【4698】自閉スペクトラム症と診断されていますが、統合失調症も合併しているのでしょうか
Q: 20代の男性です。自閉症スペクトラムと診断されましたが、過去の症状から別の障害もあるのではないかと疑っています。現在はその症状がないので主治医に話す機会がなく、また話さなくても問題は特にないのですが、別の治療を受ければより症状が改善するのではないかと思い、ご相談します。
以下、私の基本情報、病歴と質問です。
[基本情報]
年齢:20代前半
性別:男性
診断名:自閉症スペクトラム
障害等級:3級
就業:就労継続支援A型⇒就労移行支援
[経過・病歴]
0~3歳:アスペルガー症候群の疑いありと診断される(詳細不明)が、両親の教育方針により放置。
3~10歳:知能的な問題はなく、おそらく生活するのにそれほど支障はなかったと思われる。
10~12歳:中学受験に取り組むにあたって不登校になり、塾や学校に行かせようとする両親に何度も暴行を受ける。この時期の記憶はあまりなく、思い出そうとしても時系列が一貫しない。
12~15歳:何とか第二志望の中高一貫の男子校に合格したが、うつ傾向あり。「死にたい」が口癖になり、再び不登校気味になる。14歳から学校のカウンセラーに相談するも、アスペルガー症候群ではないと断言され、病院を受診せず。後に自閉症スペクトラムとの診断を受けた際、カウンセラーに謝罪される。
15~18歳:この時期は数学が得意であることをアイデンティティの1つにしていたがそれほど才能はなかった。同級生に恋愛感情を持ったが、自分の感情を理解できず、住所を聞き出して許可も取らず家に押し掛けるなどした。
後にその行動に問題があったことを自覚し、自分自身の感情と行動を理性的に制御できていないことに恐怖を感じた。精神状態が悪化し、再び不登校になり、大学受験も失敗した。
18~19歳:1年間浪人したが、とても受験勉強できるような精神状態ではなく、自殺未遂をして7週間入院した。退院後受験し、国立大学数学科に進学した。高校卒業直前に同級生に告白され、そのときは断ったが入院中に来訪され、精神的に縋れるものを欲していたため交際することに決めた。未だにその関係は続いているが、本当に彼に好意を持っているのか自分でも分からない。自殺未遂をする直前から今まで同じ病院に毎月通っており、そこで改めて自閉症スペクトラムと診断を受けた。
19歳~現在:大学生活において勉学などに支障はなかった。サークルやボランティア活動などはせず、1年間だけ塾講師のアルバイトをしていた。何社かインターンシップに参加したり、資格を取るなどしていたが就職活動に身が入らず失敗した。何もしないという選択肢は取れず、障害者手帳取得を申請し就労継続支援A型作業所に入所したが将来に不安を覚え、就労移行支援に移り職業訓練を受けることにした。
[質問]
1. 15~19歳まで、いわゆるサトラレ、思考伝播妄想がありました。電車や教室など人が集まる場所にいる際、もし自分の思考が読まれていたらどうしよう、という妄想が止まらなくなっていました。ただし妄想するのと同時に、そのようなことはあり得ない、と強く考えてもおり、矛盾する2つの思考に苦しめられていた覚えがあります。また自分に対する悪口雑言が聞こえてもいましたが、これは誰かの声としてはっきりと聞こえていたわけではなく、止められない自分の思考の一部だと認識していました。入院を境にそのような妄想はなくなりましたが、もしかすると自分は統合失調症ではないか、うつ状態だったのは統合失調症の陰性症状だったのではないだろうかと、最近は考えています。また、気分の高揚と落ち込みを繰り返すことがあり、恋人には双極性障害ではないかと言われました。
親族に統合失調傾向のある者はおりませんが、私が統合失調症である可能性はあるでしょうか。ちなみに母方はうつ気質の者が多く、父方は神経発達症ではないかと疑われる者が多いです。
2. 私は自分が恋人に恋愛感情をもっているのではなく、依存しているだけではないかと疑っています。全く味方がいない(と思い込んでいた)時期に絆されただけで、好きでも嫌いでもないが、取るに足りない自分を受け入れてくれるので見捨てられたくない、という卑怯な考えで付き合っているのではないかと思います。このまま不誠実な関係を続けたくはないのですが、私は人間関係が少なく他に相談できる人もいないため、別れるのは得策ではないとも考えています。
もし依存しているとすれば別れた方がよいでしょうか。
長々と申し訳ありません。よろしくお願いします。
林:
15~19歳まで、いわゆるサトラレ、思考伝播妄想がありました。電車や教室など人が集まる場所にいる際、もし自分の思考が読まれていたらどうしよう、という妄想が止まらなくなっていました。ただし妄想するのと同時に、そのようなことはあり得ない、と強く考えてもおり、矛盾する2つの思考に苦しめられていた覚えがあります。また自分に対する悪口雑言が聞こえてもいましたが、これは誰かの声としてはっきりと聞こえていたわけではなく、止められない自分の思考の一部だと認識していました。
これは統合失調症の症状に一致しています。
入院を境にそのような妄想はなくなりました
入院して薬物療法を受けたのか否か、その後薬を飲み続けているのか否か、についてメールに記載がありませんので、上の症状が自然に消えたのか、薬の効果で消えているのかが不明です。これはかなり重要な点ですが、それは措くとしても、統合失調症に一致する症状が約4年間続いていたことは、質問者が危惧しておられるように、自閉スペクトラム症にも診断名がつくのではないかと考える十分な根拠になります。しかしこのような場合、
(1) 自閉スペクトラム症と統合失調症が両方あるのか
(2) 自閉スペクトラム症に一時的に統合失調症のような症状が出たのか
を区別することは論理的に不可能ですので、(1)(2)のどちらの可能性もあるということになります。【3901】統合失調症の疑いで入院した兄が、発達障害と診断された もご参照ください。
もし依存しているとすれば別れた方がよいでしょうか。
それは依存の程度によります。人と親しくなるということは、多少なりともその人に依存するということですので、単純に「依存はよくない」と言うことはできません。
(2023.7.5.)