【4823】人の顔が少しわかるようになりましたが、難しい面もあります(【4574】のその後)
Q: 【4574】人間の顔が苦手です にて回答をいただきました30代女性です。その節はありがとうございました。その後しばらく林先生の回答の中で私に問われた内容を自分なりに色々と考えており、改めてお伺いしてみたいことができまして、報告を兼ねてこちらから再度相談をお送りさせていただきました。
さきに、【4574】で先生から問われた内容についてお返事させていただきます。
>写真もみな捨ててしまうということは、「苦手」というより「嫌悪感」が顔に対してあるということでしょうか。
⇒これについては、当時は「イエス」でした。自分の意図していないタイミングで人と目が合うことが嫌だという感覚があり、スマホのカメラロールや写真は意図せず目が合ってしまうので避けていました。
しかし、実は相談を送った前後にある俳優さんにハマり、最初のころは苦手だったので写真集やネットの画像も避けていたのですが、苦手だと思いながらも日常的に頑張って見続けていたところ、現在では大幅に改善され、特に問題がなくなりました。
好きな俳優さんの写真をカメラロールに置いていても、あの頃の不快感は大分消えたように感じています。(ふいに目に入ってビックリしてしまうのは、まだ少しありますが) あらためて考えてみましたが、この「顔が苦手」という感覚は通常生活しているときにも常にあり、実はあまり人と目線を合わせられません。ただ、会社内など慣れている場所で人と対面するときは比較的問題なく、外を歩いているときには非常に顕著に感じることを踏まえると、おそらく私は「知っている人と顔を合わせると困る(誰なのかわからないため)」という経験から「人と顔を合わせるのが怖い」という学習をしていて、人と目を合わせたくない、という強い思い込みがそうさせているのかな、と考えています。(もちろん、これは私の思い込みで実際はもっと違う内因があるのかもしれません)
>この【4574】の質問者は、二次元の絵と、それから三次元でも人工的な顔ならわかるということでしょうか。
⇒これについても、答えはイエスです。
私自身どういうメカニズムがそうさせているのかが全く分からず、この点についてはあくまで感覚的なお返事になってしまいますが、まずアニメ・マンガ・ゲームキャラクターについては平面・立体・人間・動物を問わず見分けられます。(見間違えて困惑することはありません)
また、いわゆるリアル造形(現実の人間に近い造形)については、ドールであれば造形師・制作会社の見分けもつきます。量産品であれば、公式の写真でなく所持者(ドールオーナー)の撮影した写真を何気ないときに見ても「これは○○さんが顔をメイクしているな」とか「これは××社の○○というドールだな」という種別の見当がつきますし、これは所持者の方が衣装やウィッグ、ドールアイなどを公式とは異なるものに付け替えていても分かります。
むしろ自分が他の方の勘違いを指摘する側になることが多いくらいには精度高く見分けがついていると感じます。
一方で、3Dモデルの精巧な人間を模したキャラクターがたくさんいるゲームもありますが、これについては見分けられるかは「不明」という回答になります。これは単純な話で、私がそういった容姿に一切惹かれないためこれまでプレイしたことがないからです。
ただ、ゲームの場合は常時名前が表示されていたり、衣装や髪色などが固定かつ比較的特徴的な色・衣装のことが多いため、顔がわからないとしても見分けられてしまうと思います。
回答としては以上になりますが、新しい質問をひとつ追加させてください。
それは「この症状がASD・ADHD等の発達障害に由来する症状ではないか?」
ということです。 先述の回答でも記載しましたが、あの後に俳優さんを追いかけるようにな、私が好きでいる俳優さんについてはおおよそ8割ぐらいは見分けられるようになったと思います。(たまに髪形などがガラッと変わっていると一瞬見分けられませんが、再度見るときちんと同じ人だとわかります)
一方で、作品Aで共演していた方を作品Bでみてもまずほとんど分かりません。特にむずかしいのが20~30代の男女で、それ以降の年代でよくテレビで見かける方は少し見分けがつきやすくなるのですが、この年代についてはよほど好意的で何度も見ていないとほとんど分かりませんし、何度も見ていても見逃したり見間違えることがあります。そして実際、この年代の人間の造形の美醜があまりよく分かりません。
一方で、唯一私が『顔がすごく好きだ』と感じる方がひとりだけいらっしゃり、その方は10代の方です。この方だけは唯一はっきりと顔の造形が綺麗、好みだと感じますし、もちろん同年代の中でも見分けもはっきりとつきます。
以前に質問したときにはこういったことがなかったので、自分でも相貌失認だろうと思っていたのですが、一人だけとは言え好きだなと感じる顔があるということは人の顔自体は認識できているのでは?と思うようになったのです。
そうなると相貌失認で人の顔がわかっていないというよりは、そもそも人間の顔のうちで興味のある造形範囲が著しく狭いので、それ以外の興味のない範囲の情報がまったく蓄積されないから見分けられなかっただけではないかというように疑っています。
実は人の顔という範囲に限定しないと、実生活において類似の体験が非常に多いのです。興味が持てないことをすぐに忘却してしまうので、役所の手続きも、会社の打ち合わせの日時も、当日の持ち物も必要であることは分かっていても私自身が興味がないというだけでまず全く覚えていられず、手続き忘れも予定すっぽかしもよくやってしまいます。『この人はそういう人』と職場の人がある程度理解してくださっているのでなんとかやれていますが、おそらく私には相応にASDの気質があり、現に感覚過敏で化粧が肌につく感覚や生活音が大の苦手で普段ほとんど化粧はせず、家では耳栓をして過ごしています(夜間の家族の生活音が非常にうるさく感じ、耐えがたいのです)。
この性質を踏まえると、実際には相貌失認なわけではなく、発達障害の症状の一部として極端に顔に興味がないから見分けられないだけで顔自体は分かっているのではないか、とも考えられるのですが、一方で好きな顔の俳優さんについて具体的に顔のどういうところが好きなのかをはっきりと説明することができず、やはり顔自体は分かっていなくて、全体的な雰囲気のようなものを好んでいるのだろうか?とも思えます。
毎度長文になってしまい申し訳ありません。お時間ありましたら回答をいただけると嬉しく思います。
林: ご丁寧にご報告いただきありがとうございました。
相貌失認で人の顔がわかっていないというよりは、そもそも人間の顔のうちで興味のある造形範囲が著しく狭いので、それ以外の興味のない範囲の情報がまったく蓄積されないから見分けられなかっただけではないかというように疑っています。
それはありうることです。他の発達障害の方で、人の顔が覚えられないというケースでも、相貌失認なのか、それとも人の顔に関心がないから覚えられないのか が、臨床的には不明のことがあります。この点を確認するためには、顔の認知についての検査が必要です。
ただし検査なしでもある程度の推測まではすることができます。
実際には相貌失認なわけではなく、発達障害の症状の一部として極端に顔に興味がないから見分けられないだけで顔自体は分かっているのではないか、とも考えられるのですが、一方で好きな顔の俳優さんについて具体的に顔のどういうところが好きなのかをはっきりと説明することができず、やはり顔自体は分かっていなくて、全体的な雰囲気のようなものを好んでいるのだろうか?とも思えます。
この【4823】の質問者の場合は、上の点を考慮しますと、やはり相貌失認の可能性の方が高いように思います。
(2024.4.5.)