【2898】うつ病を発症して20年になるのにまだ治りません。仕事も退職しました。

Q: 58歳・男・元小学校教師です。38歳の時、初めて学級担任を外れ、「することがない」状態になりました。
それまでは、仕事が趣味のような感じで、兎に角仕事が楽しく、夜遅くまで学校で仕事していたり、家に仕事を持ち帰ったりしても、苦痛は感じませんでした。
初めのうちは体調不良だと思い、様々な医療機関を受診しましたが、どこに行っても「異常なし」の診断を受けました。

そのうち、朝出勤できなくなり、友人の勧めで精神科を受診しました。
そこで初めて「うつ病」と診断されました。
投薬治療を受けましたが改善せず、主治医の勧めで3ヶ月の休暇をとりました。
元々体育会系の人間で、体調が良くなれば「もう大丈夫」と薬を勝手に止めたりしました。
3ヶ月後に復職し、大きく調子を崩すことは無く、何とかその年度を乗り切りました。
その年度で、転勤しました。

その後は、家の近くの神経内科を受診しながら、何とか仕事には行っていました。
神経内科には行ったり行かなかったりで、薬も飲んだり飲まなかったりでした。
どんな薬を飲んでいたかは、覚えていません。
欠勤は多くありましたが、長期休暇をとることなく、7年ほど過ぎました。

48歳の歳、調子が大きく崩れて神経内科から少し遠い所の心療内科に転医しまし、1ヶ月の休暇をとりました。
次の年は、1ヶ月の休暇を2回、その次の年は6ヶ月の休暇。
その年度で転勤しました。

調子が非常に悪い状態での転勤。
新学期が始まって最初の月曜日に出勤できず、「またズルズル休むことになるのはいけない・しっかり休んでキチンと治そう」と思い、3年間の休職を決めました。

休職中は、調子が良くなると軽登山に出かけたり、スポーツジム通いをしたりしていました。
復帰が3ヶ月に迫った頃には、教育委員会主催の「職場復帰訓練」にも通いました。
主治医と相談して、様々な抗うつ剤も試しました。
大学病院など、3つの病院の精神科にセカンドオピニオンなどにも行きました。
どこの病院も「今の診療所で治療を続けることを勧めます」という感じでした。
それでも、あまり改善したようにならないまま、職場復帰しました。

仕事には不満はなく、比較的楽な配置もしてもらい、新学期初めはそれ程でもなかったのですが、6月頃には調子が酷く悪くなってきました。
「うつさえなければ・・・」という感じでした。
何とか1学期を乗り切り夏休みに入りましたが、調子の悪いのが続きました。
2学期になっても調子は良くならず、一週間ほどで数日欠勤してしまい「もう迷惑はかけられない」と思い、「退職」を決断しました。その秋に退職しました。

退職後、障害年金を申請したら「2級」の認定を受けました。
自分ではせいぜい3級だろうと思っていたので、ショックでした。
「もう、俺ってこんなものか」という気になりました。

それから4年余り経っていますが、うつは改善していません。
最初から数えると、もう20年ほどです。

「生きてるだけでしんどい」と思っています。
「死」についてはよく考えますが、「死にたい」と思ったことはありません。
ただ、「もういつ死んでもいい」とはずっと思ってきました。

精神的には、抗うつ剤が効いているのか、抑うつ気分はさほどありません。
ただ、ネガティブな思い浮かびは多く、マイナス思考も強いです。

身体的な症状は、「しんどい」というしかありません。
そして、週1〜2回の頭痛、睡眠障害です。
頭痛は起こっても、レルパックスかロキソニンを飲むと数時間で大体治まります。
睡眠障害は、寝付きは悪くないのですが、長くて1時間ほどで目覚めてしまいます。
睡眠前にレスリン50mgを飲んでいて、就寝後の数時間は数回起き上がって菓子を食べてしまいますが、後半の3〜4時間は目覚めずに眠れています。

現在薬は、一日にパキシル50mg、ジェイゾロフト100mg、レスリン50mgを飲んでいます。
副作用は、「口内の渇き・尿の出が悪い・筋肉のピクつきやこわばり」があります。

日中は殆どパソコンに向かっています。
頭の隅で「俺は何をしているんだろう・こんなことをしていいのか」などと思いながら、どうでもいいことをして気紛らし・時間つぶしをしています。
しんどさが増してきたら、ソファーに横になって、少し眠れます。
何の社会貢献もできず、労働の義務さえ果たせない自分が情けないです。

月に1〜2度は、友人に誘われて温泉・夕食などを一緒しています。
幸い友人は多く、それなりにいい時間も持てています。
「自分からは誘わない」と決めています。
面倒感が強いし、誘って体調が悪くなったら申し訳ないので・・・

40歳前からうつになって、気力や体力が落ちてきたと感じたときは、「うつ病の所為なのか?加齢によるものか?」とずっと思っています。

自分のうつは、病ではなく、障害に至ってしまったと思っています。
もう治ることなく、死ぬまでこのままだろうと・・・

この夏頃からは、ドンドン怠け者になっていくような気がしています。
障害年金を受給して、経済的には今のところ何とかできているので「もうこれでいいか」
などと思うことがあります。
「このまま怠け者で生きていくしかないのか」と思ってしまいます。

同居家族は妻と娘です。
妻は職に就いています。
妻も娘も、うつ病には理解があるというか、分からなくて触れないのか、私には小言や不満など言いません。

「うつ」以外は何も問題ないのです。
仕事しているときでも、「うつ病さえなければ・・・」とずっと思ってきました。

本当に私は「うつ病(だった)なのか?」とも、よく思います。
ただの「怠け者じゃぁないのか?」などとも思います。

最近は「何もしなくていい」ことが「楽チン」と思うようにもなってきました。
友人と会ったりしたときの夜や翌朝に思うことが多いです。

数日にわたって書いてきましたので、支離滅裂な文章になっています。
申し訳ありません。

最後に質問です。
私はこのまま生きていくしかないのでしょうか?

林: 難治性のうつ病だと思われます。電気けいれん療法を受けるべきです。電気けいれん療法によって、これまでの苦しみが嘘であったかのように改善することも期待できます。ぜひ電気けいれん療法を行っている病院を受診してください。

うつ病という診断の強い根拠の一つは、このメール全体に流れている自責感です。
加えて、経過の中に見られる個々の内容も、うつ病に一致しています。振り返ってみましょう:

38歳の時、初めて学級担任を外れ、「することがない」状態になりました。
それまでは、仕事が趣味のような感じで、兎に角仕事が楽しく、夜遅くまで学校で仕事していたり、家に仕事を持ち帰ったりしても、苦痛は感じませんでした。
初めのうちは体調不良だと思い、様々な医療機関を受診しましたが、どこに行っても「異常なし」の診断を受けました。

このような発症は、うつ病として典型的です。すなわち、過大とはいえないストレスをきっかけに、漠然とした不調が現れるというパターンです。【2896】はじめは適応障害、後にうつ病と診断されましたが、本当は甘えではないでしょうかの発症とも共通するところ大と言えます。
もちろんこの【2898】の方のように、「仕事が趣味のような感じ」というタイプの人にとっては、「することがない」状態 は、それなりのストレスであったことは想像に難くありません。けれどもだからといってこのメールに書かれているような全経過の「原因」として納得できるレベルのストレスとは言えません。「原因」ではなく「誘因」と言うべきものです。(うつ病の聖杯 42 参照)

また、最初の症状については「体調不良」としか記されていませんので具体的内容が不明ですが、

初めのうちは体調不良だと思い、様々な医療機関を受診しましたが、どこに行っても「異常なし」の診断を受けました。

という記載からは、何らかの身体症状であったと推認できます。【2896】はじめは適応障害、後にうつ病と診断されましたが、本当は甘えではないでしょうかの回答に、うつ病は
原因のはっきりしない身体症状から始まることもよくあります。
とお書きした通りです。

そのうち、朝出勤できなくなり、友人の勧めで精神科を受診しました。
そこで初めて「うつ病」と診断されました。
投薬治療を受けましたが改善せず、主治医の勧めで3ヶ月の休暇をとりました。

投薬の内容が不明ですので、適切であったかどうかは判断できません。
但し、

元々体育会系の人間で、体調が良くなれば「もう大丈夫」と薬を勝手に止めたりしました。

このように、少しよくなると薬を勝手にやめることで、うつ病が長引くのはよくあることです。残念ながらこの【2896】のケースはその典型例と言わざるを得ません。

3ヶ月後に復職し、大きく調子を崩すことは無く、何とかその年度を乗り切りました。
その年度で、転勤しました。

その後は、家の近くの神経内科を受診しながら、何とか仕事には行っていました。
神経内科には行ったり行かなかったりで、薬も飲んだり飲まなかったりでした。
どんな薬を飲んでいたかは、覚えていません。
欠勤は多くありましたが、長期休暇をとることなく、7年ほど過ぎました。

神経内科には行ったり行かなかったりで、薬も飲んだり飲まなかったりでした。
といった中途半端な治療のため、
欠勤は多くありました
という事態になったと言えます。
このような経過が続けば、どこかで大きく悪化するのが普通です。まさにそのような事態が次に発生しています:

48歳の歳、調子が大きく崩れて神経内科から少し遠い所の心療内科に転医しまし、1ヶ月の休暇をとりました。
次の年は、1ヶ月の休暇を2回、その次の年は6ヶ月の休暇。
その年度で転勤しました。

この時点で、うつ病を発症してからすでに10年が経過しています。その期間、中途半端な治療が続いていたことが悔やまれるところです。

調子が非常に悪い状態での転勤。
新学期が始まって最初の月曜日に出勤できず、「またズルズル休むことになるのはいけない・しっかり休んでキチンと治そう」と思い、3年間の休職を決めました。

この記載はよくわかりません。なぜいきなり3年という長期間の休養に入られたのか。
それはともかく、後の経過を見てみましょう。

休職中は、調子が良くなると軽登山に出かけたり、スポーツジム通いをしたりしていました。

おそらく適切であったと思われますが、「調子が良くなると」とはどの程度の調子であったかは気になるところです。うつ病で休養中に、このように積極的な行動に出る場合は、自覚症状だけでなく、主治医の先生からの指示に従うことが重要です。つい本人や周囲の人は、少しよくなっただけでさらなる改善を目指して行動し、結果として再燃を繰り返すことが多いものです。

復帰が3ヶ月に迫った頃には、教育委員会主催の「職場復帰訓練」にも通いました。
主治医と相談して、様々な抗うつ剤も試しました。

このあたり、よく理解できません。登山などが出来る段階は、うつ病がかなり良くなっていることが条件ですので、そういう段階になってからなお様々な抗うつ薬を試すというのは不可解です。もっとも、これは単なる文章の書き方の問題で、様々な抗うつ薬を試したのは登山などをするようになる前だったということかもしれませんが。

大学病院など、3つの病院の精神科にセカンドオピニオンなどにも行きました。
どこの病院も「今の診療所で治療を続けることを勧めます」という感じでした。
それでも、あまり改善したようにならないまま、職場復帰しました。

これもよく理解できません。よくなっているのになぜセカンドオピニオンを求めたのか。実は登山などをしたのは、それほどよくなっていない時期で、したがって、先にお書きしたように、「つい本人や周囲の人は、少しよくなっただけでさらなる改善を目指して行動し、結果として再燃を繰り返すことが多い」という典型例であったのではないかという疑問が残るところです。
あまり改善したようにならないまま、職場復帰しました。
という記載も、この疑問を裏付けます。

仕事には不満はなく、比較的楽な配置もしてもらい、新学期初めはそれ程でもなかったのですが、6月頃には調子が酷く悪くなってきました。

あまり改善したようにならないまま復帰すれば、当然の結果と言えます。
この後まもなく退職となったのは、経過からいえば、残念ながら予想された事態と言わざるを得ないでしょう。

それから4年余り経っていますが、うつは改善していません。
最初から数えると、もう20年ほどです。

「生きてるだけでしんどい」と思っています。
「死」についてはよく考えますが、「死にたい」と思ったことはありません。
ただ、「もういつ死んでもいい」とはずっと思ってきました。

精神的には、抗うつ剤が効いているのか、抑うつ気分はさほどありません。
ただ、ネガティブな思い浮かびは多く、マイナス思考も強いです。

身体的な症状は、「しんどい」というしかありません。
そして、週1〜2回の頭痛、睡眠障害です。
頭痛は起こっても、レルパックスかロキソニンを飲むと数時間で大体治まります。
睡眠障害は、寝付きは悪くないのですが、長くて1時間ほどで目覚めてしまいます。
睡眠前にレスリン50mgを飲んでいて、就寝後の数時間は数回起き上がって菓子を食べてしまいますが、後半の3〜4時間は目覚めずに眠れています。

うつ病が改善しているとは到底いえない状況です。

現在薬は、一日にパキシル50mg、ジェイゾロフト100mg、レスリン50mgを飲んでいます。

量だけをみれば、充分な抗うつ薬による治療を受けていると言えます。但し、ここまでの処方経過が不明ですので、このケースに対して適切といえるかどうかの判断は困難です。

本当に私は「うつ病(だった)なのか?」とも、よく思います。
ただの「怠け者じゃぁないのか?」などとも思います。

うつ病に間違いないと思います。甘えや怠けではありません。

最後に質問です。
私はこのまま生きていくしかないのでしょうか?

電気けいれん療法を受けるべきです。
もっとも、先にお書きしたように、はたして今の処方が適切であるのか、また、これまでの処方が適切であったかは判断できません。現在の処方は抗うつ薬のみであり、その量は充分といえますが、効果は明らかに不十分ですから、三環系抗うつ薬に切り替える(たとえばアナフラニール)・非定型抗精神病薬を追加する(たとえばエビリファイ)・気分安定薬を追加する(たとえばデパケン)などの治療戦略も考える必要があります。
けれども、これだけ長い経過で薬物療法を続けてきた以上、上記のような薬も試みた可能性は高いですし、そもそも薬物療法への期待感は薄れていると考えられますので、別の治療法に切り替えることが適切でしょう。
電気けいれん療法によって、これまでの苦しみが嘘であったかのように改善することも期待できます。ぜひ電気けいれん療法を行っている病院を受診してください。

(2015.2.5.)

05. 2月 2015 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 電気けいれん療法