【4743】私に通院・服薬が必要だと言うのは林先生だけなので混乱しています(【4566】、【4580】、【4689】のその後)

Q: 【4566】病気と診断されてるけど、私は病気じゃない【4580】やっぱり私は病気じゃない【4689】病気か、通常の気分変動か、昔の服薬の影響か
を質問した30代女です。
また同じようなことを訊いてしまうのですが、しつこくてすみません。どうすれば良いのか分からないので、もう一度質問します。

最後に質問したあと新しい病院に一度行ったのですが、薬の処方は無く、様子見という感じになりました。

あと精神保健福祉センターの職員さんと話す機会があり私から「統合失調症の人の妄想は自覚してないことが多いんですか?」「妄想を自覚し始めて、これからは自分で考え方を工夫してやっていこうと思うんですけど」と尋ねたら「自覚してないことが多いですね。それが本当のことだと思ってる」「薬に頼るだけじゃなくて、自分でコントロールしたいと思えるようになったのは良いこと。成長した」と言われました。また最近のことを話すと、「元気すぎて、高い借金しちゃうとか破天荒な行動をとるわけではないんでしょ?」と訊かれて、違うと答えたら「それなら大丈夫。あなたは良くなって落ち着いてきたんだと思う」とも言われました。「話し方もクリアで、良い感じ」らしいです。

他の人にも「最近調子良くて、家事とか料理とかちゃんとやれてて。ただ疲れても、あんまり眠れなくて。でも寝なくてもたくさん動けるんですよ」と言ったら「良かったね」「成長したね」「元気になったね」と言われました。

私としては今の元気な感じがずっと続けば良いなと思っていて、これが躁状態的なことだったら続かないかもしれないから嫌なんですけど、なんとなくずっとこのままでいられるような気もします。というのは、昔の自分がこうだったと思うからです。昔の自分に戻っただけで、症状とかではないと思います。

ただ、一応病気だったら嫌だなと思って、あと林先生に言われたことも頭にあって、新しい病院に行ったり、精神保健福祉センターの人と話してみたり、他の人にも今の自分の状況を言ってみたんですが、誰にも問題視されないので、自分は病気ではないから通院や薬は必要ないのかなと思います。自分で病気かなと心配して、他人(精神科医、臨床心理士他)にそれを話してみたら否定されて、それも恥ずかしいというか、あんまり何回もしつこく同じことを言ったら、心気症やミュンヒハウゼン症候群みたいに思われそうだし、病気ではなく健康ということは良いことであるはずなのだから、喜ぶべきなのかなと思います。困ることがあるとしたら、他人に嫌がらせされたり、邪魔されたりしてると思うときがしばしばあって、そのときに一々「気のせい。考えすぎ」と自分に何度も言い聞かせないといけないことぐらいです。薬をのまないので、自分で考え方を工夫しなければならず、それが大変と言えば大変です。でもそれも「自分でコントロールできるようになったのは良いこと」と言われたので、このままで別に良いんだと思いました。

でも林先生にこれまで3回ほど回答いただきましたが決まって「通院・服薬が必要」と言われました。私にそう言うのは林先生だけです。

私は誰の言葉を信用すれば良いのでしょうか。精神科Q&Aの他の質問回答を読むと、林先生はごく当然のことを質問者に勧めていると感じるのですが、自分のこととなるとどうすれば良いのか分かりません。質問する前の注意事項にも「主治医の見解を信用するように」とあるので、そうするべきだと思うのですが、頭が混乱してどうすれば良いのか分からなくなります。病院の先生にも周りの人にもあらゆる人に、全く病気だと言われないし、薬飲まなくて良いのなら良いことだねとしか言われないので、それを信じて淡々と生活していけば良いのですが、自分では自分にちょっと違和感を感じる部分があります。周りと考え方や行動の仕方が少し違うような気がするという感覚です。でも、私は昔から胸や頭が少し痛むと、心筋梗塞かな脳梗塞かなとか心配になる性で、けれどもちろんそれは杞憂なので、精神的なものに関しても考えすぎなのかもしれません。

あるいは自分で病気のことについて調べてたら、そういう感じになってくるというか、そういう振る舞いをしてしまうというか。
もしくは内因性の統合失調症の症状ではなく、心因性のもの、具体的には過去の経験からきてる考え方の癖のようなものなのかなと思います。
それと最近昔のことを思い出して気づいたのですが、私の父が病的とまでは言えないけれど、被害妄想みたいな考え方をしていたので、そういう性格が遺伝しただけな気もします。当時は父に対して対人関係が苦手なのかな、自己肯定感が低いけどプライドが高いから攻撃的で、被害妄想みたいな考え方をしているのかなと思っていました。

同じようなことを何回も林先生に言って、全て否定されてるのですが、周りに病気でないと言われてるのに自分で自分を病気だと思い込もうとするのは、甘えてるというか、逃げみたいな感じもしてきます。

今まで何度も病気ではなくて〇〇じゃないですかと林先生に尋ねてきましたが、逆に自分で自分が病気なのではと疑うことももちろん何度もしています。でもそれを周りに伝えても、大したことではないみたいに言われて、けれど林先生には病気だとわれて、どうすれば良いのか分からなくなっています。林先生とは直接お会いはしてないので、私の言葉のみで判断して、病気と言えるということだと思います。逆に直接会ったり話したりする身近な人には、あんまり自分の困り事をはっきり主張できず、それで病気ではないと判断されています。自分がどうすべきなのか分かりません。

状況というか自分の状態のようなものもおそらく移り変わっていて、一定という感じではないです。自分で最近のことをメモしていたので、それをここに書きます。ごく最近のこと(ここ、二週間ぐらいのこと)なので、なんとも言いがたいとは思うのですが。

・店員がついてきたり監視してきたり邪魔してきたりする
・他の客が邪魔する
・店員や客二人組が笑ってると私のことを笑ってると思う。話してるだけでも、私のことを話していると思う
・色んな人が邪魔してくる
・隣の部屋、下の部屋が怖い(恨まれてる、聞き耳立てられてる)
・ささいなことでイライラする
・自己嫌悪
・すごく疲れるけど、病気じゃなくて甘えって言われたのを思い出して、色々やらなきゃと思う
・すごく神経質、細かい所がものすごく気になる (例 ちょっとした汚れが気になる)
・目に入ったもの全部調べたい
・考えたこと思いついたことをメモに残しているけど、メモが追いつかない
・欲しいもの(必要品だけど)がものすごくたくさんある
・これは生まれ変わったのかな?何だろう?昔の自分に戻った?でも疲れる。疲れるけど、動いてしまう
・毎分毎分色んな調べ物をしたくなる
・効率的に精力的に色々できた
・夜中、窓から見えた外の明かりがこっちを見るために誰かが照明つけてるのかと思った
・冴えてる感じだけど、疲れる
・寝つきが悪い。眠いのに寝れない。うなされる。ずっと頭の中で考え事をしてる。やらないといけないこととか、言われたこととか。2, 3時間しか寝れない。けど起きて、動き出すと、いくらでも動ける。時々眠くなって寝ようとしても寝れない。
寝れても、半分起きてる感覚がする。
・ごめんなさいと頭の中でひたすらつぶやき続けてるときがある
・頭が冴えてる
・神経質、几帳面な感じ
・物の並び方、落ちてるごみ、ささいな汚れも気になる。細かいことが気になる
・色んなことに興味がわく。調べたくなる。勉強したい。イベントとかに参加したい
・前、苦だったことが今、全く苦じゃない。掃除、料理など・洗濯機が回ってる音が「見んな」という声に聞こえる
・隣の部屋、下の部屋の人が怖い
・何かがうまくいかないと邪魔されてる、それか罰が当たったんだと思う
・夜中、窓からちらっと見えた外の明かりが、私の部屋の方に向かって照らしてるように思った。こっちの写真を撮ってる? か何かを私に伝えようとしてる?
・私へのメッセージ?あてつけ?に感じる
・性格がこの前まで(めんどくさがり、大ざっぱ)と真反対。でも前はこうだったから前の自分に戻っただけかも
・知識欲、好奇心がすごく強い
・活動的、精力的
・すれ違う人、周りにいる人の視線が気になって仕方ない

重複してるものがありますがそれは思う度にメモしていて、つまり何度もそう思ってるということだと思うので、あえてそのまま書きました。
一応ですが自覚してることなので、それ(被害を受けてるようなこと)が事実だと思いこんでるわけではないと思います。でもそれが事実ではないと思う一方で、そういう発想がなぜかあらゆる場面で出てきて、その度に自分に「気のせい気のせい気のせい」と頭の中で何度も唱えています。そういうコントロールで何とかなるような気もします。よく分かりません。
また自覚的になったのは最近で、同じような考え方をだいぶ前からしていたような気がします。例えば小中学生の頃、登下校のとき同級生の住むマンションとかの前を通るとき、窓からじっとその家の人に観察されている気がして、うつむいて早足で歩いたりしていた記憶があります。病気だとしたら、小中学生からだったということですか?普通に大学までは通えたのですが、病気でも通えるものなのでしょうか。もしくは大学まで問題なく通えたのなら病気ではなく、ただのそういう性格、考え方の癖と考えられないでしょうか。自意識過剰なだけな気もします。

それとも原因がなんであれ(遺伝、周りからの影響、過去の経験、脳の問題)同じような考え方を持つ人には一律に、抗精神病薬が効くのでしょうか。
この状態がどの程度続くかも重要なことだと思います。来週には収まってるかもしれません。でも、できれば今何でも出来てる感じはずっと続いてほしいです。続くような、続かないよう な、でも昔の自分はこうだった気がして、本来の自分を取り戻せたという感じで、このままでいられるような気もします。

何度も同じような質問していて、すみません。はっきり言っていただければ嬉しいです。前と同じ結論であればもう一度主治医の先生などに頑張って伝えてみたいと思います……。
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先ほどメールをお送りしたんですけどメール送ったあとにだいぶ気分のようなものが変わって、今ものすごく気分が悪いんですが、なんとかポジティブ思考で持ち直したいなと思っています。先ほどお送りしたメールに記した自分の感じとは、またちょっと状況が変わったので、一応追記でお送りしました。
何があったのかというと大したことではないんですが、欲しいものがあってオークションサイトを見ていたんですが、自己破産してるし、どうしてもお金を捻出できなくて、諦めて買えなくなった瞬間に、突然死にたくなってしまいました。本当に欲しいというか、昔から好きなもので、それも買えないほど、前、馬鹿みたいなお金の遣い方してた自分にものすごくムカつくし、欲しいものも買えないのに、なんで生きてるんだろうという気になってしまいました。とりあえず、前向きに考えて気分を持ち直します。という現状になったので、一応メールをお送りしました。

 

林: あなたは統合失調症です。最初にいただいたご質問の回答【4566】から一貫してお答えしている通りです。【4566】の時点で私は「病気です。統合失調症に間違いありません」と回答しています。つまり【4566】の時のメール内容だけからでも統合失調症であることは明白ですが、その後の今回の【4743】までにあなたから詳細にご報告いただいている内容は、統合失調症であるという診断をより確実にするものであっても、決して弱めるものではありません。今回、「ごく最近のこと」として箇条書きにしていただいた内容からも、あなたが統合失調症であることは確実です。

周囲の方々がおっしゃるように、あなたが「病気には見えない」のはおそらく事実なのだと思います。しかし統合失調症でも「病気には見えない」人はたくさんいらっしゃいます。統合失調症は、外見だけでほとんど直ちに診断できるケースもあれば、外見だけでは決してわからず、本人の話を聴いて初めて診断できるケースもあります。現在のあなたの状態は後者にあたるのだと思います。

林先生とは直接お会いはしてないので、私の言葉のみで判断して、病気と言えるということだと思います。逆に直接会ったり話したりする身近な人には、あんまり自分の困り事をはっきり主張できず、それで病気ではないと判断されています。

あんまり自分の困り事をはっきり主張できず」それが、周囲の人々の判断を誤らせているのだと思います。

自分がどうすべきなのか分かりません。

あなたがすべきことは明白です。あなたの困りごとを周囲の人々に直接伝えてください。口では話しにくいようでしたら、紙に書いてお伝えするという形でも構いません。

一応ですが自覚してることなので、それ(被害を受けてるようなこと)が事実だと思いこんでるわけではないと思います。でもそれが事実ではないと思う一方で、そういう発想がなぜかあらゆる場面で出てきて、その度に自分に「気のせい気のせい気のせい」と頭の中で何度も唱えています。そういうコントロールで何とかなるような気もします。

そのような自己対処によって、ある程度は対応できる場合もあります。つまりそれは、あなたにある程度の病識があり、症状を自覚できているということです。【4731】の方の自己対処法もご参照ください。「ある程度は対応できている」という意味ではあなたの場合も【4731】の方も同様ですが、大きな違いは、【4731】の方は服薬を含めた治療を受けているということです。統合失調症の回復のためには自己努力も必要ですが、自己努力だけで回復できる病気ではありません。今のままですとあなたの病状は早晩悪化します。現在の困りごと(症状)を周囲の方々(医師や精神保健福祉センターの職員)に正しく伝え、適切な治療を受けてください。

もっとも、今回のメールの記載の中で、ひとつだけ不明確な点があります。それはこの記載です:

最後に質問したあと新しい病院に一度行ったのですが、薬の処方は無く、様子見という感じになりました。

不明確なのはこの「様子見という感じ」の具体的内容です。もしこれが「通院しなくてよい」という意味の「様子見」であれば、不適切な方針だと思いますが、「いますぐは服薬しなくていいが、通院は続ける」という意味の「様子見」であれば、適切とみる余地があります。というのは、あなたの場合、ある程度は自己対処できていますので、それによって何とかやっていける可能性もないとは言えないからです。もっとも、このメールに書かれているような症状がある以上は、自己努力のみでは対処しきれないのはかなり確実ですので、本来は服薬が必要という判断が正しいと思います。

以下は、今のあなたがすべきことと直接関係はありませんが、補足説明として記すものです。

また自覚的になったのは最近で、同じような考え方をだいぶ前からしていたような気がします。例えば小中学生の頃、登下校のとき同級生の住むマンションとかの前を通るとき、窓からじっとその家の人に観察されている気がして、うつむいて早足で歩いたりしていた記憶があります。病気だとしたら、小中学生からだったということですか?普通に大学までは通えたのですが、病気でも通えるものなのでしょうか。もしくは大学まで問題なく通えたのなら病気ではなく、ただのそういう性格、考え方の癖と考えられないでしょうか。自意識過剰なだけな気もします。

統合失調症の方に詳しく話をお聞きすると、このように、小中学生の頃から、軽いながらも統合失調症の色彩ある症状を体験していたことが判明することが時にあります。結果的に統合失調症を発症した時点から振り返ってみれば、それらは統合失調症の前駆症状であったということができるでしょう。しかし他方、小中学生の頃にこのような症状があっても、その後に統合失調症を発症しないケースもあることは、精神科Q&Aの中にもいくつか実例がある通りです。そうしたケースは精神科を受診することはありませんので、精神科医はそうしたケースに出会うことは通常ありません。精神科を受診するのは発症した方に限るわけですから、仮に発症した方の多くに小中学生の時から統合失調症の色彩ある症状があるとわかったとしても、「小中学生の時に統合失調症の色彩ある症状があると、統合失調症を発症しやすい」という結論を直ちに導くことはできません。
その意味では、

ただのそういう性格、考え方の癖と考えられないでしょうか。自意識過剰なだけな気もします。

その疑問ももっともです。しかしあなたの場合は統合失調症を発症しているわけですから、「ただのそういう性格、考え方の癖」「自意識過剰なだけ」と考えるよりも、統合失調症の前駆症状であったと考えるほうが合理的ということになります。

それとも原因がなんであれ(遺伝、周りからの影響、過去の経験、脳の問題)同じような考え方を持つ人には一律に、抗精神病薬が効くのでしょうか。

これは実に深いご質問で、あなたの鋭い洞察力を反映していると思います。深く複雑なご質問に、まずは端的にお答えするとすれば、答えは イエス です。その理由は、ここでいう「同じような考え方」は、統合失調症の色彩がある「考え方」を指しており、それを「考え方」と呼ぼうが、「症状」と呼ぼうが、脳の活動の現れであることに違いはなく、すると、抗精神病薬がそのような脳機能障害を改善する効果がある以上、「抗精神病薬が効く」ということになるからです。
ただしここには、何をもって「同じような考え方」と判定するか、また、いま私が用いた「そのような脳機能障害」の「そのような」とは何をもって「そのような」と判定するか、といった、非常に複雑な問題があります。また、その「症状」ないし「考え方」が軽度であるとき、それでも薬によって改善させる必要があるか、というのはまた別の問題です。それは、単に軽いから薬はいらないというような単純な判断ですむ話ではなく、薬で治療しなかった場合にその先にどのような経過と帰結が待っているかということも含めて考えなければならない問題です。

(2023.10.5.)

その後の経過 (2023.11.5.)

05. 10月 2023 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , , |