【4826】私は受診が必要なレベルなのでしょうか

Q: 19歳男性です。質問事項の基本は件名に書いた通りです。自分の中では発達障害 (ASD、ADHD)、うつ病、統合失調症の三つの病気、あるいはその合併を疑っていますが、これらの病識が正しいのか、それとも単なる誇大妄想なのかが不安に思ってしまい、メールを送りました。

現在の主訴は主に意欲と感情の起伏の低下です。と言っても元々自分は感情をあまり表さない(正確には自然に表すことができない)タイプだと思っており、これは同居している弟からも指摘されたものです(ただ、弟曰く、その特徴は高校生以降のものらしいです)。また、昔から長期休み中は宿題を先延ばしにするタイプであり、限られた趣味と必要なこと以外はしなかったため、元から感情と意欲があったかは主観的にも疑問です。

以下は幼少期からの自分語りです。

生まれた家庭は問題無かったと思います。両親もしっかりとした職についており、虐待と呼ばれるものはほとんどありませんでした。親族も基本的にしっかりとしており、目立った精神疾患を持っている人は3親等以内にはいませんでした。ただ、自分はかなりの高齢出産なので、精神疾患のリスクは人よりあるとは思います。

生後30ヶ月ごろまで発語はなかったようです。ただ、母は医師に理解はしているけどすごく慎重な性格と言われたらしいです。幼少期は図鑑をよく読んでいた記憶があります(これは間違い無いです、特に宇宙と地球の図鑑が好きでした)。ただ、アルバムには他の園児と共にごっこ遊びをしていた写真や、ジャングルジムを登っていた記憶にあるため、趣味の一つにそれがある程度のものだったと思います。

小学校に上がるタイミングで引越しをしたため、小学校では友達を作れませんでした(幸い、高学年の時は友人が出来て、それなりのQOLでした)。休み時間中は図書室に行って、好きな本を何度も読んでいました。また、忘れ物が非常に多く、机の中はぐちゃぐちゃだった記憶があります。両親が中学受験を提案し、私がそれを受け入れ、中学受験が始まりました。幸いそこそこの中高一貫校には合格しましたが、塾内ではかなりの問題児でした(提出物を忘れる、授業中に寝る、自習室で1人遊びをするなど)。

中高ではクラスでは浮いていた、と言うよりは孤立していたと思います(友達もいましたので、完全に浮いているというのは違いますが)。その頃から運動ができないこと、雑談が続かないこと、勉強中に図形を完璧に書くことにこだわるなどから、自分が発達障害だと疑っていました。思春期頃から強迫がずっと続いており、特に数字の4に関連するものは忌避していました。なぜかと言うと、自分が破滅するからです。理屈ではバイアスがかかっているとは思っているものの、世界の全てが既存の法則だけだと嫌だという思いも少しあり、現在まで止めることができません。説得されてもやめられないというものが妄想であるとインターネット上で見かけてしまい、もしかしたらこれは妄想なのかもしれません。
学校内外での奇行も続いており、学校のトイレで寝ていて閉館時刻を過ぎていた時には本気で自分が嫌になりました。

浪人の夏頃、自分という存在の将来がどうやっても破滅してしまうと思ってしまい、強い不安で勉強が中断してしまうことがよくありました。その時は本当に辛く、自習中に泣いてしまうことが頻繁にありました。幸いそれは秋頃に治りました。

浪人の秋頃から、同じ自習室の音が気になり始め、イヤホンをしていました。冬ごろ、一回イヤホンを外したら全く集中出来なくなってしまい、それ以降も漫然と集中力が阻害されているように思えます。
受験当日も何と無く寝起きのような感覚のまま終わってしまい、それ以降一度も集中力が戻りません。
最近入学手続きをしておりますが、電話で頻繁に聞き直したり、話を一度に理解できなくなることも多くなりました。入学手続き自体もやらなければいけないと分かっているものの、なかなか意欲が湧きません。春から晴れて大学生となるので、可逆性の病気なら何とかして元に戻りたいです。

春から一人暮らしのため現時点で医療機関は受診していませんが、生活が落ち着いたら医療機関を受診する予定です。しかし、まだ今の症状は自分のバイアスのかかったものであり、違っていたら申し訳なくて受診できません。そこで、インターネット上で相談できる林先生にサイトを見つけ、一般論としての意見を聞いた次第です(勿論、医療機関に受診した方が精度は高いことは分かっています)。客観的に見て、僕が書いた症状は病気の範疇に入り、受診を勧めるレベルでしょうか?

以下は質問内で挙げた病気の根拠です。ネットの知識を聞きかじっただけなので、違っていたら申し訳ございません。

発達障害:未就学児の頃から特定の図鑑ばかりを読んでおり、それをしばしば紙に写していたこと、雑談と運動全般が苦手なこと、勉強中に細部にこだわっていたこと(図形は正確な比で書き写さないといけない、問題は必ず途中経過までノートに書かなければいけない、英語の長文は1日1題までしか解いてはいけない)、突然企図した奇行が多いこと、忘れ物が非常に多いこと、やらなければいけないことを先延ばしして逃避する癖は昔からあること(=うつ病のような症状は昔からあること)

うつ病:現在意欲が湧きづらいこと、頭が働かないこと、電話や会話中頻繁に聞き返してしまうこと、浪人というストレスが強い環境下にいたこと、家族に精神疾患がいないこと、幻聴がないこと

統合失調症:うつ病の発症年齢としては若いこと、1日に何回も頭の中で非科学的な法則(30秒間息を止めれば模試でいい成績をとる、商品を4個買うと破滅する)が直感的に思い浮かぶこと、感情があまり湧かないこと、発言が漠然としたものになること(「そういえば、昨日楽しかったんだよね、あの、あれ、ゲームセンターに行ったから」など)、頭の中の思考がまとまらないこと

 

林:
生活が落ち着いたら医療機関を受診する予定です。しかし、まだ今の症状は自分のバイアスのかかったものであり、違っていたら申し訳なくて受診できません。

それを「バイアス」と呼ぶのが適切かどうかは別として、質問者のおっしゃる意味でのバイアスは、本人が自分の症状について感じるとき・語るときは常に存在するものです。質問者の場合は「自分は病気である」という方向へのバイアスですが、逆に「自分は病気ではない」という方向へのバイアスもあります。精神科の場合は後者のバイアスの方が多く見られるかもしれません。最近は前者のバイアスも増えつつありますが(もちろんこの【4826】の質問者においても、実は「自分は病気ではない」という方向へのバイアスかもしれません。つまり客観的にはすぐにでも精神科を受診したほうが明らかであるのかもしれません)。

どちらの方向にせよ、バイアスが存在するのはごく普通のことですから、「違っていたら申し訳なくて受診できません」というふうにお考えになる必要はありません。受診してみて病気ではないと診断されたら、それはそれで意味があることです。それは精神科でも精神科以外の科でも同じです。

また、発達障害、うつ病、統合失調症についての質問者の記載は、それぞれの病気について特徴とされるものの中で、質問者がご自身に心あたりがあるものを抽出したものですので、それぞれの病気の特徴に一致するのは当然で、この記載からは質問者が病気らしいかそうでないかは何も言えません。したがって精神科Q&Aへの質問としてはほとんど無意味ですが、受診された際に医師にご自身のことを説明するにあたってのポイントとしては大いに意味があります。ぜひ受診してこれらの内容を医師に伝えてください。

(2024.5.5.)

05. 5月 2024 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 発達障害, 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , |