【3473】17歳女。父の性的接触を受け入れてしまいます

Q: 林 公一先生、初めまして。私は17歳、高校2年生の女です。
寝ている間に父に体を触られることが、約1年前から続いています。
このままではいけないと思いますが、行為を嫌だとは感じません。
父のことも変わらず好きです。

今回お聞きしたいことは、以下の3つです。

(1) 父の性的接触を嫌だと思えず受け入れてしまうのは、精神科にかかるべき病気や障害によるものでしょうか。
あるいは病気ではなく、家族から性的接触を受けた場合に起こすことのある心理反応なのでしょうか。
それとも、上記のどれにも当てはまらない、ただ私の意思が弱く、判断力が低いせいなのでしょうか。

(2) 私のように受け入れている場合でも、父との性的接触は、何らかの精神病の原因や、誘因に成り得る行為でしょうか。

(3) 受診する必要がある場合、やはり父とのことを、主治医の先生にお話しなくてはならないのでしょうか。 (どうしても言いたくないのですが…… そもそもの受診のきっかけである事を隠したままでは、せっかく診察して頂いても、治療にならないのではないかと思います。しかし言える気が全くせず、受診を迷っています)

本当は身近な相手に相談すべきですが、父を逮捕する方向に進むことは避けたいのです。
もし可能ならば先生のご意見を頂戴したく、このメールを差し上げた次第です。

ここまでも長くなってしまい恐縮ですが、下記により詳細な状況を書かせて頂きたく思います。
大いに蛇足かもしれませんが、ご参考になれば幸いです。

1.【家族構成について】
父には12歳のとき母の再婚で娘として受け入れてもらい、3人で暮らすようになって5年が経ちます。

物心ついた頃から母と二人暮らしで、実の父がどうしているかは分かりません。
交流のある親戚もすべて母方です。

2.【性的接触の内容】
必要な情報か否かが分かりませんので、念のため書き記して置きます。
ご不快な思いをされたら申し訳ありません。
必要がなければ読み飛ばして下さい。

決まって寝ている間で、父の性器を挿入するような行為はありませんが、いつも胸元や下着の中を直接触られます。時々口淫のようなこともされています。 初めて気づいたのは1年前ごろでした。 (本当にそれが初めてであったかは不明です)

とても驚いてしまい、声をかける勇気が出ず、必死で目を閉じて寝たままのふりをしました。
しばらくすると父は私の着衣を直し、部屋を出ていきました。
その翌朝、ゆうべのことは聞けず、いつも通りにしようと笑って接しました。

それを含め、目を覚ましただけでもこれまで7回、同様のことがありました。
未だそれは続いています。

寝返りを打とうとすると手を引っ込めるなど、目を覚ますことを恐れるような印象を受けますが、遠慮なく触られるので、私が寝たふりをしていることに父は気付いていないと思います。

3.【行為に対する私の意識】
たいへん動揺しましたが、私は父を変わらず好きです。 全く嫌だと思えないのです。
行為自体は嫌ではないのです。これは本当です。
嫌ではない、などと思ってしまうのが嫌で、悩んでいます。

しかし、私が嫌かそうでないかに関わらず、このままにするのは良くない事です。

お気を悪くされる、不適切な表現だと思います。
ですが正直に書きますと、いま私がしていることは、不倫と同じことだ、と感じます。

たまたま私が娘という立場で、家庭内であるというだけで、母の夫である父と性的な関係を持ち、拒絶するどころか少なからず喜び、安心し、嬉しい気持ちを抱いているのは、不倫という以外に言葉が見つからないのです。

本当にいやな言葉で申し訳ないです。同じような環境にある方を、そう言って侮辱するのではありません。私自身ただ一人だけをこう思うのです。私が私のしていることを表すのに最も納得のいく表現だ、と思います。

しかし人を傷つけてしまう表現のため、どこにも話せず、また林先生にとっても不快な言葉だと思います。こんなことを書きましたご無礼を、どうかお許しください。

4.【性的虐待とは違うと思います】
このことがあってから、精神科Q&Aを遡り、虐待、性的虐待に関する項目を拝読しました。
林先生の解説で学ばせて頂くことも多く、読み終えて得られたものはマイナスな感情だけではありませんでした。

もし誰かに「寝ている間に父に触られる」と話せば、「それは性的虐待だ」と返ってくるでしょう。ですが私は、私の父の行為を、性的虐待と呼ぶことには違和感を覚えます。

類似した他のケースを見れば、はっきり「性的虐待だ」と感じると思うのですが、私と父のことに関して考えると「違う」「虐待なんて、そんなひどいことはされていない」「父はそんな人じゃない!」「虐待ではない!」と思ってしまいます。

自分の経験にかかわらず、様々なことを学ぶのは大切なことですが、何度も「なぜ私は(父とのことを思い出して)虐待について調べているんだ」と自己嫌悪に陥りました。

世間に父の行為を虐待だとして咎められるのは、とても嫌です。本心からそう思うのです。

私は行為そのものは嫌だと思っていないのですから、性的虐待ではない、近親姦にあたるものだと思います。父は加害者ではなく、私も共犯なのだというように感じます。

5.【過去の性暴力】
中学生の頃、知らない男性や高校生くらいの人に、無理やり体を触られたことがありますが(強姦には至っていません)、父は絶対にあんな人とは違います。あんな人と同じだとは思えないんです。

帰って泣き出した私を抱きしめて落ち着かせてくれました。私のために力を尽くしてくれました。
外出が怖かった時期もありましたが、両親など周りの人に助けられ、今では不安も無くなりました。

6.【父について】
父は優しく、よく笑う明るい人です。
こちらで父の自慢などするのは適切でないので省略しますが、何度も父に助けられました。
私は父を尊敬しています。
父が私のお父さんになってくれてよかった、と、心から思います。

7.【打ち明けられない理由として】
母や親戚もまた父と同様に、温厚で明るく優しい人達ばかりです。
私は沢山の人から大切にしてもらっていて、恵まれていると思います。

ですがもし夜のことを打ち明けたら、特に母や叔父などは激昂して、父に危害を加えてしまうのではないかと思います。家族に殺人や傷害の罪を背負わせたくありません。

よしんば穏便に出来たとしても、捕まれば父の人生に悪影響が出てしまいます。それは心苦しいことです。

こう言っては何の解決にもならないかもしれませんが、誰のことも犯罪者にしたくないと思うのです。

それに、人に漏らしたことで刑を終えた後に探し出されて父に復讐されるのではと思うと、怖いのです。

大変優しい父なので考えにくいのですが、人生を変えられた元凶が相手となれば人が変わるかもしれませんし、現に道理に外れたことをしているのですから、無いとは言い切れません。懲役刑になったとして、拘留される期間などたかが知れていますから、復讐される機会はあり得るでしょう。

起きているとき強制するのではなく寝ているときに触るのも、当の私にすら知られないようにと、発覚を恐れての事ではないかと思います。

私は考えすぎでしょうか……。
人に知られたくない、秘密にしたいというのが一番ですが、上記の不安を拭えず、打ち明けるという手を取れません。

今は部活が楽しく、日々の生活は充実していて、とても幸せです。
両親と住む家以外にも、たくさん居場所はあります。
悩みがあればすぐに話せます。
ですが、学校や塾の先生、いとこにも友人にも誰にも、父に触れられて喜ぶ自分のことは話せません。

父の行為は異常だとわかっていますが、いつもとても優しいです。
言い訳になりますが、私が嫌だと思えないのはそのためかもしれません。
一度でも殴り起こすなど暴力が伴えば、もっと怯えていたと思います。きっと通報もしていました。

8.【どうすればよいか】
人に明かさず、父と直接話し合い、やめてもらうのが良いのではないか、と思っております。
これは浅はかな考えかもしれません。
ですが誰も傷つかず無かったことにしてやめてもらうには、それしかないと思うのです。
鍵を掛けたり父を避けたり、それでは根本的な解決にはならないと私は思います。

元通りの家族に戻ってさえくれれば、私はそれでいいんです。それ以上のことは何も望みません。

9.【しかし、実行に移せていません】
毎回、次は寝たふりでなく声をかけよう、やめてもらおう、母に知られる前に、と思うのです。
でも夜父がそばに来ると、嫌ではないのですが、まともな性経験などありませんし行為が恥ずかしく、やや怖い気持ちがあり、ひどく緊張するか、あるいは体に力が入らず、声も出せなくなってしまいます。

それに、声をかけたことで離婚などしてしまったら。

私は父とふたりで話し合った上で許したいと思うのに、それが出来ないまま、バレていた、まずい、捕まりたくないという当然の心理から、逃げるような形で父が遠くへ行ってしまったらと思うと、それは耐えがたく悲しい、やりきれない気持ちがして、ためらってしまいます。そんな別れ方を何より恐れています。もしそうなったらと思うと、父のことは好きですが、かすかに怒りさえ覚えます。

話し合いたいのも、これからも父でいてほしいのも、私のワガママで、勝手な思いなのですが。

結局寝たふりです。  それが一番いけないと、わかってはいるのです。
このように足踏みしてしまっています。

10.【どう感じているか】
触っているとき、服の乱れを直すとき、私の髪をゆっくり撫で、布団を掛け直して、
そうして父が出ていくと、嬉しいような悲しいような、よく分からない気持ちで涙がにじみます。

泣いて気を晴らすのもいい事ですが、そればかりで立ち止まっていては仕方ないのです。
嫌ではないからと寝たふりを続けては、父の罪が増えるだけです。
母を裏切り続けることにもなります。

言葉や体で抵抗しないだけでなく、心でも行為を受け入れてしまう罪悪感で、日々両親に申し訳ない気持ちが募ります。
自分をひどく汚く思います。
体ではなく、心の方です。

父がこんな行為に及んでしまうのも私のせいなんだと感じます。
私が無知で軽率で父を拒めないせいだと。
もしかしたら普段出さないイライラをこういった形でぶつけることで発散しているのかもしれないと。
私さえ誰にも言わなければ、母の心を掻き乱すことも、父の人生を変えてしまうこともないのです。
少し触られるくらいなら、知らない振りをするのが一番なのではないかと。
これこそ軽率かもしれませんが。

父を安易に許そうとするのはそんなに良くないことなのだろうか、と悩んでいます。
どうしても父が好きです。嫌いになどなれません。
嫌いになる必要はないかもしれませんが。

何もなかった頃のように家族として仲良くしたい、そのためには寝たふりをやめて行為を拒まなければならないのですが、何もかも滅茶苦茶になってしまう気がして、毅然として拒否することもできません。

私がすべき事、すべきでない事、考えてもどうすればいいか分からず、情けないのですが、疲弊してきています。
自分をしっかり保つように努力していますが、その正常かどうかもわからない自分の判断力を、果たして信じていいのかどうか、考えても未だわかりません。

11.【最後になります】
あらためて質問いたします。

(1) 父の性的接触を嫌だと思えず受け入れてしまうのは、精神科にかかるべき病気や障害によるものでしょうか。(A)
あるいは病気ではなく、家族から性的接触を受けた場合に起こすことのある心理反応なのでしょうか。(B)
それとも、上記のどれにも当てはまらない、ただ私の意思が弱く、判断力が低いせいなのでしょうか。(C)

(2) 私のように受け入れている場合でも、父との性的接触は、何らかの精神病の原因や、誘因に成り得る行為でしょうか。

(3) 受診する必要がある場合、やはり父とのことを、主治医の先生にお話しなくてはならないのでしょうか。

冒頭にも書きましたが、私にどこか異常があるのか、もしあるのにわからないまま放置してしまうのは嫌だ、と少しばかり不安で、かと言って精神科を受診するなどして、こちらの身分がわかる相手に相談するわけにもいかず、こうして先生にメールを書かせていただきました。

まとまらず余計な事ばかり書き、読みにくくなってしまったかと思います。
また、一方的となってしまい、申し訳ありません。

(もしご回答を頂ける場合、質問文の書き換えについては先生にお任せしますが、私はこのまま掲載して頂いてもかまいません。
また、無いとは思うのですが、私と個人情報や状況が同じ方がいらして、この質問を一部書き換えてほしいとの連絡がありましたら、それについて私には異存のないことをお伝えしておきます。

「質問される方へ」は全て拝読しましたが、履き違えていて、失礼がありましたら申し訳ありません。)

お忙しい中お読み頂き、大変嬉しく思います。
ありがとうございました。
林先生の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

 

林: このメールを機会に、行動を起こしてください。
具体的には、

人に明かさず、父と直接話し合い、やめてもらうのが良いのではないか、と思っております。

その通りです。是非そうしてください。
そうするべきだとわかっていながら行動に移せずにいる事情はよくわかります。けれども、

私が嫌かそうでないかに関わらず、このままにするのは良くない事です。

その通りですので、それをしっかりと自覚し直し、今回このようにメールにまとめて再認識したことを機会に、行動に移してください。

回答はここまでで充分と思いますが、ご質問項目について以下にお答えします。しかし、以下をお読みになってどう思ったか・感じたかにかかわらず、上の通り、この機会にぜひ行動を起こし、今の状態を解消してください。

 

(1) 父の性的接触を嫌だと思えず受け入れてしまうのは、精神科にかかるべき病気や障害によるものでしょうか。(A)
あるいは病気ではなく、家族から性的接触を受けた場合に起こすことのある心理反応なのでしょうか。(B)
それとも、上記のどれにも当てはまらない、ただ私の意思が弱く、判断力が低いせいなのでしょうか。(C)

(B)が最も正解に近いです。家庭内のこのような行為は禁忌とされていますが、実際に発生した場合には、この【3473】の質問者のような心理的反応は例外的とは言えません。

(A)は否定できます。【3473】は「精神科にかかるべき病気や障害によるもの」ではありません。(但し、このような行為が、「精神科にかかるべき病気や障害によるもの」である場合もあります。この【3473】はそれにはあたらないということです)

(C)については、そのようにみなされることもあると言えます。この事例に判断力や意思の関与がゼロとは言えません。しかし「意思が弱く、判断力が低いせい」という表現に内在する質問者本人への非難のニュアンスが適切とは言えません。

というわけで、最も正解に近いのは(B)です。
これに関連することとして、PTSDの図書館に掲載してある『近親姦に別れを』という本からの一文をご紹介します。

「近親姦のうちいくつかに痛みは伴っていない。ほとんどの近親姦的状況には、楽しい面がある。愛と忠誠心が含まれていることがある・・・。近親姦には相互的満足がある場合すらある。」

これは【1111】 でも引用しています。あわせて【3146】もお読みください。

(【3473】の質問文には一貫して「父」と書かれていますが、実際は「義父」であり、いわゆる近親姦とは事情が異なります。これはある意味では重大な違いですが、他方で同様の部分もあり、今回の回答では同様の部分を重視しています)

 

(2) 私のように受け入れている場合でも、父との性的接触は、何らかの精神病の原因や、誘因に成り得る行為でしょうか。

このまま続けた場合、健全な成長を阻害するでしょう。それは今後の人格形成に影響するでしょう。ネガティブな影響です。

家族内の性的事例としては、【1948】7年前に父から受けた虐待の記憶がよみがえったなどがあり、この【1948】のようなケースのほうがはるかに確実に「何らかの精神病の原因や、誘因に成り得る行為」であると言えますが、だからといってこの【3473】が無害ということはできません。健全な成長を阻害するでしょう。
(3) 受診する必要がある場合、やはり父とのことを、主治医の先生にお話しなくてはならないのでしょうか。

受診した場合は話す必要があります。但し現時点では受診の必要はありません。この回答の冒頭に記した通り、

人に明かさず、父と直接話し合い、やめてもらうのが良いのではないか、と思っております。

その通り、行動に移してください。

(2017.7.5.)

その後の経過 (2019.12.5.)

05. 7月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 性に関する問題, 精神科Q&A, 虐待 タグ: |