【4034】偉大なる宇宙のパワーによって

Q: 31歳の主婦です。今まで迷っていましたが相談させていただきます。統合失調感情障害と診断されていますが、診断を疑問に思っています。と言いますのも、およそ三年前になります。二十代も後半の頃から哲学にのめりだし、頭の中に宇宙の偉大な哲学のパワーによって勝手にイメージが沸くようになりました。
家事をしなければいけないのに勝手にイメージというか哲学が沸くものですから手につきませ ん。夜も寝ないで哲学にのめり込んでいき、ひどい頭痛で救急医療にも行きました。その哲学をしている頃は宇宙の知恵を教えてもらうのが楽しくて、ほぼ24時間、哲学していました。宇宙はすごい知恵を持っている、地球の、政治のこれから、宇宙の秘密、それらを教えてもらえるなんて、私は選ばれし預言者だと思いました。聞いたことのない素晴らしい音楽も聞かせてもらいました。感動ばかりしていることに気づき、宇宙の第三者に感謝しました。

しかしやがて、宇宙の第三者は私を敵対することになります。盆踊りにみんなで円になって踊っているのを見て、関数だと周りにばらしてしまったので、それからです。いつも、四六時中私を見張って監視しているのです。隠れてタバコを吸っているのも逐一私にそれは悪いことだと報告してきます。私の家事を怠けている日常生活も、宇宙は、あるときは子供の姿、あるときは猫、 あるときは近所の人に、そして旦那に‥と姿を変え、私を監視してくることになったのです。 怖くなって家中のタップを分解し、盗聴器を探しました。ネットで打ったメールも通話も、ハックされ、誰も信じられませんでした。宇宙の第三者に、秘密を知りすぎたのでやがて私は消されると思い、今まで躁鬱病でかかっていた精神科の医師に(良くなったと思い通院を止めていた)一年ぶりにかかりましたら入院を勧められ、今では月に一度、LAIを打っています。入院からおよそ一年経ちますが、宇宙のパワーはもう私に力を貸してくれません。楽しかった哲学も消え果て、今は無気力です。私は本当に統合失調症だったのでしょうか?医師によりその名を与えられただけで、特別な体験をしただけとし思えないのですが。逆に、病気に仕立てられ、治療という名目に強制的に筋注を打たれること を、腹立たしく思います。あれが病気なら、私はもう良くなったので、通院を止めたら再び宇宙の哲学できる日が来るでしょうか?

 

林: あなたは統合失調症です。

私はもう良くなったので、通院を止めたら再び宇宙の哲学できる日が来るでしょうか?

それを期待するのは間違っています。また、「私はもう良くなった」は、以前に比べて良くなったという意味であれば事実ですが、まだまだ治っているとは言えません。治療を続けなければ悪化し、悲惨な帰結になるでしょう。

なお、このメールには、あなたの診断名として、躁鬱病、統合失調感情障害、統合失調症の三つが記されていますが、おそらく当初は躁鬱病と診断され、後に妄想がはっきりしてきたため統合失調感情障害に診断名が変更され、さらにその後、統合失調症という診断名も示唆されたということだと思われます。そして最終診断としては統合失調症に間違いないと思われますが、この【4034】のようなケースでは診断名が何であるかにこだわることにはあまり意味はありません。重要なのは、治療を続けなければ悪化するということです。

病気に仕立てられ、治療という名目に強制的に筋注を打たれること を、腹立たしく思います。

あなたは間違っています。治療に感謝するのが正しい態度です。治療を受けなければ際限なく悪化していたことは確実です。そして、繰り返しますが、これからも治療を続けなければ再度悪化し、悲惨な帰結が待っています。

(2020.5.5.)

05. 5月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 躁うつ病 タグ: , |