【4801】双極性障害を患う知人の治療についての意思決定について、友人として何ができるか
Q: 林先生のQ&Aを興味深く拝読している20代男性です。
この度は、ご相談したいことがありご連絡させていただきました。
私には旧知の間柄の双極性障害の持病を持つ方がいるのですが、 先週に以下のような内容の電話がありました。
最近練炭による自殺を試みたことがあり、そのことを主治医に言ったところ入院を勧められた。 また、慰謝料を請求したい相手がおり、入院することで慰謝料の額も大きくなるのではないかと思っている。 だが、再来週に父親と旅行に行くことにしており、その旅行には行きたい。
私は事態が切迫していると感じたので、最も近い営業日での入院開始を勧めました。
また、話をよく聞いた上で(自分の中ではですが…)自殺をやめるようお願いしました。
ですが、その方のTwitterなどの更新を見ると、むしろ暇だから(休職中)悩んでしまう、早く復職するべきなのではないかと思うといった内容が書かれており、入院という方向ではなさそうに思えます。
私自身現時点でそんなに精神的なキャパシティがないというのが実情で、動けることが少ないのですが、聞いてしまった以上本当に自殺を実行してしまったらどうしようという思いがあります。
私はどうすれば良いでしょうか。
林: 適切な治療を受けていない、または受けようとしない精神障害の方のために、友人として何ができるかは、その精神障害の方とその友人の方の具体的な関係性によって異なります。なぜなら、最終的に治療を受けるかどうかは、基本的にはその精神障害の方ご本人が決定するべきことであるのに対し、しかし精神障害の症状によってその決定自体が正しくなされない場合に、その意思を翻すことができるか (さらには、翻させるべきか) は、関係性が相当に強くないと困難だからです。
その観点からこの【4801】を見ますと、質問者とその双極性障害の方の具体的な関係性は不明ですので(この【4801】に限らず、メールからは、友人としての具体的な関係性を知ることには大きな限界があります)、メールから把握できる範囲においては、
私は事態が切迫していると感じたので、最も近い営業日での入院開始を勧めました。
また、話をよく聞いた上で(自分の中ではですが…)自殺をやめるようお願いしました。
この対応は十分に適切であると言えるでしょう。
その方のTwitterなどの更新を見ると、むしろ暇だから(休職中)悩んでしまう、早く復職するべきなのではないかと思うといった内容が書かれており、入院という方向ではなさそうに思えます。
このようにお考えになることは、症状が一定以上に悪く、しかし全く仕事ができないほどまでは悪くない場合に、ご本人には非常にありがちなことです。つまり、休んで治療を受けることが最善であるのに対し、ご本人としてはそうは思えない というパターンです。このような場合、そこを説得し休んで治療を受けていただければ順調な回復が期待できるところ、あせって復職してしまえば、経過は不良になるのが常です。
(2024.3.5.)