【2560】 アニメやゲームの美少女キャラにのめり込む私は精神病なのでしょうか
Q: Webで病院やカウンセラーなどを検索して、先生のサイトにたどり着きました。大変な長文になってしまい申し訳ないのですが、もし宜しければ御回答をいただければと思います。質問の趣旨は『私がどういったタイプの精神病なのか』です。 私は現在35歳の男性で、それなりに大手の会社員で、都内のマンションに一人暮らしをしています。アニメや美少女ゲームが大学生のころから大好きで、もう15年以上経った今でも手放せません。デートや合コンに行くよりも、家でアニメを見たりゲームをしたり、妄想をしたりするほうが楽しいです。過去には彼女がいたこともありましたが、彼女よりもアニメキャラのほうが好きなのでアニメキャラに対して浮気をしている気分になり、最近は彼女をつくろうとも思いません。休日もボランティア活動と地域自治会活動を除けば、ほとんどゲームをしている、いわゆる引きこもり生活です。平日でも帰宅し家事を終わらせると、眠くなるまでずっとゲームやアニメを見ています。ほかの事はほとんどしません。もう10年以上このようなライフスタイルを続けていて、死ぬまでこのライフスタイルを続けるつもりでした。 それが、ここ半年ほどで少し困ったことになりました。経緯は次のようなものです:
1. 母親がお見合いの話をしつこく持ってくるので、ある日、心に決めた人がいると言って断る。
2. 母親が、じゃあその人に会わせろというので、PCを立ち上げて、この子が心に決めた子ですと、美少女ゲームのキャラを紹介する。(冗談ではなく、本当に世界で一番好きな子です)
3. 母親は錯乱。(母親は私がいわゆるオタクということを知らないようでした)
4. 母と兄に精神病院に強制連行され、精神病だからしばらく入院しなさいと言われる。
5. その精神病院での診察では、この絵がなんに見えるか?とかそんな訳のわからない検査をいくつかやっただけで、血液検査や脳波測定なども一切なく、特に問題ないので帰ってくださいといわれました。 しかし、受付で母親がヒステリーになって、『あの子は精神病なんです!お願いですから入院させてください!』と泣きながら叫び、暴れるので、保安係の人に警察を呼ばれそうになり、兄が無理やり母を連れて帰りました。これが半年前の話です。で、しばらくは母からも兄からも何の連絡もなく平和な日々が続いていたのですが、
6. 休暇明けに海外旅行から帰宅すると、自宅のPCゲームやアニメDVD、ポスター、フィギュア(アニメキャラの人形)が全部なくなっていました。すぐに警察に電話し被害届を出しましたが、まさか・・・と思い、兄に電話すると、母親が遺品整理業者に頼んで全部ごみに出したと言うのです。盗まれたのなら、まだ戻ってくる可能性があるが、すでに焼却されていたらと思うと、頭が真っ白になりました。何年もかけて集めてきた大切な宝物が、一瞬で奪われる。盗まれたのなら、まだどこかの誰かの手に渡って愛されることもあるかもしれない。でも燃やされたらもうあの子達はおしまいです。もう悔しいのと暢気に旅行になど行った後悔とで、涙が出ました。しかも、兄も母も私の部屋の鍵などもっていないはずなのに、大家に連絡して精神病の息子から連絡がないということで空けてもらったらしいのです。心に決めた女の子だけはいつも肌身離さず海外旅行にも連れて行っていて無事だったのがせめてもの救いでした。
7. 母親に直接会うと、怒りでどうにかなってしまいそうだったので、手紙を書きました。『あなたのやったことは、たとえ親子の関係でも、立派な犯罪で、許されることではない。生んで育ててもらった恩は感じるが、これ以上自分の大切なものを奪うなら、縁を切る。』というような内容だったと思います。
8. その後色々ありましたが、結局『精神病院に定期的に通う。』ことを条件に、母・兄と和解しました
9. 母と数件の精神病院へ行きましたが、ろくな診察もせずに、カウンセリングの予約を入れられました。聞くと、カウンセリングの人は医者の資格も持っていないそうで、費用も毎回7千もするとのことでした。もう少し、色々診察があるだとうと思ったのに、精神科医のあまりに投げやりな態度に唖然としました。
10. その後自腹で20回ほどカウンセリングをしましたが、ただアニメの話で盛り上がるだけで、ある日「アニメや美少女ゲームにのめりこむのは決して良いことではないが、もうあなたには私のカウンセリングは効果が無いので終わりにしましょう。」と言われ、高いお金を払ったのに何も効果が無いまま終了しました。お金を返してほしい気分です。 この時点では、自分は特に病気じゃないのかなと思って安心していました。
で、前置きが長くなりましたが、今現在 私が精神病じゃないかと真剣に悩んでいるのは、つい先日の週末に「高齢引きこもりのサポート団体」というところから、母と一緒にカウンセラー3人ほどがやってきて、『私がいかに深刻な精神病であるか』を延々と説明されたせいです。カウンセラーは皆さん中年の女性でしたが大体以下のような話のループでした。(【カ】はカウンセラーの発言です。)
【カ】:アニメやゲームなんてくだらない。あなたの年収ならお見合いでも相当良い人と結婚できるはず。あなただってずっとこのままでいいと思っていないでしょ?
【私】:それは私の自由で、私はずっとこのままでいいと思っている。結婚をする気もないし大好きなものを手放す気も無い。誰かに迷惑かけているわけでもないのでほうっておいてほしい。
【カ】:あなたがアニメのキャラに恋愛感情を持つのは、脳の回路にエラーがあって、現実とアニメの世界を無意識レベルで混同してしまっている。大変危険な状態なので今すぐ治療が必要。
【私】:混同はしていない。日本人は古来より万物に魂(神)が宿ると考えてきた。人形やキャラに愛着がわき、それらにも魂が宿ると考えることはそんなに危険なことか?
【カ】:人形に魂が宿るとか、とても危険だ。あなたのような引きこもりを何人も見てきた。これ以上親に苦労をかけるな。結婚をして子孫を残すのが人間の義務だ。
【私】:私は働いているし、親に仕送りもしている。確かに子供を作らないことに負い目は感じるが、毎月あしなが育英会やユニセフへ相当な寄付をしている。
【カ】:働いているからといって安心できない。今のあなたの精神状態はとても幼稚で引きこもりと全く同じ。その病気はアルコール依存症や、薬物依存症と同じ構造で、このままだとあなたの人生は台無しになる。依存症患者はみんな自分では問題ないと思っている。
【私】:しかし、5件も精神病院へ行って、治療不能だといわれた。これ以上どうすればよいのかわからない。
【カ】:それは経験の浅い医者や、問題をよくわかっていないカウンセラーだ。(私の母からは)診察時間も短かったと聞いている。あなたが強度の依存症であることはほぼ間違いない。私はもう何人もあなたのように言い訳をする人を見てきたベテランだ。
【私】:じゃあ、あなたの治療を受けますが、どんな治療なんですか?
【カ】:2週間、林間学校で泊りがけの共同生活をしてもらう。その中で、人間としての自然な思考を取り戻す。
【私】:仕事があるので、とても2週間なんか無理です。
【カ】:仕事なんかよりも、今あなたは治療しないと大変なことになる。アルコール依存症でたとえると肝硬変で死ぬ手前だ。
【私】:話がかみあっていない。あなた方と私ではそもそも前提となる価値観が違いすぎる。
【カ】:あなたが、私と話がかみあっていないというのであれば、もうそれが重症な精神病の何よりの証拠。
話は以上のようなループで、何時間も、何時間も、昨日今日と押し問答していた感じです。母親は泣くし、カウンセラーは罵声を浴びせるしで、もう疲れ果ててしまい、今はだんだん自分の脳に異常があるように思えてきて、真剣に悩んでいます。さっき友達2人に電話相談しても「はぁ?明日仕事なのに、なに言ってんだ?」とあしらわれる始末で、今はその友達も私と同じ精神病なのでは?という考えがよぎっています。その引きこもりサポート団体をWebで調べたのですが、特に悪い噂も良い噂もありませんでした。
【以上の話から、質問させていただきます。】
1. 私の脳の回路にある異常とは、精神科医的に説明すると、どのようなものなのでしょうか?
2. また、長い間に形成された(と言われました)脳の回路の異常は、2週間の治療プログラムなんかで治るようなものなのでしょうか?
3. いまだに主治医が見つかっていない状況ですが、主治医を見つけるにはどうしたらよいのでしょうか? (母親と5件の病院を回りましたが、どこの病院でも適当な診察しかしてもらえず、やんわりと「もう来るな」と言われました。) お忙しい中恐縮ですが、何卒 御回答よろしくお願いいたします。
林: 「自分は家族から精神科で治療を受けるよう言われた。だが自分には精神科での治療を必要とするような症状はない。おかしいのはむしろ家族のほうだ。」
このような訴えをされる方の大部分は、ご本人が精神疾患です。そして、メールでこのような相談をされる場合は、自分が精神疾患であることの根拠になるような事実は書かず、自分の健康な面が強調して書かれ、家族のおかしい面が強調して書かれているものです。文面中には虚偽と思われる記述もしばしばあります。
こうしたことを勘案しても、この【2560】は、質問者ご本人の問題よりも、お母様をはじめとする周囲の方に問題がある可能性のほうが大きいと思います。(このメールの記載内容がすべて事実であると私が判断しているわけではありません。部分的には誇張や、虚偽とはいわないまでも事実とはニュアンスの異なる記載があると判断しています。しかしそれらを勘案しても、問題は本人よりも周囲にあると結論しました)
アニメにのめりこむこと自体は、他人がとやかく口を出すような問題行動ではありません。(「自分の領域にひきこもって、何かにのめりこむ」という行為は、しばしば周囲から問題とされますが、本来的には何ら問題のある行為ではありません。例外といえるのが違法薬物にのめりこんだ場合です。これが「例外」というのは意味深長なことで、本来は、人は他人の嗜好に口を出すべきではないということが、違法薬物だけは例外という事実に目を向けることで再確認できると思います。さらに言えば、違法薬物使用者が、「誰にも迷惑をかけず自分の好きなことをやっているだけなのにどこが悪い」と言ったとして、それに論理的に反論するのは実は難しいことです。「違法だから、悪いのだ」が唯一の正しい反論ということになるでしょう。)
括弧の文が長くなりましたのでその前の文からやり直します。
アニメにのめりこむこと自体は、他人がとやかく口を出すような問題行動ではありません。但し、その結果、周囲に迷惑をかけたり、生活上何らかの問題が発生すれば、そののめりこみは容認できないということになります。
ではこの【2560】の質問者ののめりこみが、周囲の迷惑や生活上の問題を生んでいるでしょうか。
第三者から見れば、そんなことはないでしょう。したがって、カウンセラーの方から、
【カ】:アニメやゲームなんてくだらない。あなたの年収ならお見合いでも相当良い人と結婚できるはず。あなただってずっとこのままでいいと思っていないでしょ?
と言われたのに対し、質問者が、
【私】:それは私の自由で、私はずっとこのままでいいと思っている。結婚をする気もないし大好きなものを手放す気も無い。誰かに迷惑かけているわけでもないのでほうっておいてほしい。
と応じられたのは、正当なことと言えるでしょう。
しかし母親から見れば、いい年をして結婚もしないでアニメのキャラが恋人だ、将来結婚を真剣に考えている相手だ、という言葉を聞けば、これは息子の(そして母親自身の)生活上の大問題であるということになるでしょう。
だからといってそれ(アニメのキャラが恋人だ、将来結婚を真剣に考えている相手だと広言する息子)を精神病と呼ぶかどうかは別の話で、普通は精神病とは呼びません。
けれどもこの【2560】のお母様は、自分には理解できない精神状態の人を表すのが「精神病」という言葉だと考えていらっしゃるのでしょう。
それは重大かつ深刻な誤りですが、そういうふうに考える人が少なからず存在するのは事実です。
というわけで、【2560】の質問者が、複数の精神科を受診しても、これといった診断も治療もなされなかったというのはうなづけることです。今後、いくら別の精神科を受診しても、対応は似たり寄ったりになると思います。
但し、メール後半に書かれているカウンセラーの方々が推奨する施設なり機関なりを受診すると、新たな展開があるかもしれません。その「新たな展開」が、【2560】の質問者にとってプラスになるかマイナスになるかは、私には判断できません。引用されているカウンセラーと質問者の対話を読む限りでは、彼らは胡散臭く感じられますが、先進的で斬新な治療は、当初は常に胡散臭く感じられるものですので、胡散臭いからといって常にダメとは限りません(多くの場合はダメですし、ここに引用された対話を読む限りでは、胡散臭いというレベルではなく、論外です。しかし引用が正確になされているかどうかはわかりませんので、現実の彼らが論外かどうかまではわかりません)。
以下、ご質問項目に簡潔に回答して結びます。
1. 私の脳の回路にある異常とは、精神科医的に説明すると、どのようなものなのでしょうか?
異常というレベルのものではないでしょう。
2. また、長い間に形成された(と言われました)脳の回路の異常は、2週間の治療プログラムなんかで治るようなものなのでしょうか?
もし異常があるとすれば、そんなものでは治らないと思います。
3. いまだに主治医が見つかっていない状況ですが、主治医を見つけるにはどうしたらよいのでしょうか?
見つからないと思います。
やんわりと「もう来るな」と言われました。
病院側がそう言ったのは正当でしょう。
どこの病院でも適当な診察しかしてもらえず、
質問者が適当な診察と感じたにすぎず、実際には「適当」ではなく「適切」な診察であった可能性のほうが高いでしょう。
(2014.2.5.)