【3928】小学校以来自傷行為を繰り返し、今は双極性障害と診断され、統合失調症の薬を処方されている

Q: 20代の女性です。1年3ヶ月くらい前に精神科にて双極性障害と診断され、現在クエチアピン錠(100mg)を2錠、ヒルナミン錠(50mg)を3錠、毎日寝る前に飲むようにと処方されています。

私は小学校5年生の時に初めてリストカットをしました。小学生の間は年に1、2回ぐらいしかしなかったのですが、中学生になると頻度や傷の数が次第に増えていき、高校生になると毎日何百という数の傷をつけるようになりました。また、中学3年生か高校1年生の頃から、市販の薬を何十錠も飲むODもするようになりました。中学生の頃から養護教諭に「病院に行きなさい」と言われていたのですが、「私は病気じゃない」と言って受診を拒否していました。それでも高校1年生の時に一度精神科を訪れたのですが、1回行っただけですぐにやめてしまいました。しかし、高校1年生の冬に、自宅で市販の風邪薬50錠を一気に飲んで、そのままカッターで自傷行為に及び、薬でラリっているところを家族に発見され、病院に連れて行かれました。そしてそのまま精神科の閉鎖病棟に1か月半ほど入院しました。この時の診断名は、勝手に見た診断書によると「適応障害」でした(直接言われたわけではありません。この診断については、大学で知り合った精神科医や現在の主治医が「適応障害だというのは嘘だと思う」と言っていました)。

中学~高校で私に起こっていた症状というと、
・自傷行為(刃物で身体中を傷つける、薬の大量服用、爪を噛む、ささくれを剥く、唇の皮を剥く、髪の毛を抜く)
・なんでも人の顔に見える(袋や傘、踏切など、普通なら人には見えないはずのものでも人に見える)
・人の視線が気になる、誰もいないのに視線を感じて気になって仕方がない
・幻覚、幻聴(黒い人や人の目が見えたり、笑い声が聞こえたり、幻覚が「お前は悪口を言われている」などと言う)
・自殺願望や消えてしまいたい願望
・抑うつ気分や睡眠の質の低下、食欲の低下など

で、視線のことや幻覚、幻聴は大学に進学してからはほぼありませんが(一人きりの部屋でずっと視線を気にしたり、何回か夏ではないのに蝉の鳴き声のようなものが聞こえたり、耳元で女性に名前を呼ばれたりはありました)、その他は大学に進学してからもあります。

去年の夏に双極性障害だと診断されたのは、卒論や授業があるのにバイトを掛け持ちして(週7でバイトを入れていました)、軽率にアニメや特撮ものに毎月何万円もお金をつぎ込んだかと思えば、しばらくして食事が楽しくなくなり、ご飯の美味しさが感じられなくなり、さらにはロクに眠れなくなって笑わなくなったからです。鬱状態の時に仲の良い友人に受診を勧められて精神科を受診したところ、初診時に双極性障害の診断を下されました。今年の春までは軽躁状態と鬱状態がおよそ1か月おきに繰り返されていましたが、半年くらい前(春~夏)は鬱状態で、3ヶ月くらい前からは軽躁状態です。今の状態としては、毎日最大4時間しか睡眠をとらない、朝早く学校に来て夜遅くまで残って作業に没頭する、よく笑うしよくしゃべる、よく食べる、通院や服薬の必要性を感じない、ちょっとしたものが人の顔に見える、ささくれや唇の皮を剥くのが止められなくて指先がボロボロになっているなどです。

長くなりましたが、今回林先生にお伺いしたいのは、以下の点です。
(1) 高校生の時に処方された薬(主にリスパダールOD錠)や今処方されている薬をネットで検索すると、必ず統合失調症の薬として使われていると出てくるのですが、これは私に統合失調症の要素がある(または主治医が内心統合失調症を疑っている)から処方されるのでしょうか?それとも統合失調症の薬でも双極性障害などの治療に用いられることがあるのでしょうか?
(2) 今は学校の先生や友人に双極性障害であることを公表しているのですが、就職活動を行う際に、先方にあらかじめ双極性障害であることを伝えるべきでしょうか?

いろんなことが頭に浮かんでなかなか上手く文章をまとめられませんでした。乱文お許しください。

 

林:
(1) 高校生の時に処方された薬(主にリスパダールOD錠)や今処方されている薬をネットで検索すると、必ず統合失調症の薬として使われていると出てくるのですが、これは私に統合失調症の要素がある(または主治医が内心統合失調症を疑っている)から処方されるのでしょうか?それとも統合失調症の薬でも双極性障害などの治療に用いられることがあるのでしょうか?

統合失調症の薬でも双極性障害などの治療に用いられることはよくあります。ですから、リスパダール等を処方されているからといって、医師が統合失調症と診断しているとは限りませんし、統合失調症の要素があると考えているとも限りません。
しかしこの【3928】のケースでは、診断が双極性障害であっても、症状からみて、統合失調症の要素があると言えます。「精神病症状を伴う双極性障害」というのが適切でしょう。

(2) 今は学校の先生や友人に双極性障害であることを公表しているのですが、就職活動を行う際に、先方にあらかじめ双極性障害であることを伝えるべきでしょうか?

あらかじめ伝えて、適切なサポートを受けつつ仕事をするべきです。
・・・というのが理想ですが、現実には、精神疾患に罹患していることを伝えたことが理由で不採用になることはあり得ます。この場合、「精神疾患だから不採用」とストレースに告げられることはなく、何か別の理由をつけて不採用になるというのが現実にはよくあることです。

(2019.12.5.)

05. 12月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 躁うつ病 タグ: |