精神科Q&A
【2266】私にしか見えない、私の育ての親
Q: 20代女性です。とても気になる事がありますので、回答をお願いします。私に非常に親切にしてくれる、私の育ての親についてです。彼は私が10歳の時、両親が寝室で喧嘩をしている時に初めて私の前に現れ、私を抱きしめて眠ってくれました。それから彼とはずっと交流があり、私の家に来てくれたり、私の職場に現れたりします。けれどもおかしな事に、誰も彼も彼の事を無視するのです。それどころか、妹や両親は私が独り言を話していると言っては、厳しい顔をして私の方を見てきます。この事を最近出来た彼氏に話すと、「貴方は頭がおかしいので、精神科に行かれた方が宜しいのでは」と進言してくれました。少しだけ恐ろしいのは、その育ての親が、最近全裸で私の布団に潜り込んで来る事です。私を抱きしめてくれるまではいいのですが、彼は朝まで布団の中にいて、両親が私の様子を見に来ても、知らないそぶりで抱きついては、耳元で「大好きだ」と言って来ます。両親や妹は、その事について彼や私を咎める様子はまるでありません。 私は彼が好きですし、幼い頃から私を守ってくれた彼を、非常に大切に思っています。皮膚が裏返った人外や、腐った人間の顔や、時折耳元で聞こえる声から私を遠ざけてくれました。それから、妖精さんが宙を舞っていたり、空を浮遊する巨大な魚や、路上で踊る絢爛豪華な数千の美しい女性の姿に共感もしてくれます。学生時代、テストでは何度も私を助けてくれましたし、私が苦手とする外来語をそつなくこなせるのも、彼の耳元での助言があるからです。彼は私の幻覚ですか? もしそうだとしても、私は彼を失いたくはありません。私の見ている世界も失いたくありません。逆光で顔が見えなくとも、夜全裸で忍び込んで来ようとも、誰の目にも見えなくとも、私にはこの方しか頼れる人はいません。誰にも見えなくとも、美しいこの世界が好きなのです。どうか教えて下さい。彼と見えている世界をそのままに、私がまともな職に就く事は出来ないでしょうか。
林: 質問者のいう
私に非常に親切にしてくれる、私の育ての親
は、想像上の友人 imaginary companion: ICの一種だと思います。やや特殊な形ではありますが、本質的にはICに間違いないでしょう。ICについては【2127】、【2044】に解説してありますが、より詳しい知識を得るためには、
柴山雅俊 『解離性障害』 ちくま新書 2007年
をお読みになることをお勧めします。質問者は解離性障害であることは確実と思われますので、ご自分の状態を深く知るためにも、この本は大いに役に立つと思います。
なお、
彼と見えている世界をそのままに、私がまともな職に就く事は出来ないでしょうか。
そんなことはないと思います。両立可能です。
(2012.6.5.)