【4770】クエチアピンの副作用でパニック発作が起こることはありえますか

Q: 20代女性です。
1年半ほど前、双極性障害Ⅱ型と診断されました。
処方されている薬は、クエチアピン100mg、リーマス200mg、ルネスタ2mg、マイスリー5mg(不眠が特に強い時の頓服)です。診断当初はラツーダを処方されていましたが、アカシジアが出てしまい、クエチアピンに変更となりました。

しかし、現在、クエチアピンを飲むことに抵抗を覚えております。
というのも、クエチアピンを服用するようになってから、服薬し眠りにつくまでの間に、強い不安や恐怖感、動悸、めまい、現実感のなさといった症状に頻繁に襲われるようになったのです。 調べてみたところ、これはパニック発作にあたる可能性が高いということがわかりました。

特に現実感の喪失については、これまで生きてきて体験したことのなかった感覚で、明らかに、クエチアピンを服用し始めたあとに起こり始めたものです。

良くないことだとはわかりつつ、ルネスタやマイスリーを多めに飲んで速やかに眠る(「寝逃げ」という表現がぴったりです)ことで、発作を避けることもできるのですが、そうすることでそれらの睡眠導入剤が足りなくなった日は、眠りにつくまでに大変苦しい思いをしています。

このことを主治医に相談したところ、「クエチアピンで不安が起こることはありえない。むしろ、不安を鎮める薬だから」と言われ、取り合ってもらえませんでした。
釈然としないながらも、とりあえず納得することにしましたが、クエチアピンを飲むとパニック発作のようなものが起こるのは変わらないし、服用後の就寝前以外にそれが起こることもありません。

お聞きしたいのは以下の通りです。

クエチアピン(あるいは抗精神病薬全般)の副作用でパニック発作のような症状が出ることはありえますか?
また、もしクエチアピンの副作用でなかったとしたら、他にどのような原因が考えられるでしょうか。

 

林: 新たな薬を飲み始めてまもなく、これまでにない自覚症状が発生したとき、考えられる原因は次の三つです:
(1)    その薬の副作用
(2)    原病の症状 (その薬を飲み始める理由としてのもとの病気の症状)
(3)    上の(1)(2)以外 (たとえば、別の病気の発症や、飲んでいる別の薬の副作用など)

多くの方は(1)であると決めつけがちですが、(2)(3)の可能性が十分にあることは認識する必要があります。
ただし、(1)(2)(3)のうちのどれであるかを確定することは厳密には不可能です。確率統計的なことは言えます。その薬の副作用としてよく知られている症状であれば、その薬の副作用である可能性が高い。もとの病気の症状としてよく知られている症状であれば、そのもとの病気の症状である可能性が高い。言えるのはそこまでです。

そこでこの【4770】のケースに目を向けますと、パニック発作(正確には「パニック発作様の症状」と呼ぶべきでしょう)はクエチアピンの副作用としてよく知られている症状ではありません。したがって(1)の可能性は低いです。けれども言えるのは「可能性は低い」までであって、「ありえない」とは言えません。こうしたとき、もしクエチアピン以外に治療法がないのであれば、クエチアピンを継続するという方針は考えられますが、この【4770】のケースでクエチアピン以外の治療法がないとは考えにくいです。したがって他の薬への変更を検討することが適切だと思います。変更の前に、まずはクエチアピンを中止してみて、パニック発作がどう変化するか様子をみることも勧められます。

(2024.1.5.)

05. 1月 2024 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 薬の副作用, 躁うつ病