【4950】本人がうつ病だと言えば、医師は簡単にうつ病の診断書を書いてくれるのでしょうか

Q: 私は20代、男性です。一般企業の事務職として働いており、幸いなことに既往歴はありません。いつも興味深く先生の記事を拝見しております。

3年前、同じ職場にいた40代男性A(現在は人事異動により別部署へ異動)について質問があります。Aは私の目から見ても業務態度や業務効率が悪く(例:勤務時間中にオークションサイトに興じる、常習的な遅刻、勤務時間中に2時間以上近くのコンビニで立ち読みを繰り返す、簡単なExcelの操作すらままならない)上司Bからも叱責されることが多くありました。

Bはいわゆるパワハラ上司として有名で、過去に数名の部下を出社できない状況に追い込んだということは知っていました。Aについても上司から叱責が続いた2か月後、最寄りのメンタルクリニックにてうつ病の診断書を得て、病気休職となりました。休職期間は6カ月です。

しかし休職期間中もSNSに旅行の様子、家族と楽しんでいる様子などをアップロードしており、ただ仕事をさぼっているようにしか思えませんでした。twitterのアカウント上ではBの本名こそ出していないものの、明らかにBを中傷する表現が目立ってもいました。これを先生がおっしゃる擬態うつ病と言うべきかどうか、私自身は判断する根拠が不足しており、分かりません。

ただ、Aが職場復帰後
・自分がうつ病と言えば、医師は簡単にうつ病の診断書を書いてくれる
・休んでも給与は保障される(厳密にいえば、当社では基本賃金の80%の保障だったと思われますが)
・これでBにバツがつけば、Bは異動してくれるはずだ(実際はAが異動したわけですが)
・自分がいなくても仕事は回っただろう?労働者の権利(=病気休職)を取得していただけで、私に責められる理由なんてない

と、私を含めたチームメンバーに笑いながら話をしていました。ここに非常に違和感を持ちました。正直に言えば、腹が立ちました。

背景の説明が非常にながくなりましたが、私の質問は一つです。

Aが職場復帰後に言った
・自分がうつ病だと言えば、医師は簡単にうつ病の診断書を書いてくれる

という点ですが、実際の医療現場ではどのように判断されているのでしょうか?私が仮に医師の立場だったとすれば、もし患者が本当にうつ病であったとして、うつ病という診断を下さず、自殺や自傷行為に走られては大変だから、フェールセーフの観点からも、簡単にうつ病という診断書を出すのではないかと愚考します。実際にうつ病ではない患者に、うつ病という診断を下したところで、その医師には何ら責任はないという仮定付きとはなりますが。

うつ病、擬態うつ病、そもそも鬱症状がないのに鬱と自称しているだけの人間、これを正確に診断で区別する方法はないかと思いますが、もしAがただの「自称うつ」であったとして、気軽にうつ病診断を得て、給与保障を得る(加えて言えば、保険会社からも相応の保険金が下りる)というのは、どうも納得がいきません。

 

林: Aさんは擬態うつ病です。
擬態うつ病という言葉は「うつ病ではないが、うつ病と称しているものの総称」ですので、うつ病に似た他の病気のこともあれば、医学的にはうつ病とは全く違う病気のこともあります。さらには、病気ではない場合もあります。Aさんは病気ではない場合にあたるでしょう。

・自分がうつ病だと言えば、医師は簡単にうつ病の診断書を書いてくれる

という点ですが、実際の医療現場ではどのように判断されているのでしょうか?

大部分の精神科医は、本人がうつ病だと言っただけでうつ病の診断を書くなどということはしません。

私が仮に医師の立場だったとすれば、もし患者が本当にうつ病であったとして、うつ病という診断を下さず、自殺や自傷行為に走られては大変だから、フェールセーフの観点からも、簡単にうつ病という診断書を出すのではないかと愚考します。

そんなことはしません。

ただし、
本人が自分はうつ病だとストレートに言うのではなく、うつ病の症状を述べているとき、簡単にうつ病の診断書を書く精神科医となると、相当の数が存在することは事実です。
また、仮にある精神科医がきちんと診断した結果、うつ病の診断書は書けないと本人に告げたとしても、本人は別の精神科医にかかって診断書を書いてもらうということが少なからずありますので、結果的には安易な診断書が出回るという事態が起こり得ます。

(2025.4.5.)

05. 4月 2025 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 擬態うつ病, 精神科Q&A