【4688】長野県中野市の殺人事件について
Q: 20代男性です。毎月興味深く貴サイトを拝見しています。
2023年5月25日に長野県中野市で発生した殺人事件について先生のご見解を教えてください。報道によれば、容疑者の31歳男性の犯行動機は、「被害者から悪口を言われていると思った」ですが、実際には被害者と接点はなく悪口を言われていた可能性はなく、しかしとても強い恨みを被害者に対して持っていたようだとされています。そしてこの容疑者は、高校生ころまででは素直な普通の少年でしたが、大学は中退、その後は人との付き合いがなくなってひきこもりがちになったとされています。
私はここ何年か、林先生のサイトを毎月5日の更新日に読ませていただいていますが、この事件の犯人の経過は統合失調症に一致するように思います。もしそうであったとすれば、治療を受けていればあのような事件は起きなかったのではないでしょうか。この犯人の家は【1877】弟が統合失調症だということを両親が認めず、心の風邪だなどと言って治療を阻んでいますのような状態だったのでしょうか。 あるいは【4408】閉じこもっている統合失調症の弟はこのまま放置してよいのかのような状態だったのでしょうか。それとも【1869】統合失調症の姉・・・結局どこにも頼れず、他人を傷つけ措置入院となりましたのような状態だったのでしょうか。林先生の意見を是非お聞かせください。
林: ご指摘の事件については、報道による断片的な情報しか存在しませんので、コメントすることはできません。
ただし質問者がご指摘している事項 (「事項」です。この事件についての「事実」かどうかはわかりません)、すなわち、
(1) 31歳という年齢
(2) 高校生ころまでは素直な普通の少年
(3) 大学は中退、その後は人との付き合いがなくなってひきこもりがちになった
(4) 「悪口を言われていると思った」という犯行動機
(5) 実際には悪口を言われていた可能性はなさそう
という事項を総合すれば、一般論としては、「統合失調症(または妄想性障害)を発症し、未治療ないしは適切な治療が行われないままに経過して悪化し、被害妄想に基づき攻撃行動に出た」というストーリーが推定できます。あくまでも一般論です。
なお、比較的最近発生し報道された事件に関する精神科Q&Aとしては、
【4321】 大阪女子大生殺人事件の犯人は統合失調症に間違いないと思うのですが
【3870】大阪の警察官襲撃事件について感じたこと
があります。
また、
【1861】隣人を包丁で切り付けた知人は統合失調症でしょうか
【4320】 精神科患者が起こす迷惑行為に対する事例集はどうして出回っていないのですか
もご参考になるかもしれません。
(2023.6.5.)