【4028】双極性障害とされていた父が、最近ADHDと診断された

Q: 10代男です。50代前半の父親についてです。
父は双極性障害I型で、最近主治医からADHDと診断されたそうです。しかし、今まで父親と一緒に暮らしてきて、父親がADHDというのはなんだか腑に落ちません。性格も明るく、いわゆる仕事もできるタイプだと思います。なにか慌てていたり、パニックになるようなところも見たことがありませんし、落ち着いた大人という感じです。車の運転も上手だと言えると思います。その一方で、落ち着いているのはそうなんですが、じっとしているということが苦手というのは見受けられます。また、せっかちでもあり、よく喋るというところもあります。車の運転も上手いですが、スピードは結構出す方です。(急発進、急ブレーキはありませんが)しかし、それらは躁状態によるものではないのかとも思います。
これらの特徴に加え、常にあたふたしていたり、優先順位がつけられなかったり、性格が暗かったり、不器用だったりすれば私も腑に落ちます。

もちろん、主治医の判断したことなので、それが一番正しいと思うのですが…
ADHDでも器用で、てきぱき動けるということはあるのでしょうか。知り合いに発達障害と思われる人がいるのですが、その人は不器用で、てきぱき動くことができません。スポーツもかなり苦手です。じっとしないとかよく喋るということはありませんが。完全なる私の主観かつ少ない情報ではありますが、父親はADHDといえるのでしょうか。

 

林: 昨今ではADHDや発達障害の過剰診断は著しいものがあります。「過剰診断」とは、簡単に言えば、病気というほどではないのに、または他の病気なのに、その病気と診断されることを指します。ADHDを例にとれば、
病気というほどではないのに <普通よりやや落ち着きがないという程度なのに>
または 他の病気なのに <たとえば、双極性障害なのに>
その病気と診断される <ADHDと診断される>
ことを指します。

この【4028】については、過剰診断かどうかはわかりません。質問者のおっしゃる疑問点はどれもその通りで、過剰診断の疑いは濃厚と言えますが、断定はできません。それがまさに過剰診断が増える宿命的な原因で、病気の診断とは、「その病気である」ことはかなり確実に言えても(たとえば、メールの情報だけからでも高い確率で正しい診断を下すことができることがしばしばある)、「その病気でない」ことを確実に言うのはかなり難しいものです。

この【4028】について付け加えますと、

車の運転も上手いですが、スピードは結構出す方です。(急発進、急ブレーキはありませんが)しかし、それらは躁状態によるものではないのかとも思います。

双極性障害は、躁状態の時期とうつ状態の時期がはっきりと分かれているのが特徴ですので、「躁状態によるもの」かどうかは、そういう時期とそうでない時期がはっきり分かれているかどうかが一つの大きなポイントです。逆にADHDではそのようにはっきり分かれることは考えにくいです。

なお、

知り合いに発達障害と思われる人がいるのですが、

このように、知り合いの方の状態を根拠に診断について意見を述べる方が多くいらっしゃいますが、その種の意見は多くの場合に誤りです。診断名が同じでも症状に違いがあるのは当然ですし、そもそも、その知り合いの方の診断名が、正しく開示されているとは限らない、というより、精神疾患の診断名は、正しく開示されないのがむしろ普通だからです。(その結果、「うつ病」や「発達障害」といった、現代では偏見の比較的少ない診断名が、隠れ蓑として開示されることが多くなるという現状があります)

(2020.4.5.)

05. 4月 2020 by Hayashi
カテゴリー: ADHD, 精神科Q&A, 躁うつ病