【4827】適応障害の繰り返しなのか、うつ病の再発なのか

Q: 30代女性です。
現在、うつ病と診断され仕事を休職しておりますが、適応障害ではないかと思い質問いたします。

私は10代、20代の頃にもそれぞれうつ状態に陥ることがありました。
その際は通院しませんでしたが、今回も含めいずれも思い当たるストレス因があるため、適応障害の繰り返しなのか内因性うつ病なのか判断がつかずにおります。

下記、経緯と症状の詳細となります。

【10代の時】
15歳時にうつ状態になりました。
中学時代に受験勉強で大変ストレスを感じ、受験に成功し第一志望校に入学しましたが、学校内の人間関係に馴染めず、入学後1週間で不登校となり、最終的に自主退学となりました。
初めはとにかく学校へ行きたくないという気持ちから始まり、朝起きられず夕方に起床して昼夜逆転とる、夜は悲しくて毎晩泣きながら眠る、外出しても何にも興味が持てない、毎日インターネットばかりしている、人生に希望が持てなくてとにかく憂鬱な気持ち、という状態でした。
今考えても、当時はとても辛い気持ちだったと思い出します。
数ヶ月をかけて少しずつ回復し、一日数時間ほどのアルバイトができるまでになりました。
その後、大学受験を経て大学生活は通常に送れました。

【20代の時】
23歳ごろ、就職して半年後ごろに軽度のうつ状態(あくまで主観です。サボり病かもしれません)とりました。10代の頃よりは主観的には軽いものです。
就職先で、お世話になった先輩の退職と、上司から叱責される日々が重なり、とにかく会社に行きたくないと思うようになりました。
実家住まいで親の目もあるため家でサボることができず、会社に行かずファミレスや公園で過ごす日を1週間ほど過ごしました。
この日々については具体的な症状は特に記憶が無いのですが、暗い気持ちで、自分は精神的に不調ではないかと感じていました。
その後、別の上司や先輩との話し合いを経て、仕事に戻ることができましたが、以後も断続的に人生に対する虚無感に襲われ、死について考えることが度々ありました。

【現在(30代)】
転職入社後5年経つ職場で勤務しております。
事務職で仕事内容や勤務時間に対するストレスはありませんでした。
しかし部署内の入退社などにより徐々に職場の雰囲気が変わり(自分のような内向的な性格の人が減り、明るくて元気な人ばかりになった)、3ヶ月ほど前から、職場の人間関係や周囲の私語に対し明確にストレスを感じるようになりました。
またプライベートでは半年ほど前から不妊治療を本格的に始めました。
おそらくこれらのストレスが積み重なり、うつ状態になったと思います。
具体的な症状は、寝つけない、早朝覚醒、自分が劣った無能な人間であると感じる、自分には未来がないと感じ自殺を考える、会社に行きたくない(職場にいるのが耐えられないと感じる)、などです。
心療内科でうつ病と診断され、エスシタロプラム、ゾルピデム、ブロチゾラムを処方され服用しております。
なお、主治医には10,20代時のうつ状態については話をできておりません。
そして仕事については欠勤する日が度々出てきて、ついには欠勤が連続し、休職となりました。今回については、10代の時と同じぐらいの重さの症状と感じています。

経緯は以上です。
また、自分はコミュニケーションや人付き合いが幼少時からかなり苦手で、かつ方向音痴等もあるため、発達障害があるのではないか?、その二次症状としてうつ状態となっているのではないか?とも考えています。

どうぞよろしくお願いいたします。

林:
適応障害の繰り返しなのか、うつ病の再発なのか

これがご質問のタイトルですが、現代においては、適応障害とうつ病の区別は非常に曖昧です。適応障害におけるうつ状態をうつ病と呼ぶ場合もあれば呼ばない場合もあります。私は呼ばないのが正しいと考えますが、それは私がそう考えるというだけであって、呼ぶという考え方が誤りであるということはできません。

しかしメール本文の中には

適応障害の繰り返しなのか内因性うつ病なのか

という記載があり、質問者は「うつ病」という言葉で「内因性うつ病」を指していることがわかります。内因性うつ病はいわゆる真のうつ病で、うつ病という言葉を真のうつ病に限定して用いるのであれば、適応障害とは別のものとして位置づけることができます。この【4827】の回答では、質問者の用語法(うつ病という言葉を内因性うつ病に限定して用いる)にあわせることにします(私はそれが正しいと考えますが、上に述べた通り、それは正しくないとする考え方もあるところ、この回答ではそれは無視するということです)。

その観点からこの【4827】の経過を見るとき、特に注目する必要がある点は次の3点です:
(1) うつの状態の時期が、それ以外の時期とは明確に区別できること
(2) それらのうつの状態が、ストレスとは直接の関係なく発生していること
(3) それらのうつの状態が、通常、人にストレスに反応して現れるうつの状態とは異なる性質を持っていること

(1)について、【4827】の経過はそれを満たすように読めますが、うつの状態以外の時期についての具体的記載がないのではっきりとはわかりません。

(2)ついて、10代、20代の時期のうつの状態は明確なストレスが先行しているようですが、30代についてはそうではないようにも読めます。(2)は上述の通り「ストレスとは直接の関係なく発生していること」ですが、現実の生活では必ず何らかのストレスがありますから、実際の判定は難しいことが多々あります。また、内因性うつ病であっても、その初回のうつの状態は、ストレスに反応した形を取る(またはそのように見える)ことがむしろ多いです。するとこの【4827】では、30代の時期のうつの状態が、当時のストレスと直接に関係があるか、それとも関係は間接的なものにすぎないか、ということがポイントになりますが、メールの記載からはこの二つを区別して読み取ることは困難です。(質問者は「おそらくこれらのストレスが積み重なり、うつ状態になったと思います」と推定しておられます。このように、人は、精神状態に変化には何らかの原因があると信じており、したがって振り返ってその原因を探すものです。そして原因をストレスであると考えれば、ストレスはその強弱を別にすれば常に必ずあるので、それが原因であると納得しがちです。「おそらくこれらのストレスが積み重なり、うつ状態になったと思います」という質問者の解釈はその典型的なものです)

(3)について、

寝つけない、早朝覚醒、自分が劣った無能な人間であると感じる、自分には未来がないと感じ自殺を考える、会社に行きたくない(職場にいるのが耐えられないと感じる)

これらは内因性うつ病の特徴に一致していますが、文字による記載だけから見れば、内因性うつ病でないうつの状態でも現れ得るものですので、はっきりとはわかりません。この(3)は、内因性うつ病の診断では決め手とも言える重要な点ですが、直接の診察なしには大部分のケースでほぼ判断不可能です。

さらに質問者は発達障害の可能性についても記しておられますが、

コミュニケーションや人付き合いが幼少時からかなり苦手で、かつ方向音痴等もある

これらは発達障害でなくても十分に見られるものですので、質問者が発達障害であるか、あるいはその傾向があるかはわかりません。(「コミュニケーションや人付き合いが幼少時からかなり苦手」の「かなり」の程度、「方向音痴等」の程度も重要なポイントです)

以上の通りですから、この【4827】のケースが、

適応障害の繰り返しなのか、うつ病の再発なのか

については、わかりません。

(2024.5.5.)

05. 5月 2024 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 発達障害, 精神科Q&A タグ: |