【3248】賦活症候群と判断されているようです(【3075】のその後)
Q: 【3075】うつ病受療歴7年半、最近頻発するようになった「病的な怒り」に困憊していますにご回答を賜った40代男性です。
その節は真摯で懇切なご説明を賜り本当にありがとうございました。林先生のご助言をいただいたお蔭で、ともあれ違う医師に診てもらおうと思い切ることができました。
お礼を申し上げていなかった非礼をお詫びいたしますとともに、甚だ冗長ではございますがその後の経緯と現状のご報告をさせてくださいませ。
対人関係で自信をほぼ全喪失した私にとって、それまでの主治医に紹介状をお願いする事は非常に強くためらわれましたが、「もし帰納法的にこの先生が正しいと感じたら失礼を承知で相談すれば良い(≒カウンセラーも含め、関係修復の心配をする状況ではない)」と思いきってお願いしました。慣れているのかそう言う性質なのか、先生は非常にドライにご対応下さいました(X年10/3)。
最後の処方は以下の通りです。
抗うつ剤として:ルボックスの後発(サワイ)朝50昼25夕50(mg)、ジアゼパム(サワイ)2mg及びメデポリン後発(サワイ)0.4mgをそれぞれ朝夕。
睡眠補助として:リフレックス15mg及びマイスリー後発(NP)5mg
※このうちリフレックスは林先生のご指示に従い半錠またはなしに減らした1週間でした。
次の診療機関は、その時の心身の不活発さから自宅近くのクリニックを探しそのうちの1軒にしました。
復職支援ではなくともデイケア的なものが唯一紹介されていたからです。
A診療所で、説明では近郊のB専門病院のサテライトとして連携をしているとの事でした。基本的には院長のみですが、私が伺った時には「院長の診断は3週間以上待ってもらう」と言われ、睡眠導入剤などがなくなりかけていた私は処方も要した事から、土曜のみヘルプに入るC医師に担当される事になりました。
その際、口頭での説明に自信のない私は、初診日まで余裕のあるうちに林先生に宛てたお手紙を転用して自身の経緯とし、合わせて林先生のご回答を転院の最終的なきっかけとして使わせていただきました(林先生のお名前やURLなどは申し上げておりません)。林先生のご了解も得ずに勝手に流用して申し訳ございませんでした。
(10/10)そのC医師は紹介状も私が預けたプリントも、初診までによくご覧下さったようでした。その上で、私が前の病院に通い続ける事を第一に勧めてきました。私が前の医師に対する信用が保てなくなった事を説明し、一応の納得でその先生の所見を説明されました。その所見を以下に掲げますが、私にはかなり驚くべき内容でした。
・この先生(林先生のご回答を見ながら)と僕の所見は違う。
・まず「内因性のうつ病」ではないと思う。あなたはこれだけの情報を時系列にまとめて詳細に書き込んでいる。内因性のうつ病の患者は到底こんな精緻な資料の作成なんてできない。だから(以前は病気としてのうつ病には罹っていたかもしれないが)少なくとも今はその症状ではないと診断する。
・また双極性障害にも当たると思えない。私は今まで双極性障害の治療を数多くしてきたが、患者はみんな「自分の死傷も恐れずに喧嘩を売りに出る」ほどの他罰性を有していた。ヤクザと判っていて喧嘩を売ってボコボコにされてもなお好戦的だったり、警察官5,6人に取り押さえられてもまだ警官を殴ろうと暴れ罵ったり。あなたはそこまで自分の事を顧みずに他罰に走るか?(強い問い詰めの口調、私は無言で首を横に振りました)ほら、自分の安全を考えて『理性的に避けられている』。それができる人は躁ではない。また双極性の相はあなたの言うように突発的に入れ替わらない、数週間スパンで続く。あなたの怒りは突然沸き立って2時間もしたら大体過ぎ去ってる、それは双極性障害とは言わない。(私が述べた経緯から)他罰性はアルコール依存の父親の暴力性から転写(正確な言葉を失念しました、移った/伝染したような意味でした)してしまった可能性を強く疑う。
・以上から、私はあなたがうつ病でも双極性障害でもないと診断する。抑うつ症状などはあるんだろうから、あえて病名をつけるなら気分障害、気分変調症だ。
(以上、初診時の診断)
私は驚きで唖然としてひるんだのと、医師の語調が次第に強くなったためにピンとこないと正直に言えませんでした。何よりとりあえず薬(睡眠導入剤)の処方は切らせられないと思い、様子を見る意味で次の診察を受けると伝え、以下の薬について説明を受けて処方されました。
(いずれも)
易怒性を感じた時:頓服としてワイパックス10を1錠/日
就寝時:クエチアピン25mg×2を自己判断で調節(減薬の方向で)、(私の希望に基づき)マイスリー後発(トーワ)5mg
初診の日の晩、私はその診断がどうしても受け入れられなかったので、幾分感情的な表現も含みながら自分の戸惑いをFAXしました。医師はそれも読んでくれたようでしたが、逆に「うつ病の人が、感情を昂ぶらせたとしてもこんなにビッシリの整然とした文章は書けない。あなたのこの異議はかえって私の所見を補強する証拠になった。」と諭されました。そして続けてこう言われました。;
「ええか、あんたはうつ病とか躁うつとか言われたら安心するかもしれんけど、安心したいかも知らんけど、どっちでもないねん!
もう退職が秒読みなんやろ?そしたら診断とか障害者認定とか(不安で一杯の私は、障害者手帳や障害年金についても少し相談していました)言うてやんと、もう後がないと覚悟してダメ元で復帰したったらええねん!
『もう大丈夫です、前と同じように働けます』って言うてしもたらやらんとしゃあないやん? 精神的にしんどなったり眠られへんようになったら俺がサポートするがな、それでええやろ?ええか、解ってるか!?病気とか違うねん、やるかやらんかやねん!」
私はその間ずっと「圧迫面接みたいだ」と思い怯えていました。傍から見ても圧力は判ってもらえたでしょう。『気合と根性』が苦手な私は、この医師についていける気がしないと思い、その場だけをしのいで処方を受け取り後日紹介状を電話でお願いしました(10/24)。
この診療所の最後の処方(2週間)が以下の通りです。
抗うつ薬(?)として:レキサプロ10mg×2を夕食後
就寝時:クエチアピン25mg×2を自己判断で調節、マイスリー後発5mg
こうして、今から半年前、X年の11月に今も続けている3軒目のクリニックに伺いました。経済的な事情もあり、カウンセリングを医師自身がしてくれるとの事で行ってみようと思いました(初診11/4)。
最後の先生(D医師)にも林先生とのQ&Aを読んでいただきましたが、この先生も双極性障害については言及せず、もっぱらうつ病と診断された様子でした。この先生の今の関心事だからか、私宛の質問や所見にはずっとADHDや自閉症スペクトラムの可能性を示唆されます。これも私にはかなり意外でしたが、反証できる自信もないので特に不本意を伝えてはいません。2回目以降はあまり話題に上りませんが、今でもたまにその可能性についてボソッと漏らされたりなさいます。
D医師も、処方を全面的に見直されました。スムーズな移行のための経過的な減薬の処方を除き、ご相談した処方とも2軒目とも異なる処方になりました。
(11/4から2週間)
抗うつ剤として:パキシル12.5mgを夕食後
就寝時に:ルネスタ1mg×2、セロクエル25mg×1.5錠
(11/18から3週間)
抗うつ剤として:パキシル24mgを夕食後
易怒性への対症:(私の希望に基づき)抑肝散エキス7.5gを毎食前
喉の違和感への対症:(同上)半夏厚朴湯エキス7.5gを毎食前
就寝時に:ルネスタ2mg×2、セロクエル25mg×1.5錠
(12/1から4週間)
パキシルを37.5mgに増量
日中の眠気対策に追加:カフェイン水和物0.2g+乳糖0.8gの混合細末を一日おきに朝食後
他は従前通り
(2016/1/5から3週間)
上記のうちパキシル25mg×2に増、カフェインを0.3gに増。あとは従前通り
(1/26から4週間)
上記のうち就寝時を
ルネスタ1mgを0.5錠に、セロクエル25mgを0.5錠にそれぞれ減。
(2/23から3週間)
抗不安・安定に:エビリファイ3mgとアルプラゾラム0.4mgを昼食後に追加
就寝時のルネスタを1.5mgに増、セロクエルも25mgに増
(3/15から3週間)
就寝時のルネスタを1mgに減、アルプラゾラムを就寝時に移動。
(4/5から3週間)
・エビリファイを6mgに増のうえ朝食後に移動、抑肝散を中止。
就寝時のルネスタとアルプラゾラムを中止、代わりにトラゾドン25mgを追加。
便秘と疲れ目の対策にそれぞれマグミット330mg×2を毎食後とシアノコバラミン点眼液0.2%を追加。
私の病名としてはうつ病として一貫されていますが、双極性障害に触れない事と相まって私の突発的な怒りについては賦活症候群と判断されているようです。
私がエビリファイに少し恐れを持った事を伝えても、突発的な怒りの防止にとエビリファイを処方されました。
私自身としましては、結果的に今が感情的にはまだ一番落ち着いている気がします。とは言え突発的な怒りは今も時々起こり、私がもはや慣れてしまったというか「怒る事を許してしまっている自分」を感じます。それまでは「恥ずべき事/慎むべき事」と思い続けていましたので、腹が立つたびにそんな自分への評価が最低まで落ちていましたが、最近は怒る事による自己否定の感情はめっきり減ったと思います。その分、自分が被った不条理への怒りが外的に作用してしまう心配もありますが、慣れからか今はあまり深刻に捉えられません。快活ではなくとも、発症から最も静穏な時期に入ったようで個人的には好ましく感じております。
あと大きな転換として、ちょうど15年間所属していたオーケストラを退団した、という事があります。ここ2年近くで頻発させてしまった団内の対人トラブルで、「自分の所属継続は自身にも団体にもよくない」とX年初から思っており、さる1月に節目となる演奏会が終わったのでその時点で退団したのです。3月ごろから、オーケストラに関わっていない事のストレスのなさに気づきました。休職までして療養しているつもりでいましたが、皮肉なことに趣味の活動が自分を強く緊張させていたようです。その意味ではようやく精神の疲れが癒えつつあるように思われます。
いっぽうで、気分や生理的な調子は最近低調気味です。まず最近に顕著なものとして易刺激性です(ほぼ常に聴覚、時々視覚と嗅覚が過敏)。漠然としたしんどさ、踏ん張れなさはうつ病の身体的症状も想起されますが、深刻な運動不足と加齢による衰えも心配しております。特に最近は目の焦点を合わせることが至難で、筋肉の機能の低さは視力診断でも指摘されました。目のだるさと相まって、目を開けている事がしばしばひどく億劫です。
また精神的にはストレス耐性の減退が心配です。はじめの診療所で受けていたカウンセリングでも、カウンセラーの意図的な軽い圧迫(後で説明を受けました)に対して強く緊張し困惑でのぼせるほどでした。
現在は静穏と言いつつ、体調によっては毛ほどの不本意に対しても強い拒絶反応≒受容不能を呈します。
自分の精神が退行しているのか、主治医の「自閉症スペクトラム」に影響を受けているのか自分では判りませんが、社会復帰に向けた現状最大の懸念点です。
会社から明示はされていませんが、恐らく8月中までに復職が叶わなければ退職を余儀なくされそうです。長らく「今の会社を辞める=自分の社会的価値の消滅」であり、それを自分存在の全否定のように恐怖し続けていましたが、最近は(非現実的であれ)辞めたら辞めたなりにどうにかしたらいいか、受け入れる覚悟も必要かな、と思うように努めております。
自分にできることをするのみ、あとは結果を受け入れるメンタルの強さかと。
とにかくギリギリまで復職の可能性は捨てずに回復を目指す所存です。
長々と拙文にお付き合いいただきありがとうございました。このご報告をご覧いただいた上で、もし林先生のご所感やご助言ご注意などお聴かせいただければ幸いです。
道半ばではありますが、私の経験がどなたかのお役に立つとすればもったいない幸せです。きっかけを与えてくださった林先生に心からお礼申し上げます。
林: 経過を詳細にご報告いただきありがとうございました。
現在、それなりに安定されているご様子は何よりと思います。しかしそうは言っても十分に良好な状態とは到底言えませんので、さらなる改善を望みたいところではあります。
順序として、これまでの経過を振り返ってみます。当初の医師については 【3075】うつ病受療歴7年半、最近頻発するようになった「病的な怒り」に困憊しています の回答の通りです。
今回の【3248】に記されているC医師からの説明については、完全な誤りです。
すなわち、
あなたはこれだけの情報を時系列にまとめて詳細に書き込んでいる。内因性のうつ病の患者は到底こんな精緻な資料の作成なんてできない。
そんなことはありません。むしろ逆です。内因性うつ病には几帳面な方が多く、精緻な資料の作成ができることは内因性うつ病の診断を否定するどころか逆に支持するものです。但しもちろん症状が悪化しているときはそのようなことはできません。したがって、上記の説明に続くとされるこの言葉、
だから(以前は病気としてのうつ病には罹っていたかもしれないが)少なくとも今はその症状ではないと診断する。
これは意味をなしていません。しかしあまりにおかしな説明ですので、医師が本当にこのように説明したのかは疑問です。質問者の聞き違いかもしれません。「今はその症状ではない」ことは、診断そのものの否定につながらないのは医学の常識以前の話ですので、あまりにおかしな説明と言うしかありません。
そして、双極性障害についての次の説明も完全な誤りです。
・また双極性障害にも当たると思えない。私は今まで双極性障害の治療を数多くしてきたが、患者はみんな「自分の死傷も恐れずに喧嘩を売りに出る」ほどの他罰性を有していた。ヤクザと判っていて喧嘩を売ってボコボコにされてもなお好戦的だったり、警察官5,6人に取り押さえられてもまだ警官を殴ろうと暴れ罵ったり。あなたはそこまで自分の事を顧みずに他罰に走るか?
双極性障害の方の中には、激しい他罰性が見られることもありますが、そうでないケースも多数あります。この医師の説明は完全な誤りです。この医師の治療を受けるのをやめたのは賢明でした。
また、【3075】に書かれている、お姉さまが双極性障害と思われるという事実も診断上は重要です。C医師が質問者に対して病気ではないと責めるような調子で言っているのは医療として全く不合理です。
そして現在のD医師についてですが、
最後の先生(D医師)にも林先生とのQ&Aを読んでいただきましたが、この先生も双極性障害については言及せず、もっぱらうつ病と診断された様子でした。
【3075】の回答にお書きしたように、診断としては、「双極性障害(躁うつ病)と診断できるか、あるいは少なくとも双極性障害(躁うつ病)の素因を持って」いるとまでしか言えませんので、双極性障害でなくうつ病という診断も一理あるところです。何よりD医師は直接の診察に基づいているわけですから、メールの情報だけからの私の判断より重視すべきでしょう。
そして、D医師からのうつ病に続く説明、
この先生の今の関心事だからか、私宛の質問や所見にはずっとADHDや自閉症スペクトラムの可能性を示唆されます。
これはどの程度のニュアンスでの「示唆」なのかが不明ですので何とも言えません。文字通り「可能性を示唆」というレベルであれば、かなりの数の方がそのレベルになるというのがその理由です。
それはともかくとしてD医師は、少なくとも処方内容を見る限りでは、診断はうつ病と考えておられるようです。
そして
私の突発的な怒りについては賦活症候群と判断されているようです。
私がエビリファイに少し恐れを持った事を伝えても、突発的な怒りの防止にとエビリファイを処方されました。
とのこと、賦活症候群という診断が正しいかどうかも、それに対してエビリファイを処方することが正しいかどうかも、何とも言えません。何とも言えないというのは、正しいかもしれないし誤りかもしれないということです。私は個人的には、誤りとは言えないまでも、この【3248】のケースに対する最善の治療ではないと思います。賦活症候群の可能性は否定できないにせよ、そのように確診することは困難ですし、双極性障害あるいは少なくともその素因があることは確かであり、そして何より今の状態が十分な改善とは言えない以上、双極性障害としての薬物療法を試みるべきだと思います。すなわち結論としては【3075】の回答の最後に記した通りで、今も変わりません。
(2016.7.5.)