【4992】私のうつ病の原因は発達障害でしょうか

Q: 20代女性、 技術職です。学生時代にADHDの傾向があると診断されストラテラ40mgを飲み続けていす。
仕事中に体調が悪くなるようになり心療内科で相談したところ、うつ病として診断され、その際に発達障害が原因だと言われました。
しかし、自分の体調不良が発達障害由来のものなのか納得できないため質問させて頂きました。

(1)体調が悪くなった経緯
仕事で、炎上しているプロジェクトに人員補充で入ることになりました。
また、一緒に作業をしていた先輩が持病を持っており、通院や体調不良で休みがちだったため作業をずっと巻き取っていました。
その結果、実態として月60時間から80時間程度の残業が続き、特に納期がせまってから朝8時から深夜1時過ぎまで作業するような日が続いています。
それ以来仕事中に体調が悪くなったり、土日に夕方までベッドから起き上がれない状況になりました。

(2)体調不良の症状
嘔吐や下痢、頭痛、強い倦怠感が毎日あります。
また陽の光を浴びると目の奥に痛みを感じます。
不眠症状はありませんが、作業量によって睡眠時間が削られており、朝起きる時に辛い感覚があります。

(3)心療内科での診断内容
心療内科でうつ病と診断されました。またうつ病の原因は私に発達障害があることだと言われました。
セルトラリン50mgを処方され、休職はせず勤務し続けることになりました。

(4)納得できない点
私のうつ病の原因は「発達障害の人は仕事がうまくいかなくて自信を失いやすいから」だと言われましたが、定型発達の人は残業で睡眠時間が削られても体調がおかしくならないのでしょうか。
そもそも生き物として睡眠時間が少なくなれば身体に不調が出ることは当然のことのように思え、うつ病という精神的な病気なのか疑問です。
そして自分に必要なものはセロトニンではなく人並みの睡眠時間だと思っています。
そのために残業量調整が必要だと診断して欲しかったのですが、考えが甘いでしょうか。

 

林: この【4992】の質問者の不調の経緯について記されているのは、

月60時間から80時間程度の残業が続き、特に納期がせまってから朝8時から深夜1時過ぎまで作業するような日が続いています。 
それ以来仕事中に体調が悪くなったり、土日に夕方までベッドから起き上がれない状況になりました。

ということのみですので、把握できる事実は、「業務時間が長くなり、その後に不調に陥った」ということのみです。発達障害については、

学生時代にADHDの傾向があると診断され
たということ、そして、今回の不調について、

うつ病の原因は「発達障害の人は仕事がうまくいかなくて自信を失いやすいから」だと言われました

ということのみで、「発達障害の人は仕事がうまくいかなくて自信を失いやすい」は一般論にすぎませんので、仮に質問者が発達障害であったとしても、それが質問者の今回の不調の原因にあてはまるかどうかについては何もわかりません。

定型発達の人は残業で睡眠時間が削られても体調がおかしくならないのでしょうか。 

当然になり得ます。しかしそれも一般論ですので、【4992】の質問者の不調の原因が「残業で睡眠時間が削られ」たためかどうかの判断の決め手にはなりません。とは言え、その可能性(【4992】の質問者の不調の原因が「残業で睡眠時間が削られ」たためであるという可能性)が十分にあるとまでは言えるでしょうか。

そもそも生き物として睡眠時間が少なくなれば身体に不調が出ることは当然のことのように思え、うつ病という精神的な病気なのか疑問です。 

その通りです。但しここにはうつ病という概念をどう考えるかという問題があります。睡眠時間の不足によって心身に不調が出たとき、その不調が一定以上のレベルに達していれば、現代においてはうつ病と診断することは正しいとされています。私はその考え方に反対はしませんが、それは「真のうつ病」ではないと考えます。

そして自分に必要なものはセロトニンではなく人並みの睡眠時間だと思っています。 

セロトニンを持ち出すことの問題は別として(うつ病の原因をセロトニンに帰するのは誤りとまでは言えないまでも、不正確です)、睡眠時間の短縮が原因で不調に陥ったのであれば、不調改善のための方法として十分な睡眠時間を確保することが第一であるのは当然です。少なくともまずはそうするべきで、それでも不調が改善しなければ別の原因・方法を検討するというのが正しい手順でしょう。

そのために残業量調整が必要だと診断して欲しかったのですが、考えが甘いでしょうか。

決して「考えが甘い」とは言えません。仮に(「仮に」です。発達障害が原因かどうかについては判断できるだけの情報がありませんので、その可能性も否定はできません)睡眠時間の短縮が主たる原因で、その主たる原因が長い残業時間であれば、「残業量調整が必要」と「判断」するのが妥当です。その「判断」を「診断」と呼ぶかどうかは別の問題です。仮に「診断」と呼んだ場合、会社は「残業量調整」をすることが望ましいですが、それが会社の義務とまで言えるかどうかもまた別の問題です。

(2025.10.5.)

05. 10月 2025 by Hayashi
カテゴリー: ADHD, うつ病, 発達障害, 精神科Q&A タグ: |