【3890】統合失調感情障害の妻が薬に頼っていて減薬できない
Q: 私は30代の会社員で、妻は20代後半の兼業主婦(現在は育休中かつ里帰り中)です。
3か月前に第一子である息子を産み、とても喜んでおりましたが、産後に不眠から来る不調を訴え、そのうち幻聴や被害妄想を訴えるようになりました。
精神科を受診したところ、統合失調感情障害と診断され、薬を服用して数日で落ち着きを取り戻し、現在は薬を服用しながらですが快調な状態です。
「盗聴は病気による思い込みだった」と現在は病識がある状態なのですが、逆に今度は薬を信用しきっている節があります。
統合失調感情障害と診断した医師は一方で、産褥期精神障害の可能性もあり快方に向かえば徐々に薬を減らし、最終的には断薬を試みることも可能であるとお話を頂きました。
そして、症状が出ている当初の薬の量は適量だったと思うのですが、服薬して1か月も経つ頃には、日中にも眠気が出て昼寝をし、また夜間も夜の8時くらいには眠ってしまい、1日の睡眠時間が12時間程度と過眠の状態が続いています。
睡眠中は眠りが深いため息子が泣いても起きて世話をすることが困難な状態であり、実家の義父が世話をしている状態です。
処方箋を見せてもらっておらず、具体的な薬と量は把握していないのですが、症状よりも薬の副作用の効果が目立つ現在は、減薬を試みるタイミングなのではないでしょうか?
妻は薬を飲むことで安心できるといい、抗精神薬を長期に適量以上を飲み続けるリスク(遅発性ジスキネジアなど)をあまり考えていないため、病院に行っても減薬の相談が出来ず困っています。
林: 出産からまもない時期に幻覚や妄想が出現した場合、それは出産と直接の因果関係がある精神病症状なのか、それともたまたま出産をきっかけに発症した精神病(たとえば統合失調症や統合失調感情障害)なのかの区別は困難です。不可能に近いといってもいいでしょう。すると現実的な対応としては、その後の経過をみて、症状が完全に消失しているのであれば、慎重に徐々に減薬をしていくというのが適切ということになります。
その観点からすれば、この【3890】のケースで、夫である質問者が減薬を望んでおられるのは妥当であると言えます。
ただし減薬には再発のリスクもあることも十分に考慮することが必要です。このケースでは、今は子育ての非常に重要な時期ですので、もしこの時期に減薬して再発したら、母親としての役割がはたせなくなる可能性が高いです。それによってご長男の成長にもたらされる不利益は、後からでは取り戻すことができない性質のものです。
それを考えると、今はリスクを犯してまで減薬する時期ではないと言えるでしょう。
他方で、薬の副作用によって子育てが困難になっているのであれば、逆に減薬する時期であるということになります。これについて質問者は、
服薬して1か月も経つ頃には、日中にも眠気が出て昼寝をし、また夜間も夜の8時くらいには眠ってしまい、1日の睡眠時間が12時間程度と過眠の状態が続いています。
症状よりも薬の副作用の効果が目立つ
と言っておられますが、その過眠が副作用であるという判断が正しいかどうかわかりません。むしろそれは症状であって、薬の量が足りないという可能性も、低いものではありますが否定はできません。
すなわち、
症状よりも薬の副作用の効果が目立つ現在は、減薬を試みるタイミングなのではないでしょうか?
という質問者の一文を切り取ってみればどこまでも正当ですが、質問者が前提としている「症状よりも薬の副作用の効果が目立つ」が正しいかどうかはわかりませんので、いま減薬することが適切かどうかの判断はできないということになります。
もちろん現在の過眠が副作用である可能性はあります。しかし副作用でない可能性もあります。すると副作用については「出ているか出ていないかわからない」ということになりますので、そのことと、「再発するかしないかわらない」ということの両方を慎重に考えたうえで、減薬するかどうかを決めるべきでしょう。そのためには主治医との相談が必要ですので、
妻は薬を飲むことで安心できるといい、抗精神薬を長期に適量以上を飲み続けるリスク(遅発性ジスキネジアなど)をあまり考えていないため、病院に行っても減薬の相談が出来ず困っています。
という状況は好ましくなく、「本人が薬を飲むことで安心している」ことは、減薬の相談ができないことの理由にはならないと思います。
(2019.10.5.)