【4724】ゆううつの原因が薬にあるのか
Q: 19歳女です。
精神科を受診してADHDと診断されました。アトモキセチン25mgを処方され2週間ほど飲んでいますが体に合わないような気がしています。
飲み始めは副作用が強いかもしれないと言われたので我慢して飲んでいましたがつらいです。
まず飲み始めて2日目に吐き気がひどく吐いてしまいました。
それから吐くことはなかったのですが、1日中動悸があり、疲れやすくなりました。特に夕食後飲んだあとは動悸がひどく、眠れないと医師に相談したところ飲む時間は朝でもいいと言われたので朝に飲むことにしています。
もともと無気力で集中力がないところが気になり受診したのですが、さらに無気力になったような気がしてゆううつな気持ちが続いています。その症状を伝えたところ抗不安薬の頓服でロラゼパム0.5mgも同時に出してもらったのですが、ゆううつな気持ちになる原因が薬の副作用にあるのではないかと疑っています。
片頭痛を持っておりエレトリプタンを発作時に飲んでいるので、飲み合わせの都合上抗うつ剤は一緒に出せないと言われました。
今のままでは大学生活に支障が出ると思い薬物治療をはじめたのですが正直アトモキセチンの服用をやめたいです。医師には副作用がひどく出たら飲むのをやめてもいいと言われましたが、ゆううつな気持ちが副作用なのかどうかわからないため、自己判断でやめていいのかわかりません。次の通院まで我慢して飲み続けたほうがいいでしょうか。また、アトモキセチンの服用をやめた場合に他に治療法はあるのでしょうか。
林: ある病気に対してある薬の服用を開始してからまもなく、ある症状が強くなったとき、その原因として考えられるのは
(1) 病気の症状の悪化。薬の服用開始の時期に一致したのは偶然にすぎない。
(2) 薬の副作用
(3) その他
を挙げることができます。多くの方はこのような経過の場合は(2)を第一に考えるものですが、(1)の可能性も十分にありうるという認識が必要です。(1)と(2)のどちらの可能性が高いは、もともとの病気の症状や経過、そしてその薬によってその副作用(「ある症状が強くなった」というその「症状」を副作用であると仮定した場合)の頻度などによって異なります。
その意味ではこの【4724】のケースの「ゆううつ」が(1)か(2)かを判断することは不可能です。
すなわち、
ゆううつな気持ちになる原因が薬の副作用にあるのではないかと疑っています。
それは合理的な疑いではありますが、そうでない可能性とどちらが大きいかはこのメールからは判断することは不可能だということです。
そうしますと、
医師には副作用がひどく出たら飲むのをやめてもいいと言われましたが、ゆううつな気持ちが副作用なのかどうかわからないため、自己判断でやめていいのかわかりません。
そのようにお困りになるのは当然で、このような場合は、次の予約日の前でも、電話などで主治医に問い合わせて服薬継続するかどうかの指示をいただくのが適切な対応です。
ただ実際には、そのような問合せに対応していない医療機関もかなりありますので(それは医療機関としては本来不適切ですが、それが現実です)、問合せに応じていただけない場合は自己判断せざるを得ず、そうしますと、質問者の現在の苦しみが強いこと、そしてADHDへのアトモキセチン服用は必須の治療法ではないことなどを総合すると、服薬は中断し、次回の診察日に経過を説明して相談するというのが妥当ということになると思います。
アトモキセチンの服用をやめた場合に他に治療法はあるのでしょうか。
ADHDには他の治療法もあります。ただしこの【4724】のケースでは、ADHDであるという記述のみで、具体的にどのような症状があったか不明ですので(「もともと無気力で集中力がない」「今のままでは大学生活に支障が出ると思い」だけでは具体的な記載とは言えません)、そもそも薬物療法が必要かどうかを含め(ADHDの薬、それは治療か商売か もご参照ください)、どのような対応が必要かは判断できません。ただ一般論としては、アトモキセチンがADHDの唯一の治療薬ではないとまでは言えます。
(2023.9.5.)