【4934】私には自己愛性人格障害の傾向がありますか

Q: 私は20代男性です。
自己愛性人格障害に関して下記をお伺いしたく、メールさせていただきました。

(1)私には自己愛性人格障害の傾向があるのか。
(2)精神科での診断時、患者が自己愛性人格障害であっても、何らかの理由(刺激しないため等)でその旨を伝えなかったり、別な病気として伝えることはあるのか。

質問数に限りがある場合、(1)を優先してお伺いしたく存じます。
数ある中からご確認いただきありがとうございます。
多大なお手間をおかけし申し訳ありませんが、是非ご見解をいただけますと大変幸いです。
よろしくお願いいたします。

以降、各質問の詳細を記載いたします。

■(1)の質問について
私につきまして、初めに現況を記載させていただきます。

・27歳男性、無職
・約半年前まで中小のゲーム開発会社にて働いていました。
・一部重いタスクを後回しにしたり、そもそも自身の力量不足で仕事についてけない 等の理由に、このまま会社に自分がいても力になれることはないのでは という名目で自己都合退職しました。

・その頃にお伺いした精神科にて、ASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。
・診断されてからは下記をしばらく服用していました。
*セルトラリン 25mg 1日朝食後 1錠
*パルプロ酸 100mg 1日朝食&夕食後 それぞれ1錠
・退職して間もなくのころに主治医へ「薬を飲んでもあまり変化を感じられない。やめられるのであればやめてみたい」と相談した所、「そもそも飲んでいる量が少なく、ほぼ効果がないのと一緒なため、やめてみても問題はない」と見解を頂いたため、主治医と相談し、現在はいずれも服用していません。
・現在は 大きな問題 と思うような事がないため、通院頻度を落としている状況です。このまま問題が起きなければ主治医と相談したうえで、通院を中断する予定です。

続いて、私の現況までの経歴について記載させていただきます。
(以降は母からの情報も含みます。該当部分は ◆マーク を置いています。)

●誕生~小学校まで
◆1歳4カ月で始語。おとなしくて手のかからない乳児だったようです。
◆利き手に少しこだわりがあったのか、「左手に持っているものを右手に持たせると、すぐ左手で持ち直す」ということをしていました。
・保育園でのお昼寝の時間にて、何か先生に反抗していたような覚えがあります。具体的な反抗の内容・理由は覚えておりません…

●小学校時代)
・勉強がものすごく嫌いで、宿題は一切行ったことがありません。
これは小学校からで、今でもほぼ同じです。
(仕事も… 軽いタスクであれば遂行できますが、重いものになるとどうしても止まってしまいます。)
・3年生あたりから、「自分がテレビ番組に出たらどんな活躍をしているか」という成功体験の空想に浸るようになりました。これは今でも「自分ならどんな番組を企画するか」「どんなゲームを作るか」と形を変えながらも続いています。
・同じく3年か4年あたりから、インターネットに良く浸るようにもなりました。特に小中の頃は時間を気にせず、よく寝不足になっていた覚えがあります。
・4年生頃から教室に入らず、廊下などで終わるのを待機していました。
・2年生ぐらいに未成年飲酒をしたことがあります。 (当時は好奇心に負け、何も考えずに飲んでしまいました。もちろん全く許される物ではないと存じております。)
・2年生の時、宿題を出していなかったため給食のおかわりを禁止されたことがあります。それに苛立ち、「死ね」と殴り書きした宿題を提出したことがあります。
・3年生の時、状況はよく覚えていませんが飛び降り未遂を行ったことがあります(クラスの誰かにからかわれたような気がします)。
・4年生の頃、少し授業態度が悪い生徒がおり、帰りの会で「ちゃんとしないと椅子を投げるぞ」と警告しました。後日、改善が見られなかったため、本当に投げた覚えがあります。
◆4年生の頃、担任からの提案で初めて精神科へ受診しました。(厳密には小児科?)結果として「友達が出来てないからこのような行動を起こしているだけ。友達ができればこんなことはなくなる」との見解で、特に診断などはありませんでした。
・小学4年生頃から高校生まで、「暴れた」ことがあります。
主に器物損壊(ものを投げる)や喚くような形で、いわゆる癇癪?が起きていました。頻度は大体年に1回のペースで、何か自分にとって気に入らないことがあると暴れるようになっていました。年を重ねるにつれ、少しずつ落ち着いていった印象があります。

●中学校時代
・入学して半年は教室に戻り、通常通り授業を受けていましたが、1年生の夏休みが明けてからは以前と同様、教室に入らないようになりました。
・1度生徒相手に暴行を行ったことがあります。確かからかった発言を相手にされ、それに苛立って行った覚えがあります。
◆中学3年生の時に別な精神科に行きました。いわゆる大型病院のような所だったのですが、「思春期によるものでしょう」というような見解だったため、こちらでも特に診断などはありませんでした。

●高校時代
・初めは普通制の高校に入学しました。が、入ってしょっぱなイジメのターゲットになり、オリエンテーションに向かうバスの中で大泣きしました。
入学した高校には別教室で通えるような制度があったため、そちらで1年目を過ごしました。
・1年別教室で過ごして気持ちが落ち着いたため、2年目は普通の教室でクラスメイトの一員として過ごしました。が、どうしても慣れず3年目は別教室に再度移動し、その後少しして「暴れて」退学しました。
・高校時代には2回暴れましたが、その内1回はいわゆる「悪用」の気持ちが強かったと思います。ここまでの経験から「「暴れた」際、先生が来て話を聞いてくれる、自分にある程度合わせてくれる」と思ってしまい、「ある追試について、他の人は実質書き写しなのに対し、自分は完全な再試で単位が取れないことが確定したから、暴れたら何とかならないか」という思惑で暴れたことがあります。(もちろん何ともなりませんでした。)
・高校退学後、改めて別な精神科に訪れました、現在通っているのはこちらの精神科です。前述のとおり、こちらにてASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。
・退学後は通信制の学校に移り、そちらで卒業しました。またこの転校以降、強く不機嫌になることはあるものの、「暴れる」ことは現状1度も起きていません。(喚くのだけは退職後に1回のみありました。)

●専門学校時代
・「ゲームの仕事なら仕事中も実質ずっと遊んでいるだろうし、比較的負担が楽にすむのでは?」と舐め切った理由でゲーム業界を志望しはじめ、それに準
する専門学校のコースに入学しました。(以降もどうもいわゆる「楽をしたい」という気持ちはどうにも抜けません。
ただ、さすがに擁護できないほど自身が低スキルなのも理解している…つもりではあります。(≒莫大な富・名声は現実では得られない想定でいる))
・専門学校ではプログラミングを勉強しました。志望理由はよくなかったもの興味はあったこと、また中学時代にプログラミングに触れていたためか、専門学校での勉強はこれまでと比べ、積極的に進めることが出来ました。
・この頃、アルバイトを3件ほど行いましたが、いずれもすぐにやめています。
*新聞配達(3日間)
→自身が新聞を入れるのが遅い為か、仕事と教えてくれる人が自身のカゴから新聞を奪ってポスト入れました。 その人が苛立っている様子にも見えた為、私としては気に食わず、それを気にやめました。
*軽作業(3日間)
→肉体労働がきつかったのと、人の指示をうまく聞き取れず、  ただ怒鳴られるようにしか感じられなくなりやめました。
*インターン(1週間)
→プログラミングの現場ではあったのですが、当時学習途中の為難しかったこと、現場の雰囲気が殺伐としていたため、耐えられなくなりやめました。

●入社~現在まで
・入社し最初はそれなりに従事していたものの、上がっていく仕事のレベルについていけず、5年ほどで退職しました。
・仕事中のミスとして、大まかに下記のようなものがありました。
*期限に間に合わないなどといった重要な相談を上長等にしなかった
*クライアントや来客に対し、正しい来客対応ができなかったこと
(言い換えると友達のようにいい加減な対応・話し方をしてしまったような形です)
*一部判断に迷う場面が出た際、逆に相談せず、自分勝手に進めていた
・上記ミスでトラブルになった際、口頭では自分が悪いといいつつも、大体は特に理由もなく「自分は悪くない」と思っていました。ただし一部ミスではその旨を実際に相手に伝え、1回のみ、長文の抗議文を送ったことがあります。
・またこの辺りから友達に対しても上から目線というか、リスペクト出来ていない態度になっていった覚えがあります。特にX(旧Twitter)などで交流をしていた時期は、「自分はゲーム開発に努めているんだ」という事実で自信過剰というか、調子に乗っていた覚えがあります。
同時に友達も他の方との交流をはじめ、そちらの方がうまく行っていたため、嫉妬している部分もあるかもしれません。

私の経歴は以上となります。

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■(2)の質問について
ネット情報で恐縮ですが、Xにて「自己愛性人格障害(=NPD)であっても、自閉スペクトラム症(=ASD)として診断されるケースがある」との投稿を見かけ、上記の自身の経歴や様々な情報から「自身も本当はNPDの所、ASDとされている可能性があるのか 場合によっては自身の症状について構え方を変える必要があるのでは」と思い、当メール2点の質問をお伺いさせていただいた次第となります。

以上、長文の程失礼いたしました。
よろしくお願いいたします。

 

林:
(1)私には自己愛性人格障害の傾向があるのか。

むしろASDの可能性の方が高いと思います。ただしそれは「自己愛性人格障害とASDのどちらの可能性が高いか」という相対的な意味にすぎず、そうした比較を別にして「ASDの可能性が高いか」という問いになりますと、このメールに書かれている情報からは、そこまでは言えない、つまり、ASDの可能性が高いとまでは言えないと思います。
なお、人格障害については、「その傾向があるか」という問いにはほとんど意味はありません。自己愛性人格障害を例にとれば、自己愛は誰もがもっている健康な心理ですから、その人の言動の端々から自己愛が読み取れるのは普通のことであって、「障害」というからにはそれが度を越していることが読み取れる必要があるからです。

(2)精神科での診断時、患者が自己愛性人格障害であっても、何らかの理由(刺激しないため等)でその旨を伝えなかったり、別な病気として伝えることはあるのか。

そういうことはごく普通にあります。

(2025.3.5.)

05. 3月 2025 by Hayashi
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