【3910】イマジナリーフレンドは統合失調症の発症につながりますか

Q: 私は19歳女性です。
私にはイマジナリーフレンドがいるのですが、そこから統合失調症など疾患に繋がるのではないかと心配です。

幼少期に一人目のイマジナリーフレンドがいました。私にしか見えていなかったようですが、逆に言うと、私には確かに見えていたようです。母が「あなた昔よく見えない友達と遊んでいたよね」などと話すことがあり、当時の保育日誌にも「〇〇ちゃん(そのような名前の同級生は存在せず)と楽しそうに遊んでいました」というような書き込みがあることから、イマジナリーフレンドと遊んでいたこと自体は確かです。
詳しいことはあまり覚えていませんが、彼女は「昔に私の母親が流産してしまった姉」という設定で、一つか二つ年上のお姉さんとして遊んでくれていました。母親に流産の経験はありません。

この話をふと思い出したのが中学生の時でした。私はもう一度彼女に会えるのではないかと考え、ネットで調べた情報を頼りにイマジナリーフレンドを作り直しました。もちろん彼女が妄想上の存在に過ぎないことは重々承知です。姿が実際に見えることもありませんし、声が聞こえることもありません。ただ具体的な容姿・服装・性格・口調のイメージが頭の中にあります。話しかけると答えてくれるように感じています。

大学生になった今でも、彼女は私のそばにいてくれています。彼女のことを忘れていることも多いので、思い出した時にふと出てくる感じです。うまく説明できませんが、実体がないのに、そこにいることがありありと想像できるので、会話が成立しますし、表情などもわかるような気がするのです。
会話をしても、私の口が実際に動くわけではなく、全て頭の中で行われるような感覚なので、日常生活に何か影響を及ぼすことはほぼありません。しかしある一定の状況においては、確実に彼女の存在が私の助けになっています。

例えば、授業中にお腹が痛くなってトイレに行きたいのにどうしてもその場を離れられないとき、彼女と会話をすると、すっと嘘のようにその痛みが引いていくのです。これはほぼ確実です。何度助けられたかわかりません。何か重要な局面を前に緊張しているときも、同様に彼女と会話をすることで心が落ち着くことがあります。自分の性格上絶対にできそうにないことが、彼女のおかげでできてしまうこともあります。

マイナスの要素が全く無いので、困っているわけではないのですが、これだけの年月が経ってもイマジナリーフレンドに頼って生きているのはどこか異常なのではないかと思います。消えて欲しいなどとは間違っても考えませんが、恥ずかしくてこのことは秘密にしています。このまま彼女と一緒に生きていくと、何かの拍子に彼女の存在を現実だと思い込んでしまいそうです。

長くなりましたが質問です。軽い妄想空想からそれが病気に繋がってしまうことはよくありますか。彼女のおかげで不安が消えたり体調が改善されたりするのは異常なことでしょうか。

 

林:
イマジナリーフレンドは統合失調症の発症につながりますか

統合失調症の発症にはつながりません。
イマジナリーフレンド(IC) (イマジナリーコンパニオン IC ともいいます)と関連ある精神疾患を挙げるとすれば、それは解離性障害ですが、ICの存在がそのまま解離性障害の発症につながるとは言えません。しかし可能性はあると言えるでしょう。

マイナスの要素が全く無いので、困っているわけではないのですが、このまま彼女と一緒に生きていくと、何かの拍子に彼女の存在を現実だと思い込んでしまいそうです。

本人も周囲も全く困っていない場合、それを病的とか異常ということは定義上はできませんが、19歳という質問者の年齢も考慮すれば、標準から逸脱しているとは言えるでしょう。「標準から逸脱している」ことだけをもって病的とは異常とは呼ぶのは不適切ですが、そのように呼ぶ立場や考え方もあります。(但し、このケースで、周囲が全く困っていないかどうかは本当のところは不明です。メールの情報からはそこまではわかりません。以下は「本人も周囲も全く困っていない」と仮定しての回答です)

このまま彼女と一緒に生きていくと、何かの拍子に彼女の存在を現実だと思い込んでしまいそうです。

仮にそうなった場合、それを病的あるいは異常と呼ぶかはなかなか難しい問題です。常識的な感覚からすれば異常で、病気の範疇に入るでしょう。しかしそれは今いったばかりの 「標準から逸脱している」ことだけをもって病的とは異常とは呼ぶのは不適切 と矛盾することになります。これはつまり、何を異常と呼び、何を病的と呼ぶかは明確に決めることは困難だということです。立場や考え方、それから時代によっても変わってくるでしょう。

彼女のおかげで不安が消えたり体調が改善されたりするのは異常なことでしょうか。

これについて答えようとするときにも同じ問題がつきまといます。19歳の人が、ICのおかげでより良い生活を送れるようになっているというのは、標準からは逸脱しています。ご本人が

恥ずかしくてこのことは秘密にしています。

と言っておられるとおり、これを人に話せばかなり驚かれるでしょう。異常だ、病気だと考える人も相当の数いらっしゃるでしょう。それがごく普通の感覚であることは、ご本人も認識しているからこそ秘密にしていると解されます。

けれども、
人とは違った方法によって、
不安を解消し体調を維持する
こと自体は、決して異常でも病的でもありません。
ではその「人とは違った方法」が、多くの人からみて「異常」と感じられるとき、それはやはり「異常」と呼ぶのか呼ばないのかという問題になります。

この問題は棚上げにしていい性質のものではありませんが、質問者にとってより現実的な問題は、メール冒頭に書かれた、

私にはイマジナリーフレンドがいるのですが、そこから統合失調症など疾患に繋がるのではないかと心配です。

ということだと思います。それに対する回答は、「統合失調症に繋がることはない。解離性障害とは関連がある。」 というものになります。

なおICについては、【2266】私にしか見えない、私の想像上の親【2127】想像上の優しい人が消えてさびしい  などもご参照ください。

(2019.11.5.)

05. 11月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 解離性障害 タグ: |