【4765】躁状態の病識がない姉に対してどのような行動を取るべきか

Q: 今回は私についてのご相談ではないのですが、林先生に正しい背景を伝えるため私の状況についてまずは説明させてください。
私は30代の男性です。現在は単身で生活しておりますが、両親(共に70歳前後)と姉2人(共に40歳前後)がいます。上の姉(以下長姉)は後述する事情があるまで実家から離れた地域で生活しており、両親と下の姉(以下次姉)が同居してるという環境でした。私自身は現在、 双極性障害の通院治療中であり、休職等も挟みつつも現在は服薬しながら社会復帰しております。休職中のうち収入がない期間は両親から経済的援助を受けていましたが、その額は全て自分から両親へ返すことも無事できました。

今回ご相談したいのは前述のうち、長姉についてです。
長姉は10代の頃から金銭トラブルがとても多く、例を挙げれば枚挙にいとまがないのですが、例えば
・人からお金を借りて返さず家に連絡が来た。
・クレジットカードで買い物をしすぎて引き落とし時に金額が足りず、本人も督促状を無視していたため実家に連絡が来て親が肩代わりした。(複数回)
・携帯料金を実家に負担させている状態で、様々なものを携帯料金払いにすることで実家に全て負担させていた。
等があります。基本的には両親が対応している関係で、少し歳の離れた弟である私が全ての問題を把握している訳ではありませんが、それでも上記の内容を把握して「しまっている」程度には問題が多かったという認識です。

母や私にも程度は違えど似たようなお金遣いの荒さの傾向があり、双極性障害には遺伝的要因もあると聞き及んでいたこともあるため、「自分のお金遣いの荒さ」と「母や長姉にも同様の傾向がある」ということを主治医に伝え、諸々のチェックをしたところ私に関しては双極性 障害であるという診断を受けました。
ただ、私自身が独居しており母や長姉が実際に社会生活に問題をきたしているか把握していないことと、本人の病識がない状態で精神科に通わせるように誘導することは難しいと思い、自分が診断を受けた時点では2人に病院を勧めるようなことはしていませんでした。認識が間 違っているのかもしれないのですが、社会生活を営む上で問題がなければその病気の傾向があっても、積極的に通院して治療をする必要性というものは薄いかあるいは病気の定義に当てはまらないと思っていたからです。

しかし、後ほど法事の際に長姉に会った際に「うつ病と診断を受けており、服薬して休職をしている」という話を聞き、実際に処方薬があることを確認したため、後日に下記のようなメールを長姉にいたしました。
・自分も(当時)休職しており、双極性障害の診断を受けている。
・私もお金遣いが荒かったりなどの心当たりが元々あった。
・双極性障害は遺伝的要因があり、私が診断を受けたということは長姉もそうであるリスクが普通より高い。
・今もうつ病で通院しているのならば、もしかしたら双極性障害のうつ部分だけを取り上げている状況かもしれないので、念のため主治医にこのことを相談して確認してもらえないか?
このメールは本人曰く読んだらしいのですが、結局返事も貰えずこのような対応をしていないままになっていました。

このことの数年後、最近になって長姉が脳出血で倒れたとの連絡が入りました。
幸い命に別状はないものの、麻痺は残る他リハビリに長期間かかるということで、独居先ではなく実家の近くの病院に入院することで実家側がサポートできるようにしようと決まりました。
その際に、様々な問題が長姉にあることが分かりました。
・休職中に会社から補助金をもらいつつ、両親から私の2倍以上の金額を援助してもらっていた。(両親からの援助だけで大卒の初任給以上の金額です。)
・上記の状況で、無収入かつ職につこうとしてもいない男性を養っていた。(彼は事案を受けて働くと言っていましたが、その後の音沙汰はありません。)
・さらにかなり多くの支払いをリボ払いにしており、利息だけでとんでもない金額になっていた。
・その上でさらに別に借金が数百万円あり、本人に返済できるだけの持ち合わせも当然なかった。
これらの埋め合わせは全て両親が行ったのですが、この時点で私としては「これは医療のサポートが必要だ」と認識していました。
しかし脳出血のリハビリでの入院中に精神科病棟に入院などの対処も困難でしょうし、一旦脳出血のリハビリ入院が終わってから本人に切り出すべきかと思っていました。
この時点で私だけに留める話では到底あり得ないため、両親や次姉に双極性障害という病気についての説明と長姉がそうではないかと懸念している旨を伝えています。

今思うと上記の認識は非常に甘かったです。入院中も長姉の問題行動は止まらず、
・スマホゲームの課金に1日に数万円使う。
・上記以外にも携帯料金払いで入院中も様々なことをし、月の携帯料金が10万円を超え続ける。
・両親が長姉の元の住居の家賃のために入金したお金を即使い込む。
・それらの行動を再三注意されても繰り返してしまう。
上記の状態で、これはもう手に余るということで、成年後見人制度など諸々行政の支援を受けようと地域包括支援センターなどに相談したのですが、このような行動に対して行政としてアクションを起こすためには医師の診断が必要とのことでした。

基本的には私は独居しており、長姉に関する対応を直接する立場ではないのでしょうが、伝えるべきことを伝えてできる限りなんとかできないかと考えています。
このような場合、私ができる行動は何なのでしょうか?
具体的に、長姉や両親に対してどのようなアドバイスや現実的な行動をするのが問題への対処として適切なのでしょうか?

私もようやく自分自身の問題について取り組んで前向きに進み始めたばかりということもあり、自分で安定して生活するのが最優先なのは分かっているつもりです。
しかし、状況は非常に悪いと思いますし、経済的な問題は自分にも波及するのではないかと不安になることも事実です。なるべく考えないでいることが正解なのかもしれないとも思うのですが、悩ましいです。

長々と申し訳ございませんが、何かアドバイス等ございましたらお願い致します。

 

林: 大変ご苦悩されているご様子、お察し申し上げます。

長姉や両親に対してどのようなアドバイスや現実的な行動をするのが問題への対処として適切なのでしょうか?

このご質問への回答を端的に記しますと、「いま入院している病院の医師にまず相談する」ということになります。

以下、この回答に至る説明を順に記します。

1. 長姉様が双極性障害である可能性は否定できませんが、10代のころから金銭トラブルがあり、それが40歳頃まで持続しているということになりますと、浪費とそれについての倫理道徳感の欠如は性格であると判断できると思います。
2. ただし、「持続している」かどうかはこのメールの記載からは不明であること(すなわち、メールから読み取れるのは、「10代のころも、40歳頃の現在も、浪費とそれについての倫理道徳感の欠如が見られている」までです。浪費が顕著な時期とそうでない時期の区別がかなりはっきりしていれば、「持続している」のではなく、「間欠的にみられる」ということになり、躁状態の時に浪費しているという判断が可能です)、うつ状態と診断されたことがあるらしいこと、双極性障害の家族歴が濃厚であることからは、双極性障害の可能性が否定できないということになります。
3. もし現在、脳出血で入院・リハビリ中なのであれば、まず具体的な病状と今後の見通しをその病院の医師に確認することが必要です(このメールの記載からは、脳出血と入院が事実であるかどうかを質問者が確認したかどうかが不明です。「長姉が脳出血で倒れたとの連絡が入りました」とのことですが、この連絡はどなたから入ったのでしょうか)。
4. 長姉様はこれまでご家族に対して嘘を重ねてきていること、入院中とする一方で、かなり活動的であることから、上記3の通り、そもそも脳出血も入院も嘘ではないか、あるいは、脳出血は事実でもそれはきわめて軽いもので、長期の入院見込みというのは嘘ではないかということを当然に疑うべきでしょう。
5. 入院が事実であれば、上記3の通り、まずは入院主治医に病状等を確認し、ご家族からは現状をお伝えすることが必須です。そうすればその結果、その主治医から精神科医に連絡し、成年後見診断書を発行してもらう方向に進むことは期待できます。期待はできますが、実際の発行までには相当な時間がかかることが予想されますので、ご家族として一刻も早くまずは主治医にコンタクトすることが望まれます。
6. 対応は成年後見だけとは限りません。が、いずれにしても今の主治医に何らかの対応の開始手続きをしていただかなければ何も始まりませんので、主治医へのコンタクトは必須です。
7. 双極性障害などではなく、性格の問題であるという結論になることも考えられます。その場合、ご家族にできるのは長姉様ご本人の説得しかありませんが、これまでの経過から見ますと、説得が奏功する見込みはきわめて薄いでしょう。また、説得を受け入れたふりをして実際はこれまでと同じ行動を繰り返す可能性が高いという現実も直視しなければなりません。そうなりますと、冷酷な二者択一の決断が必要でしょう。つまり、「どこまでも長姉様をサポートする」か、「縁を切る」か、の二者択一です。

(2023.12.5.)

05. 12月 2023 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 精神科Q&A, 躁うつ病 タグ: |