【4340】 病気か性格か、性的なことと親との関係について

Q: 20代後半の女で、大学院生です。 私が何かの病気なのか、性格に難があるだけなのか知りたいと思い、メールをいたしました。
以下、時系列で記載します。昔の記憶があまりないため不正確な記述が多く、また情報の取捨選択ができず冗長かと思いますが、お許しください。

1. 幼稚園児の頃、友人の女の子といたとき知らない若い男に「風邪じゃないかみてあげるからおいで」と声をかけられ、ついて行ったところ、パンツを下ろすよう言われ、下ろしたら性器を舐められた。そのあと男を突き飛ばして逃げた。いっしょにいた女の子には私が口封じをした。親には黙っていた。出来事自体はずっと覚えていてたまに思い出していたが、何の感情も湧いてこなかった。この頃自慰を始め、罪悪感があった。
2. 小学校に上がると同時に、長男である父親の実家の近くの一軒家に団地から引っ越した。もともと小学校は1学年1クラス程度の田舎で学区内での転居だったが、団地と異なって同学年の子がほぼいなくなり、よく一人で帰っていた。帰りに車に乗った不審者に声をかけられたことが何度かあり、停車中の車を見ると怖かった。小2からは母がパートに出るようになり一人っ子だったため鍵っ子の日もあった。この頃から、主にお金のことでよく両親が喧嘩をしていた記憶がある。母に「お母さんとお父さんどっちについていく?」と聞かれたり、夜、母に車に乗せられ、「このままお母さんと死ぬのかな」と感じたりすることがあった。夫婦喧嘩の最中は不安でいっぱいで、なるべく巻き込まれたくなかった。止めようとしたこともあったかもしれない。また、時期は不明だが、父親が友人の借金の(連帯?)保証人になりトラブルがあったことをなぜか覚えている(最近、両親にそれぞれ聞いたところ、事実であった。母によれば、主債務者である友人が行方をくらまし、父親は数十万円を負担した)。小さい頃大人になる想像ができなかった。
3. 小学5年生のとき、男の担任教師に腰を触られるなどしていた。ほかの女子児童とも距離が近かったように思う。親には言わなかった。
4. 母は、私の成績について「頭がいいね」「○○ちゃんは成績悪いのに比べてすごいね」という褒め方をした。成績が悪くなると母に捨てられるとどこかで思っていた。
5. 公立中にあがりトップの成績で、県の模試でも一桁、県内の私立では一番の高校に特待生として合格。私は県内で一番の公立高校に行きたかった。しかし、「私立はきっと医者の子どもとかばかりであなたが肩身の狭い思いをする」「女だから心配」という理由で、電車通学の必要ない母方の祖母宅近くの進学校に行くことになった。
6. 高校でもずっとトップだったが最難関大学の受験に失敗し後期入試で旧帝大に合格し進学。不合格がわかると母が泣いており期待に応えられなかったことが申し訳なかった。一人暮らし開始。
7. 大学の学費の一部免除を受けることを母に相談したが拒否。奨学金を借りていたが「恥ずかしいから」祖母には黙っておくよう言われた。
8. 大学入学時にGPSによる位置情報確認を親ができるように携帯に設定され、たまに帰りが遅いと、こんな時間までどこにいるんだ、と父から連絡があった。機種変更を機にこの設定は解除してもらった。
9. 大学時代はじめて彼氏ができ、1.の出来事を初めて他人に告白。性交渉の最中に泣くことがたまにあった。この彼氏とは半年ほどで別れた。
10. もともと稀発月経でこの頃多嚢胞性卵巣と診断。プレマリンとプロゲストンによりカウフマン療法開始。
11. 9.の彼氏と別れてから、家の中で動作が止まってしまう、ぼーっとしてしまう、1.の出来事を想起してしまう、夢で身近な人間と性交渉をする夢を頻繁に見る、などのため、心療内科へ。軽く認知行動療法を受ける。漢方薬とジェイゾロフトを処方してもらう(この時期のお薬手帳が見当たらず、しばらく通院していたが期間や薬の処方量は不明。他にも薬はあったかもしれない)。いつのまにか上記の状態はなくなり通院もやめる。
12. 9.の一年後くらいに、1.の出来事(ついでに3.も)を某報道機関のホームページに体験談として送った。それをきっかけに一回り歳上の男性担当者に取材を受けた。3.の出来事に関しては、「先生もコミュニケーションをとりたかったんじゃないの?」と言われ、少し反論した。その際、就活を控えていたことやマスコミに興味があることなども話し、書類等を見てあげるよという話になる。
13. 書類等をみてもらったものの結局マスコミ系の就活には失敗しなんとなくの公務員試験の勉強もやる気が出ず就職留年。
14. 就職留年のことと1.の出来事をぼかして手紙で親に打ち明ける。1.につき、両親には、気づけなくてごめんねと言われる。話の流れで父親に「彼氏いたことあるのか?どこまで進んだ?」と聞かれる。
15. 就活に関するお礼を兼ねて13.のことを12.の担当者に伝えるため会いに行ったところ、食事を共にし、タクシーで実家(と言っていたが誰もいなかった)に連れて行かれ、「ハグしていい?」と聞かれ許可するとそのままベッドへ。擬似性交渉に至る。「彼女はいない」と言われる。もしかしたら妻はいるのかもしれないと思ったがそれ以上触れず。彼に憧れにも似た好意があったため、嬉しかった。
16. 2回目の就活で一部上場企業に内定、入社。
17. 12.の担当者との関係は、私が半年に1回ほど飛行機や新幹線で会いに行きホテルで避妊なしの性交渉をすることで約3年継続していた(何回か妊娠を疑ったことがあった)。メールできちんと付き合いたい旨伝えたところ、「パートナーができた」とのことで私が怒り、電話をかけ「あなたは加害者と何が違うのか」「私が妊娠したらどうするつもりだったのか」「ほかの取材相手にも同じことをしてきたのか」などと一時間以上泣きながら問い詰め、相手を半泣きにさせる。そのまま交流を断つ。
18. 同時期仕事でも人間関係や営業目標に悩んでいたせいか、17.以来、寝つきが悪く朝起きられなくなる、化粧ができなくなる、胃腸の調子が悪い、家事ができなくなる、鏡を見ても自分が自分でないような気がする、仕事から帰宅すると涙が止まらない、などの状況に。一度心療内科に行きセニラン錠2mg×21日分を処方されたが眠気がひどく仕事にならなかったため、かかりつけの内科で相談し、ネキシウムカプセル20mg朝食後×21日分、デパス錠0.5mg1錠(デパス内服時にはセニランを中止する)、デプロメール錠25mg×21日分処方。就職に伴う転居のため5.から婦人科を替わっていたが、そこの医師がお薬手帳を見て「仕事を辞めた方が良いのではないか」と言い、私は診察室で「辞めたい」と泣き出す。この婦人科医よりうつ病の診断書を出される。
19. 18.の診断書を上司に渡しとりあえず休職を相談したが、婦人科医ではなく別の科の医師に診断書をもらうよう言われる。そこで、18.の内科医に事情を話しうつ病の診断書を出してもらう。その後24.頃まで、デパス錠0.5mg就寝前1錠とデプロメール錠25mg就寝前1錠を4ヶ月ほど継続、4ヶ月目には頓服でデパス錠0.25mgを5日分処方。
20. 休職ではなく昼からの勤務に変更。
21. 正月実家に戻り、退職も考えていると両親に話す。また、この頃、もともと大学時代から行きたかった大学院への進学を決意。
22. 年明けの出勤で退職の意思を伝えたが引き留め。後任が決まるまで待つことに。
23. 退職の意思を伝えたことで気持ちが楽になる。この土地でいい思い出が何もなかった、好みの男と遊んで去りたい、と思い立ち、出会い系サイトで10人ほどの男性と会い性交渉を繰り返す。このうちの同年代の一人と付き合い始める。他の男性との関係は遮断。
24. 20.の時短勤務のまま5月まで勤務し退職。
25. 実家に戻り、失業給付を受けつつ大学院入試の勉強。父親から、「今まで俺のことを母娘でバカにしてきた。これから俺は言いたいことは我慢しない」と宣言される。そして、母が私を妊娠中父親が軽く母の背中を叩いたら母が実家に帰り離婚調停まで行ったこと、母は祖母と血の繋がりがないことを暴露される(私は祖母との血縁関係がないことは戸籍謄本の取り寄せによってたまたま大学時代に知り母に確認済み。周りも実の母娘として育ててきたため黙っておくことに)。「お前みたいな弱い人間は死んでもいい」「お前にいくらかかったと思ってるんだ」「お前のようにお父さんの気持ちがわからない人間に目標としている職業が務まるわけがない」「親への感謝が足りない」とも言われる。父親と揉めるようになり夜中に叫んで目が覚めることがしばしば。また、父親から1.の出来事について「ちんちんでも見せられたのか?笑」「今更なんで話したんだ?」「昔のことを言い訳にしている」と言われる。私は泣きすぎて嘔吐。母が仕事から帰宅し私の味方をして父と言い争いに。
26. 大学院に合格。学費免除も得る。進学を親に相談したところ、父親にまた「進学は甘え、逃げ」とぐちぐち言われ、25.のことも思い出して一瞬カッとなり殺意が湧いたが、咄嗟に土下座をして収めた。なお、父親は、メールやLINEを返さなかったり居場所を報告しなかったりすると尋常ではない怒り方をする。そのくせに自分は返信しない。玄関にある人の靴を平気で踏む、咀嚼音がうるさい、などが昔からあり、私は祖父母の躾の問題を昔から感じている。
27. 大学院進学し、一人暮らし再開。
28. 進学して数ヶ月後、強姦される夢を3回ほど見る。窓から部屋に侵入され手足を押さえつけられ本当に性器を挿入されている感覚。相手の顔はよく見えず、黒い人型の影のよう。叫ぼうにも叫べず苦しい。起きると大量の汗をかいており、しばらくは夢か現実かわからない。あれは夢で金縛りだったのだと言い聞かせた。
29. 同時期、道を歩いていて叫びたい衝動、逃げ出したい衝動、しゃがみこみたい衝動に駆られることが続く。
30. カウンセリングルームで半年ほど1.に関しEMDRを中心にカウンセリングを受け28.29.は改善。PTSDのような症状があったのこと。
31. 遠距離で一応交際が続いていた18.の彼氏と別れる。2年半ほど付き合ったが最後の1年半はセックスレスで、私には女としての魅力がないのかと悩んでいた。
32. 別れた後出会い系サイトで2人と会い性交渉を繰り返したが、期末試験が近づき関係を断つ。
33. 父親から電話があり、25.をまだ怒っていることや、「母が墓まで持って行こうとしていた出生の秘密を許可なく娘に伝えるとはどういう了見だ」と伝えたところ、「そんなこと言ったっけ?」「発破をかけるつもりだった」「(母の出生に関しては)年齢的に知っておくべきだから」とのこと。話しながら吐き気とめまいがし、「もう連絡しないでくれ」と伝える。同時期、父親曰く「救急搬送され入院した」らしいが、母に確認すると、「心臓が止まったと自分で感じ119番通報し救急車を自ら呼んだ。母が仕事から帰宅すると玄関前に立って救急車を待っていた。入院は検査入院」だったらしい。
34. 卒業後に国家試験を控えているが浪人したときのために貯金が必要だと思い、セクキャバ(おっぱいパブ)で現在より3ヶ月ほど前にバイトを始める。好意を寄せてくる客を内心バカにしており、たまに接客中に腹立たしくなり思い切り殴りたくなる。
35. そして現在、期末試験が終わってから、朝起きられない、家事ができない、化粧を落として風呂に入れない、父親の「お前みたいな弱い人間は死んでもいい」という言葉が脳内で繰り返され死にたい気持ちが止まらなくなる、私のような人間は努力しても無駄だから早く死ぬべきだ、どういう方法で死のうかな、という思考が止まらなくなる、ぼーっとすることが多くなる、涙が出てくる、食べたくない飲みたくない、私今何やってるんだろう、私という存在はなんなんだ、と考える状況に。16時頃からまともに動けるようになる。嫌々ながらバイトは行けており行けばだんだん乗ってきて、「稼ぐだけ稼いで辞めて、お金の心配をせずに勉強して合格しよう」と前向きになるが、0時頃帰宅するとベッドにそのまま倒れこみ翌朝ベッドから起きられず、死ぬことを考える。自殺より、誰かに殺されるか病気で死にたい。ノリノリな自分は自分でない気もして、本当の自分がわからない。
36. 母親に「もう早く死にたい」と打ち明け、病院に行くよう勧められている。セクキャバでのバイトについては明かさず、バーでバイトを始めたと嘘を言うと、水商売は大変だし心配だからやめなさいと言われた。そのときはもう辞めようと思うが、バイトが終わる時間には、やっていけそうな気がして、辞める意思がなくなる。父のことに関して母を責めてしまったり「死にたい」と伝えたりしたことで申し訳ない気持ちになるが、私のことをわかってほしい気持ちでいっぱいになる。年甲斐もなく母の胸で甘えてわんわん泣きたいが、そんなことは恥ずかしくて言えない。

長くなりましたが、質問は、以下のとおりです。
(1)何か考えられる病気はありますか。自分では境界性パーソナリティ障害の傾向がありそうだと考えています。したがって、18.19.のうつ病の診断は正しかったのか疑問です。なお、知る限りでは、血縁者に精神疾患を持つ人や自殺者はおりません(もっとも、母方はわかりません)。
(2)私がカウンセリングを受けることに意味はありますか。
(3)カウンセリングではなく精神科の病院にかかる方が適切ですか。あるいは、病院にもカウンセリングにもかかる必要はありませんか。
(4)セクキャバのバイトは辞めるべきでしょうか。自分で決めるべきことですが、判断がつきません。
(5)父や母も何かの病気の可能性はありますか。

 

林:
(1)何か考えられる病気はありますか。自分では境界性パーソナリティ障害の傾向がありそうだと考えています。したがって、18.19.のうつ病の診断は正しかったのか疑問です。なお、知る限りでは、血縁者に精神疾患を持つ人や自殺者はおりません(もっとも、母方はわかりません)。

境界性パーソナリティ障害の傾向はあると思います。ただし境界性パーソナリティ障害の診断がつくほどではないと思います。

18.19.のうつ病の診断は正しかったのか疑問です。

その通り、疑問で、境界性パーソナリティ障害の傾向をベースにしたうつ状態とみるのが妥当でしょう。但しそのような場合でも、現代の公式の診断基準ではうつ病に含まれるので、うつ病という診断も正しいということになります。

また、質問者の 境界性パーソナリティ障害の傾向 は、このメールに書かれている生育歴によって形成されたと解釈することができます。このような場合、複雑性PTSDという診断名をつけることも可能です。(複雑性PTSDの「複雑性」は誤解を招きやすい言葉です。これは「複雑なトラウマ」という意味というより、「慢性的に受けていたトラウマ」という意味です)

もっとも、この【4340】のケースは、複雑性PTSDの診断基準も満たさないと思います。そうしますと、公式の診断としてはうつ病がむしろ最も正しいということになりますが、これは現代の公式の診断基準に内在する深刻な問題で、この【4340】のケースの診断についての最も正確な描写は、「生育過程の数々の出来事により境界性パーソナリティ障害類似のパーソナリティが形成された」というものになると思います。

(2)私がカウンセリングを受けることに意味はありますか。

意味はあります。ただし、有能なカウンセラーを選ぶ必要があります。

(3)カウンセリングではなく精神科の病院にかかる方が適切ですか。あるいは、病院にもカウンセリングにもかかる必要はありませんか。

どちらが適切ということは言えません。有能なカウンセラーは平均的な精神科医に優りますし、有能な精神科医の通常の診療時間内の診療は平均的なカウンセラーに優ります。

(4)セクキャバのバイトは辞めるべきでしょうか。自分で決めるべきことですが、判断がつきません。

辞めるべきです。

(5)父や母も何かの病気の可能性はありますか。

わかりません。

(2021.7.5.)

05. 7月 2021 by Hayashi
カテゴリー: PTSD, うつ病, パーソナリティ障害, 境界性人格障害, 性に関する問題, 精神科Q&A, 虐待 タグ: |