呂などはできるようになった」とあわせて、自殺の危険性が高まっているとも言えます。「行動できる」ということは、「自殺もできる」ということだからです。
妻は本当に躁うつ病なのか?リチウムだけでいいのか?ということです。
躁うつ病という診断は大いに疑問です。リチウムだけの治療を続けることはさらに疑問です。なぜなら、仮に躁うつ病であったとしても、2ヶ月の治療で改善が見られず、むしろ悪化しているともみられるからです。
このままリチウムを続けていればよくなるのでしょうか?
よくなる見込みは薄いです。
それともうつ病の薬を飲んだほうがいいのでしょうか?
その通りです。
ただしここで、具体的にどの薬が適切であるかの決定は容易ではありません。
それは【4153】の診断にかかわる問題になります。
【4153】の質問者(本人の夫)は次のように言っておられます。
10年以上付き合いのある私から見て、そもそもそれが妻の性格で、ろくに息抜きをするということがなく、いつもいつも笑顔で努力ばかりしている子でした。
いままでそうだった人がうつ状態になったら、普通にうつ病ではないでしょうか?
この「普通にうつ病」という表現が、「躁うつ病であると考える必要はなく、うつ病であると考えるべきである」という意味であればその通りでしょう。しかし「普通」かどうかは問題です。
なぜならこの【4153】のケースには、被害妄想と判断できる症状がかなり強く現れているからです。この症状は、うつ病の(「普通の」うつ病の)症状としての罪責感に伴う妄想様観念とみることも、より明確な妄想とみることも(その場合は「精神病症状を伴ううつ病」という診断になります)、統合失調症の要素があるとみることも可能で、このメールの記載だけからはいずれであるかの判定は困難です。
これは質問者からのこの最後の質問にかかわってきます。
そもそもの妻は2年前の身体症状が始まっていたときからうつ状態だったのでしょうか?
2年前から続いている漠然とした不調。そして現れたうつ状態。そこには妄想と判定しうる症状を伴っている。これは統合失調症が発症するときの一つの典型的な経過です。このこともあわせると、うつ病ではなく統合失調症かもしれないという可能性が現実のものとして浮上することになります。そのほか、身体疾患に伴う精神症状 (たとえばホルモンの変調によるものや、自己免疫疾患など)の可能性も否定できません。
これらを総合しますと、この【4153】に対して最初に行う薬物療法としては、抗うつ薬か非定型抗精神病薬ということになるでしょう(その前に大前提として、身体疾患による精神症状でないことの確認が必要です)。どちらもうつ病に対して効果がある薬です。どちらを選択するかは、仮に私が治療を担当するのであれば、十分に時間をかけた診察のうえで決定するでしょう。ただしそれがどちらの選択であったとしても(抗うつ薬と非定型抗精神病薬のどちらの選択であったとしても)、それは医師個人の選択であるにすぎず、逆の選択にも十分な合理性があります。ただし、リチウムの選択には合理性がありません。
なお、一部重複になりますが付記しますと、
先生に躁うつ病と診断された根拠として「睡眠を減らして働いても大丈夫だった時期があるか」「なんでもできるような気がして希望に満ちていた時期があったか」を聞かれて「はい」と言ったため、そのとき躁状態だったと判断されたそうです。
主治医のこの判断を私は不合理であると断じました。ただしこれは、質問者からの上記の報告を言葉通りに正しいと仮定した場合の判断にすぎません。
一般に、患者さんやそのご家族が、「医師は患者がAと言っただけでBと判断した。 患者が言ったAは誰にでもあることだから、Bという判断はおかしい」と訴えるとき、大部分の場合、不合理なのは医師の判断ではなくてその訴えのほうです。【3490】早口であるというだけで双極性障害と診断された などがその典型例で、「医師は患者がAと言っただけでBと判断した。」というのは医師の下した診断が気に入らないときや納得できないときの典型的な訴えで、実際には医師の判断根拠はそれだけではなかったり、または、その判断の質が異なることが大部分です。
この【4153】にあてはめれば、「睡眠を減らして働いても大丈夫だった時期があるか」「なんでもできるような気がして希望に満ちていた時期があったか」は、過去の躁状態の有無を確認するうえでは現代の精神医学の標準的な質問ですから、質問自体は適切で不合理なところはありません。ただしそれに対する本人の答えが「はい」であるというだけで躁状態があったとみなすのは不合理です。したがってこの主治医の判断は不合理ということになりますが、それは質問者からの報告を言葉通りに受け取った場合であって、実際の診察では単なる「はい」で終わったのではなく、それに続いてさらに詳しい問答があったのかもしれません。それを要約してしまえば「はい」と答えた、ということになりますが、要約だけでは診察の質は不明です。また、これは「質問者からの報告」ではありますが、その「質問者の報告」は、「本人から聞いた話に基づく質問者の報告」ですから、正確さにはかなり限界があると言わざるを得ません。
次の点についても同じことが言えます。
「躁うつ病にしろうつ病にしろ、とりあえずリチウムを飲めばどちらにも効く。うつ病の薬より副作用もないので、どっちにしてもまずはリチウムで始めるのが一番良い。水道水にも含まれているくらい安全な成分なのだし、あくまで少量の処方なのだから気にする心配はない」
このうち、「水道水にも含まれているくらい安全な成分なのだし、あくまで少量の処方なのだから気にする心配はない」の不合理さを私は強く指摘しました。上の説明を、説明の順番通りにそのまま読めば不合理だということです。
しかしこれも主治医からの説明の要約であるにすぎず、「水道水にも含まれているくらい安全な成分なのだし、あくまで少量の処方なのだから気にする心配はない」は説明のまとめとして述べられたのではなく、説明の中に挿入された一事実であったかもしれません。そうであれば主治医のこの説明の不合理さは弱まることになります。
こうした事情を十分に勘案しても、「今の治療は不合理である」というのが【4153】についての私の結論です。これは、【4153】のメールの質問文の中に、十分に具体的に、診断の推定に必要な情報が記されていることで可能になった回答です。
最後に結論を繰り返します。
妻は本当に躁うつ病なのか?リチウムだけでいいのか?ということです。
躁うつ病という診断は大いに疑問です。リチウムだけの治療を続けることはさらに疑問です。なぜなら、仮に躁うつ病であったとしても、2ヶ月の治療で改善が見られず、むしろ悪化しているともみられるからです。
このままリチウムを続けていればよくなるのでしょうか?
よくなる見込みは薄いです。
それともうつ病の薬を飲んだほうがいいのでしょうか?
その通りです。
(2020.10.5.)