【4978】発症のサインを見逃さないようにします (【4970】のその後)
Q: 【4970】祖母と母が統合失調症でした。統合失調症の発症を防ぐことはできないのでしょうか。 で回答いただいた30代女性です。
ご回答ありがとうございました、母の死以降悶々としていた気持ちの整理を付けていけそうです。
発症の兆しがあれば直ちに治療を受ける。これを肝に銘じます。夫には、林先生の本(統合失調症という事実)も読んでもらっています。
母が命を絶ってしまったことについては、あの時すぐに病院を受診していればという後悔でいっぱいです。亡くなる1ヶ月前に、身体がだるく起き上がれないのでもう帰省しないでほしいという連絡がありました。電話で色々と話を聞いて解決したと思っていましたが、きっと統合失調症の陰性症状だったのでしょう。また、父の話によると「通院先(外科)に迷惑をかけたから、謝りに行きたい」とか「車を運転すると人を轢いてしまいそうで怖い、運転したくない」とか「一人でいるのが不安なので、父の単身赴任先で暮らしたい」と訴えていたそうで、今になって考えると統合失調症初期の切迫した不安感が現れていたと思います。父は、統合失調症か環境の変化による不安定な状態なのか見定めていて、病院を受診させるか迷っていた矢先の、突然の死でした。亡くなる直前の日記には「車に後をつけられている、誰かが家に侵入している」といった分かりやすい妄想が記してありました。そういった統合失調症に典型的な妄想を誰かに話さない、話したとしても、「車で人を轢きそうで怖い」という統合失調症らしい内容でないとすると、人に気づかれることなくあっという間に病気が進行するのだと思いました。
先生が回答くださったとおり、統合失調症に特徴的な妄想(例えば、盗聴器や監視カメラが仕組まれているとか、テレパシーが送られてくるとか)以外の、こうした事柄を敏感に捉えていく重要性が実感として分かります。
子が成長した時には、統合失調症のハイリスク家系であること、病気の特徴や受診の大切さを伝えたいと考えています。将来、子に関わる人達が、この病気に偏見がなく、適切に対応してくれるといいなと思っています。
林: 回答へのご理解内容を報告していただきありがとうございました。
先生が回答くださったとおり、統合失調症に特徴的な妄想(例えば、盗聴器や監視カメラが仕組まれているとか、テレパシーが送られてくるとか)以外の、こうした事柄を敏感に捉えていく重要性が実感として分かります。
まさにその通りです。そしてこの重要性が一般的な知識としてもっと広まれば、統合失調症が前駆期や初期の段階で治療の機会が得られるようになり、ひいては良好な経過を取る統合失調症の方が増え、逆に悲惨な経過をたどるケースが減少することは間違いないと思います。
子が成長した時には、統合失調症のハイリスク家系であること、病気の特徴や受診の大切さを伝えたいと考えています。
是非そうされてください。統合失調症をご家族に持つ方の多くが、さらには当事者の方が、そのような認識を広く共有されるようになることが、私がこのサイトを続けている大きな動機の一つでもあります。
将来、子に関わる人達が、この病気に偏見がなく、適切に対応してくれるといいなと思っています。
その通りだと思います。そしてそのためには、社会全体が統合失調症についての正しい知識を共有することが必要だと思います。
それは実際には容易ではありません。なぜなら統合失調症には、悪化すると、その症状が迷惑行為や他害行為に直結しうるという事実があるからです。この事実だけが誇張されれば統合失調症に対する差別や偏見を増大しますが、事実である以上、隠蔽すれば真の理解はいつまでたっても浸透しません。たとえば【4977】のようなケースの報道はどうあるべきか。この高いハードルを超えない限り、統合失調症についての正しい知識の共有はありえないでしょう。
(2025.8.5.)