【4955】デパスを常備薬のように服用するのは大丈夫なのでしょうか

Q: 私は40代女性です。私にはお付き合いしている50代の男性がいます。
彼はストレスが原因と思われる目眩や動悸などの体調不良に見舞われ、かかりつけ(内科)を受 診したところ、男性更年期障害と自律神経失調症という診断を受けました。
上記のような診断をされてから4年経った現在も彼はデパスを朝昼晩の1日3回服用しています。 途中、心療内科に促されることも減薬などの話もなく、月1の受診で毎回相当量のデパスを処方されきっちり1日3回服用しています。

精神科医でなく内科医というところに引っかかりがあるのかもしれませんが、4年間もデパスを常備薬のように服用するのは大丈夫なのでしょうか。

 

林:大丈夫なのでしょうか」という質問は多義的で、「大丈夫」という言葉で質問者が何を意味しているのかが曖昧です。また、「4年間もデパスを常備薬のように服用する」という記述も、具体的な質問事項を正確に反映しているとは言えません。この50代の男性は4年間デパスを「1日3回服用」しているのに対し、「常備薬のように服用」という記述は量が特定されていませんから、大きな違いがあります。薬についての質問や疑問にはこの種の不正確さはつきもので、服用量などについての正確な事実があって初めて、その服用が適切かどうかの検討に入ることができるのですが、漠然と「この薬を飲み続けて大丈夫ですか」というような問われ方では何も答えることはできません。その意味ではこの【4955】は、デパスのミリ数が示されていませんので(デパスは0.25ミリグラム錠と0.5ミリグラム錠と1ミリグラム錠があります)、「1日3回」だけでは服用量が不明で、回答は不可能ということになります。しかし最大の1ミリグラム錠であっても最小の0.25ミリグラム錠であっても、このご質問に対する答えはほとんど同じですので、ミリグラムについては無視してお答えしたいと思います。

大丈夫なのでしょうか」が、現時点、すなわち4年間飲み続けた時点についてのご質問であれば、それは現時点での健康診断結果がその答えになります。つまり、大丈夫であるとか大丈夫でないとか架空の議論をすることには意味がなく、現に何か害が出ているかいないかが問題です。但し、デパスを4年間飲み続けたことによって何らかの害が発生する可能性はかなり低いので、現時点では何の問題もない可能性の方が圧倒的に高いでしょう。

一方、「大丈夫なのでしょうか」が、将来についてのご質問であれば、そのご質問は、(1)飲むのをやめられなくなるのではないか (2)飲む量がどんどん増えていくのではないか (3)何年か後に害が出るのではないか など、いくつかのうちのどれをお尋ねになっているのか、または、いくつかのうちのどれかの問題が発生するのではないか、をお尋ねになっているという解釈が可能ですが、(1)については、【4953】、【4954】をご参照ください。(2)については、これまで4年間一定量を続けてこられたという事実からすると、この後に量がどんどん増えるおそれは低いです。(3)については可能性は低いですが、ある程度定期的に血液検査等で副作用の発生をチェックする必要はあると言えます。そしてたとえわずかでも害が出る可能性がある薬を飲み続けるのか、それともわずかでも害が出る可能性があれば飲むのはやめるべきか、それは薬のメリットとデメリットのバランスによって決めることになります。これについても【4953】をご参照ください。

(2025.5.5.)

05. 5月 2025 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 薬の副作用