【4123】躁うつ混合状態と診断された家内の経過が思わしくありません
Q: 43歳になる私の家内のことです。結婚して19年、子供はありません。
約6年前(X年夏)、不眠や趣味にも打ち込めないなど、ひどいうつ状態となり、私どもが住む東京のA大学病院で治療を開始いたしました。 ただ、一緒に暮らしていた私が気がつかなかったのが悪いのですが、後からカウンセリング等で判ってきたこととして、結婚以来、或いは就職等、もっと早い時期にストレス等でうつ状態になっていたようです。
治療を開始するも、病状は中々完治まで行かず、少し調子が良くなってはうつ状態に戻るということを繰り返しておりました。薬は、ドグマチール、ルボックス、トレドミン、アモキサン等を色々試していただいていたと思います。
X+2年の秋頃、気分を調整するために加えていただいていた(と思われる)ルーランの副作用からかアカンジア状態になったことをきっかけに、その後色々と薬を調整していただくが上手くいかず、X+3年の年明けから激うつ状態となり、自殺企図を繰り返すようになり、X+3年3月に医療保護入院をさせざるを得なくなりました。
3ヶ月ほど入院して少し落ち着きましので退院し、もとのA大学病院にもどり、X+3年7月から1ヶ月程度アナフラニールの点滴を試していただくと、これが非常によい状態となりましたので、
アナフラニール 50mg×4
リーマス 200mg×3
を投薬いただき、漸く普通に近い生活を送ることができました。
ただ、私には普通に近い生活であっても、家内にすると完治とは言えないため、大いに不満であったと思います。
調子が優れない時はアナフラニールの点滴をして頂くこともありましたが、X+5年11月までに点滴頂いたことは数回だったと思います。大抵は冬季に調子が悪くなることが多く、酷い眠気も伴うことから、冬うつの傾向もあるかもしれないので、光にあたるように主治医に言われ、点滴とともに自宅でですが市販の日光浴器にあたらせておりました。
X+5年11月になり、再び酷い眠気を伴う うつ状態になり、アナフラニールの点滴等を行うが効果があまりありませんでしたので、薬の調整を開始されました。リーマスを減らしてデパケンやテグレトールなどに替えますとひどいイライラが出て元の状態に戻して、アナフラニールを減らすとイライラは止まったもののひどいうつ状態となり、結局、X+6年(今年)3月中旬ぐらいから、アナフラニールを元に戻すも、4月初めぐらいからイライラが酷くなり、家の中で些細なことで腹を立て器物を破損したり、大声を出したり、買い物に行った先で揉め事を繰り返しました。5月末の段階での処方は以下のようなものでした。
アナフラニール 50mg×4
ルボックス 25mg×2
リーマス 200mg×3
デパケン 200mg
ランドセン 2mg
その他、寝る前にベゲタミンB、レンドルミン、ベンザリン等
極端なイライラは徐々に収まったものの、時々急にうつ状態になり、かと思うと元気になって落ち着きがなくなったりという、所謂不安定な状態でした。
6月初めには、東京の自分の家ではゆっくりできない、のんびりしたいと言い出して6年近く通ったA大学病院にも行かないと言い出して、飛び出すようにして関西の妹のところへ転がり込みました。転院にあたって、長年お世話になった主治医に相談したところ、躁病の気はあると思っていたが、どうも躁とうつを比較的短い期間で繰り返す病気のようだとのことでした。
妹の実家は、本人にとって非常に居心地がよいようであり、妹や義弟の話でも非常にのんびりしていたとのことです。関西ではB大学病院に参りましたが、新しい主治医と相談したところ、薬も非常に沢山の種類が出ている状態となっているので、薬の整理を兼ねて少し入院して養生したほうが良いだろうということで、6月下旬から7月末まで1ヶ月ほど入院しておりました。そこでの処方は
アナフラニール 25mg×3
ルボックス 50mg×3
リーマス 200mg×3
ランドセン 2mg
というルボックスをベースにしたものに替わりました。
その間は私がずっと見ていたわけではありませんが、実家や親戚のものの話しですと、基本的には元気ですが、何かをきっかけに不機嫌になったりしていたとのことで、例えば実家の見舞いの対応が悪いと言っては腹を立てて、外泊で東京の私のところに戻ってきたりしておりました。
本人は退院しても、しばらく妹の家に居るつもりであったようですが、色々と妹の実家の都合も悪く、7月末のB大学病院退院後は東京の自宅に戻っておりました。
私としては元のA大学病院に行かせたかったのですが、家内は長年通っても完治しなかったといって聞かず、別の病院で同じような薬(後で調べてみると何故かルボックス25mg×3に減薬)を出していただき、自宅で養生しておりました。当初はイライラもなく、やっぱり自宅のほうがのんびり出来ると言っていたりしましたが、過食傾向があることを本人は非常に気にしており、私から見てもぐっすり寝れないなど必ずしも安定した状態ではなかったと思います。
やはり、2週間たって、自宅ではゆっくり出来ないと言い出しまして、再び、大阪の義理の妹のところへ戻り、再びB大学病院に行きました。 主治医の話では環境に適応できず、ストレスにも弱く なっているので、それがイライラや過食などの症状になって現れるのだろうということで、セロクエルという薬が出されましたが、
アナフラニール 25mg×3
ルボックス 50mg×3
リーマス 200mg×3
セロクエル 25mg×2?
残念ながら空きベットが無いため、空くまで待つように言われました。
妹の家では、不安定な状態(胸が痛い、寝れない、夜尿?)はあったようですが、気分そのものはよく過ごしていたようですが、突然、本当に突然、あれだけ居心地が良かった妹の実家に居るのも嫌だと私のところに電話してきたかと思うと、交差点に飛び込むという自殺を企てました。
幸いにも、軽い打撲程度と命に別状はありませでした。本人曰く、もう終わりにしたいと思ったそうです。
すぐ、B大学病院に診断を受けましたが、ここで「躁うつ混合状態」で危険であり、近くの閉鎖病棟のあるC病院に医療保護入院となりました。
C病院の先生は、記憶も飛んでいるようで解離性障害の様子もみられますが、とにかく先ずはうつの治療から初めましょうということでアナフラニールの点滴をして頂いております。
長くなって恐縮ですが、今までうつ病と思い、完治しないまでも薬を調整しながら行けばなんとかよい状態になるということで夫婦で頑張ってきましたが、ここ半年の病状のめまぐるしい変化、不安定な状態に、私だけではなく恐らく本人も戸惑うばかりです。月並みな質問ですが、
・家内はうつ病ではないのでしょうか?
・ 躁うつ混合状態というのは、ルボックスの副作用ではありませんか?
・ それとも、家内は、元々うつ病でなく、躁うつ病だったのでしょうか?
・ 対処的な療法、うつにはうつの薬、躁には躁の薬を飲むだけで治るのでしょうか?
心と身の置き場の無い本人は非常に苦しく、本当に苦しいかと思います。
林: 奥様は双極性障害です。躁うつ混合状態は双極性障害の症状です。もっとも、躁うつ混合状態のように見えても、実際は躁とうつが非常に短いスパンで入れ替わっている場合もあります。この【4123】がそうであるかどうかはわかりませんが、双極性障害であることは確実でしょう。
・ 対処的な療法、うつにはうつの薬、躁には躁の薬を飲むだけで治るのでしょうか?
そうではなく、躁うつの波を抑える「気分安定薬」に分類される薬を使います。この【4123】のケースで用いられているリーマスがそれにあたります。しかしこれまでの経過をみますと、リーマスでは十分に波が抑えられていないことが明らかです。気分安定薬にはリーマス以外にラミクタール、デパケン、テグレトールなどがあり、また、非定型抗精神病薬(この【4123】ではこれまでにセロクエルのみが処方されています)の中にも双極性障害に有効なものがあります。したがってこの【4123】のケースでは、まだまだ処方を調整する余地があります。「余地がある」というより、これまでの薬物療法が十分に奏功していないのは明らかですから、処方を調整するのが当然と言えるでしょう。
(2020.9.5.)