精神科Q&A
【2127】想像上の優しい人が消えてさびしい
Q: 20代女性です。ネットで林先生のことを知り、悩みましたがご相談させてください。私は3姉妹の次女として育ってきました。両親と姉と妹と長年暮らしていました。両親と私は仲が悪いというわけではありませんが、家が金銭的に困窮していた時期があります。ちょうど家にお金がないときに姉が短大へ進学、わたしは高校生でした。学生生活は本当に辛くて、辛くて、今でも学生時代の夢を見て、朝起きると怖くなってしまうこともあります。高校の進路でも進学するという選択肢はなく、すぐに働きました。妹も学生でしたし、それしか選択肢がない状態でした。姉が「なんで家にお金がないんだ、ほかの人はもっと支援してもらえるのに」ということを言うたびに、なんで進学までできているのに文句をいうのかと腹立たしくも思いました。今でも私の給料のすべてを家にいれている状態です。姉はいれていません。その理由が、一人暮らしで大変だから、と両親は言っています。最初は私が頼られていると思い、甘んじて受け入れていましたが、なにかことが起きると、母は私ではなく姉を頼ります。そして妹に私のことを相談するのです。いつもいつも姉と妹よりも私が軽んじられていると思っていたことに最近気が付きました。私は中学校から下の思い出というものがありません。思い出せないんです。記憶が抜け落ちたみたいに、断片的にぼんやりと風景を思うことはできますが、学校行事や友達との会話、出来事のほとんどを思い出せません。もちろん、家族とのやりとりも記憶がありません。現在、なんとか思い出せるのは高校生のときのあいまいな記憶だけです。それは思い出というよりも風景に近い感じで、細かな会話もわかりませんが。私は想像上の優しい人がいました。いつも私の話を聞いてくれて、優しい人でしたが、絶対誰にも言わないと約束したのに、うっかりそのことを妹に話してしまいました。それ以来、どんなに想像しても出てきません。受け入れてくれる人がいないのはさみしいと気づきました。眠りにはいる直前、だれかから呼ばれる声で起きてしまったり、笑い声でびっくりしてしまうこともあります。私はさみしいだけなのでしょうか?それともなんらかの疾患があるのでしょうか?
林:
それともなんらかの疾患があるのでしょうか?
解離性障害が最も考えられる診断名です。
この【2127】のケースの記憶障害は解離性健忘です。【1939】、【1936】などをご参照ください。
また、質問者自身が「想像上の優しい人」と呼んでおられるこの現象は、「想像上の友人 imaginary companion: IC」と呼ばれるものです。これについては【2044】などをご参照ください。
(2011.10.5.)