【4828】双極性障害か、うつ病か、濫用薬物の影響か

Q: 20代男性です。以前から、人間関係や自分の社会性について悩むことが多かったのですが、大学で周囲に馴染むことができなかったり、人前で話す度に緊張で寒気や冷や汗が止まらなくなったりすることが多くなりました。
勉強や外出は億劫になったものの、趣味に逃避することはできていましたが、この頃から希死念慮が出始め、楽に死ねる方法などを調べるようになりました。
また、課題やスピーチなどを乗り越えるためだったり、将来への不安を紛らわすに咳止めを乱用するようになりました。
結局、薬物依存は酷くなっていき、休学することになりました。
その時初めて心療内科に受診し、自分では薬物依存症だと思っていたのですが、うつ病と診断され、セルトラリン25mgを処方されました。
通院中は薬物乱用をやめていました。
抗うつ剤が効いてきたぐらいから一転して明朗で一晩中話せるぐらい饒舌になり、これを飲んでいれば外向的になって社会で上手くやっていける、といったような万能感を持つようになりました。

しかし、躁転の疑いで(直接そう言われませんでしたが)抗うつ剤を中断することになりました。
その後、また暗い気持ちが戻ってきて、通院の気力が無くなり、再び気を紛らわすように咳止めを乱用するようになりました。(この時が最も高頻度で三日に一回以上の乱用です)
もちろん何かが解決することもなく、自分は社会の中で上手くやっていくことができず、これ以上生きていても意味がなく苦しいものになると思い、首吊りでの自殺を試みたのですが、縄の圧迫感や痛み、じわじわとした恐怖に耐えられなかったため、服薬自殺を試みました。
ところが未遂に終わり、胃洗浄の後に救急病院では双極性障害と診断されました。

この後、二度目の通院ではオランザピン5mgを処方されました。その心療内科でも、あまり薬物依存については触れられず、あまり酷いならば専門の病院への受診や入院を勧められました。
ただ、徐々に薬物乱用の頻度も少なくなっていき、やめることができたので話題に出ることはなくなりました。
しかし、社会に出なければいけないのに社会に出てしまったら大学のときのような失敗をしてしまうことの不安感や焦燥感が残りました。
ところが、事情があって別の心療内科に通院することになり、そこでは再び抗うつ剤が処方されました。(不眠が強いのでトラゾドン25mgになりました)
また、躁転のような状態になるのでは思いましたが、以前ほど強く作用することはなく、不安感もなくなったため、現在も継続中です。

さて、質問なのですが、結局私の病名は何なのでしょうか。これまで診断されたものは双極性障害→うつ病です。薬物乱用を辞めて一年ほど経っており、その後にうつ病と診断されました。うつ病が薬物によって双極性障害のように変化したのでしょうか。あるいは、薬物に逃げただけの擬態うつ病でしょうか。一日中ベッドから動けなかったことも、薬物の離脱症状だったのかもしれません。また、社会で上手くいかなかったことを言い訳にずるずるとモラトリアムを延長させていることの罪悪感も抗うつ剤によって薄れてしまい、そのまま社会に出なければ、ただの怠惰な人間で、病気ですらないのかもしれません。

 

林: この【4828】のケースの診断を考えるうえで最大のポイントは

抗うつ剤が効いてきたぐらいから一転して明朗で一晩中話せるぐらい饒舌になり、これを飲んでいれば外向的になって社会で上手くやっていける、といったような万能感を持つようになりました。

しかし、躁転の疑いで(直接そう言われませんでしたが)抗うつ剤を中断することになりました。

これが双極性障害の躁病相とみなせるか、みなせないか ということです。
「双極性障害の躁病相とみなせる」のであれば、その時点で診断は確定です。質問者は双極性障害です。そうであれば、抗うつ薬の継続は適切ではないというのが現代の精神医学の主流の考え方です。

薬物乱用を辞めて一年ほど経っており、その後にうつ病と診断されました。

この経過からは、薬物濫用の影響は直接は関係ないとみることができます。また、うつ病か双極性障害かは、経過の中の躁病相の有無が最も重要ですから、ある特定の時期にうつ病の症状があったという事実だけでは、どちらであるかを判断することはできません。

うつ病が薬物によって双極性障害のように変化したのでしょうか。

違うと思います。

あるいは、薬物に逃げただけの擬態うつ病でしょうか。

違うと思います。

一日中ベッドから動けなかったことも、薬物の離脱症状だったのかもしれません。

違うと思います。

また、社会で上手くいかなかったことを言い訳にずるずるとモラトリアムを延長させていることの罪悪感も抗うつ剤によって薄れてしまい、そのまま社会に出なければ、ただの怠惰な人間で、病気ですらないのかもしれません。

違うと思います。双極性障害か、またはうつ病でしょう。

(2024.5.5.)

05. 5月 2024 by Hayashi
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