【3299】妄想によって活力が出るのですが、それでも治療すべきでしょうか

Q: 30代女性です。
先生にお尋ねしたい内容を簡潔にまとめさせていただきます。
1、事実ではないと解ってはいるが、根強く残る妄想のお陰で生き甲斐を感じる場合でも、妄想が無くなるように現実を医師に伝えて、妄想を消す努力をすべきでしょうか。

2、母親との距離感がわかりません。

今までの病状と経過をお伝えします。長くなりますがお読みいただければと思います。

二十歳のころ、仲間内のチャットで「死ね」と匿名で言われ疑心暗鬼になりました。その後、混乱と神経衰弱から通院しました。
クリニックに通いました。鬱状態が酷くなり、独り暮らしを辞めて実家に帰りました。学生でした。
二十一歳、実家にてうずくまって動けないほど鬱状態が酷くなりました。神経科に通院していました。

この鬱状態と前後が不明ですが、「髪が長いから電波をキャッチしてしまう」「テレビの中で自分のことが語られている」などの妄想が強くなりました。

投薬にて一時回復をして、復学しますが就職を期に再び鬱が酷くなり、一年で会社を辞めました。

覚えているのはパキシル、ジプレキサ、ハルシオンを飲みアルバイトを転々としたことです。妄想は消えてスポーツや遊ぶこともできました。
その後鬱状態もありながら過ごしていましたが、24歳の時に「芸能人が私のブログを読んで好意を持ってくれている」という妄想から、躁状態になり何日も眠らず、夜中も化粧をして暴飲暴食し、歌を歌い、家族に向かい話し続けました。
24歳、躁状態を押さえる薬を注射される際に、こんなにらくなのに!と医師に食ってかかりました。
以来、36歳まで鬱状態もありつつ、アルバイトをしていましたが、転院し、働く意欲が強くなりました。
先日、久しぶりに「芸能人が私のブログを読んでいる」という妄想が強く現れました。しかし妄想のお陰で明るい気持ちにもなれるのです。
ブログを読まれているはずはない、しかしそうかもしれないと思うだけで、なんというか、生きる力になるのです。

十五年ほど母と暮らしていますが、母に精神的に依存しすぎてしまいます。病気ならば仕方ないのでしょうか。
昔は母とは一生、一緒には暮らしたくないと思っていましたが、今はよき理解者で感謝もしています。
ただ、どこかで自立しなければ、これからくる母の介護や、今は母に頼っている家事、稼ぐこと、それらをこなしていける自信がなく、かといって毎日疲れて何も行動できません。

林:
1、事実ではないと解ってはいるが、根強く残る妄想のお陰で生き甲斐を感じる場合でも、妄想が無くなるように現実を医師に伝えて、妄想を消す努力をすべきでしょうか。

すべきです。
妄想のお陰で生き甲斐を感じる場合」にどうすべきか、と、この部分の問いだけを取り出せば、必ずしも妄想の治療をすべきという答になるとは限りません(と言っても大部分の場合は治療をすべきですが)。けれどもこの【3299】のケースは、これまでの経過から見て、妄想を治療しなければ悪化する可能性が非常に高く、また、その悪化した時の状態が重篤なることはほとんど確実と見られるからです。(このケースの診断名は、統合失調症か、統合失調感情障害か、精神病症状を伴う双極性障害のいずれかですが、この三つがあげられるのは、単に診断基準上の問題にすぎず、「精神病性障害」という意味ではどの診断名でも大差はありません)

 2、母親との距離感がわかりません。

お母様との関係についての具体的描写がほとんどないので、このご質問については回答できません。

(2016.10.5.)

05. 10月 2016 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 躁うつ病 タグ: , |