【4362】退院して2年で再発し、再入院して回復しました(【4081】、【4297】のその後)

Q: 【4081】双極性障害と診断されているが統合失調症ではないか【4297】患者が病名を知らずとも適切な薬を飲み症状が落ち着いていたらそれで治療としては成功でしょうかで回答をいただいた30代前半女性です。薬はきちんクエチアピンを200mg服用していましたが、退院して2年くらいたったころ(今から3ヶ月前ごろである3月頃)から「なんとなくしんどい」「なんだか疲れた。ダルい。」と感じるようになりました。そこで仕事を休んで寝ていると両親の責める声がしてきました。「仕事に行かないなんて職場でよほど嫌なことがあるに違いない」「いつまでも寝てて。もう知らんわ。」「自衛隊に入れてやろう」などです。そんな両親の声を聞いて「こんなにしんどくて寝ているのにわかってくれない」と怒りの気持ちが湧いてきました。しかし、わたしのことを心配して言ってくれている両親を責め立てるわけにはいかず、世の中の誰でもいいからわたしが罵詈雑言を吐いても1番心が痛まない人を考えたところ、仲の良かった後輩が過労で自殺した企業が思い当たりました。そこで、その企業の掲示板に亡くなった後輩への恨みを書き殴りました。それでスッキリしたのですが、やった後で大変なことをしたことに気がつき、書き込みの削除依頼をしました。すると、1週間後に削除するという回答でした。1週間も掲載されていては企業のイメージダウンにつながり名誉毀損になる。後輩の遺族も不快になる。これは犯罪だと思い、しばらく留置場か精神病院に泊まりこめるように着替えなどを積み込み泣きながら自首しました。すると警察では、「文章が支離滅裂だから何を書いているか分からないよ。」「今はちゃんと通院できているの?病院はどこなの?」「大丈夫だから帰って今日は早めに休みなさい。」と言われて釈放されました。家に帰ると両親のわたしを責める声がひどくなっており、自首してから3日間寝ていたのですが、「掲示板の書き込み、ムカついて夜寝れなかったわ。」「◯◯◯」(掲示板に書いたことを読み上げる声) など24時間続き、2ヶ月前に母親に心臓がドキドキするから病院へ行きたいと伝えて、父親は「いかんでいい。疲れてるんなら寝てたらいい。」と言いましたが、受診しました。即日任意入院となり、58日間入院しました。クエチアピンは200mgから徐々に増やして500mgになりました。責める声が消えたあとに説明があり、わたしは今回は再発で、幻聴、幻覚、幻味、被害妄想、思考伝播、思考化声が見られたということでした。両親の責める声は幻聴でした。退院後に企業の掲示板を見るとキレイに消えており、安心しました。退院直前に光トポグラフィーの検査をナースの勧めで受けました。結果は統合失調症でした。しかし医師は、光トポグラフィーの精度は70%で問診の方が重要であること。急性期から回復後にフルタイムで勤務できるほど後遺症がなく回復していることから、双極性障害という診断は揺らがないと説明がありました。わたしはきちんと薬を服用していましたが、2年で再発しました。3月に再発ということで、職場の年度末のバタバタした雰囲気にストレスを感じたのかもしれません。仕事には来週から復帰します。58日分の入院費は、非課税世帯なので安くなったこと。医療保険が入院一日3000円出たこと。傷病手当金が給料の67%支給されたことから結果的に少し貯金が増えました。この体験が誰かの役に立つといいなと思い書きました。

 

林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。
統合失調症が入院治療で回復し安定していたものの(【4081】から【4297】)、あるとき再発し、治療により回復(【4362】)という経過は、統合失調症として一つの典型的なものです。再発の理由はこのメールからは不明ですが、

3月に再発ということで、職場の年度末のバタバタした雰囲気にストレスを感じたのかもしれません。

それが関係していたかもしれません。
もちろん再発を予防できることが理想ですが、現実にはなかなか理想通りには行きません。たとえば仮に年度末の雰囲気が関係していたとしても、仕事をしている以上その雰囲気を回避することは難しいでしょう。
したがって現実的には、むしろ再発の兆候が見られたときに早めに対処することが重要です。その意味では

「なんとなくしんどい」「なんだか疲れた。ダルい。」と感じるようになりました。

このような漠然とした不調が、しばしば統合失調症再発の兆候であるという認識が重要です。すなわち、この時点で早めに対処すれば、再入院を必要とするまでの悪化は防止できたと思われます。(「早めに対処」とは、具体的には予約日を待たずに精神科を受診することです。そして対処は多くの場合、薬の増量です。薬が増量されることを嫌って受診を躊躇する方もよくいらっしゃいますが、それは結局はさらに症状が悪化して、さらに薬の増量や、あるいは入院が必要になるということになります)

そして

両親の責める声がしてきました。「仕事に行かないなんて職場でよほど嫌なことがあるに違いない」「いつまでも寝てて。もう知らんわ。」「自衛隊に入れてやろう」などです。

これらの声について質問者は、再入院して回復した現在は幻聴であったと納得しておられますが、当時は幻聴であるとは認識できなかったか、または、幻聴かもしれないという思いはあっても確信できなかったことが読み取れます。これも再発のときにしばしばあることです。

そして質問者は、次のように、家庭の外での行動に出てしまいます。

わたしのことを心配して言ってくれている両親を責め立てるわけにはいかず、世の中の誰でもいいからわたしが罵詈雑言を吐いても1番心が痛まない人を考えたところ、仲の良かった後輩が過労で自殺した企業が思い当たりました。そこで、その企業の掲示板に亡くなった後輩への恨みを書き殴りました。

ここまでの経過は、

1 漠然とした不調
2 幻聴
3 社会的に逸脱した行動: 無関係な他人への攻撃

とまとめることができます。これもまた、統合失調症の再発時、あるいは初発時に見られる典型的な経過の一つです。
そしてこのとき、周囲の目には
3 社会的に逸脱した行動: 無関係な他人への攻撃
しか見えないことに注意する必要があります。3だけを見れば、「この人は無関係な他人を攻撃するひどい人だ」としか思えないでしょう。そしてその人が統合失調症であることを知れば、「統合失調症の人は無関係な他人を攻撃するひどい人だ」と認識するでしょう。それは外見的にはそうであっても、統合失調症の症状のポイントは「無関係な他人を攻撃する」ではなく、そのような行動に至るまでの自覚的な体験(幻聴など)にあることが、この【4362】から読み取れることと思います。

【4362】ではこのあと荷物をまとめて泣きながら警察に自首するという行動に出ており、この時点では警察官が「今はちゃんと通院できているの?病院はどこなの?」「大丈夫だから帰って今日は早めに休みなさい。」とアドバイスしたことからわかるように、【4362】の言動は精神病に基づくことが明らかであったと言えるでしょう。また、【4362】ご本人としては罵詈雑言を記したつもりでも、警察官が「文章が支離滅裂だから何を書いているか分からないよ。」という言葉の通り、統合失調症が悪化したときの文章や言動は、本人の主観的認識がどうであれ、客観的には支離滅裂だったり支離滅裂に近いことがしばしばあるものです。

2ヶ月前に母親に心臓がドキドキするから病院へ行きたいと伝えて、父親は「いかんでいい。疲れてるんなら寝てたらいい。」と言いましたが、受診しました。即日任意入院となり、58日間入院しました。

入院しなければ症状はさらに悪化し、危険な状態になっていたでしょう。
このようなとき、この【4362】のケースのお父様ように、ご家族が症状を軽くみて受診が遅れたり受診させなかったりすることも少なからずあり、その結果は言うまでもなく悲惨なものになります。【4362】は受診、そして入院治療を受けられて本当によかったと思います。

この体験が誰かの役に立つといいなと思い書きました。

統合失調症の再発への対処の実例として、とても多くの方々の役に立ったと思います。あらためて経過のご報告に感謝いたします。

まもなく仕事を再開されるとのこと、再発の兆候に十分注意して活動してください。先に述べたとおり、再発の兆候は漠然とした不調であることがしばしばあります。そのような不調を自覚されたら、予約日前でも早めに精神科を受診してください。今の安定した状態が続いて元気に仕事を続け、さらに改善されることを願っています。

(2021.8.5.)

05. 8月 2021 by Hayashi
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