【4459】ストーカー的行為をしてしまいます。嫉妬心が強いです。

Q: 私は30代女性です。片思いの相手に対する執着心、嫉妬心と、相手へのストーカー的な行為に悩んでいます。 ネットで調べているうちに、「嫉妬妄想」などという用語があることを知り、自分の状態が精神的な疾患によるものではないかと心配になりました。どうすればこの感情と行動から抜け出せるか、相談させていただきたく存じます。
●私について:30代半ば、女性、独身、会社員。一人暮らし。結婚歴、交際歴無し。
●精神疾患について現在までに精神科の受診歴、診断歴は無し。ただし、下記の「衝動的な嫉妬心」を感じたときに、落ち着きたくて、市販薬「イララック」を飲んだことがある。ボーッとするだけで根本的な解決にはならず、結局、最近はやめてしまった。
●相手(対象)の男性について:
・現在の相手(対象)は会社の先輩で既婚者。過去にも、同僚や上司、先輩など、5人ほどに同様の行いをしたことがある。独身の場合も既婚の場合もある。
・いずれも、仕事がらみで食事に行ったり、親しく会話をしたことがきっかけで、好意を寄せてしまう。
・既婚者の場合、そもそも「家庭を壊して一緒になりたい」という願望は無く、「不毛な片思いだからやめよう」という気持ちもわかない。ただ、相手の行動を観察することに執着心を感じる。
●行動について:
・社内のエレベーター前で数十分にわたり待ち伏せし、偶然を装いあいさつや短い会話をする。これを一日に3~4回繰り返す(自分の予定表には、「打ち合わせ」などと嘘を書いておく)。
・自分の仕事が早く終わっても、相手の帰りを待って、社員通用口の近くや電車のホーム、駐車場などで、数十分、ときには数時間にわたり待ち伏せする。相手が現れたら、ただあいさつをして帰る。
・社内で、相手の行動が気になり、仕事が手につかなくなる。
・他の女性と親しげに話していると、激しい嫉妬心に駆られ、仕事が手につかなくなる(これが最も困っていること)
・住所を頼りに自宅をこっそり見に行く(ただ、眺めて感慨にふける)。
・男性の帰社時間を手帳に記録する(1週間ほどでどうでもよくなりやめるが、上記の衝動的な状態が起きると、再開してしまう)
・相手が既婚男性の場合、その妻に対しては全く嫉妬心はわかない。むしろ、夫婦のエピソードなどを微笑ましく感じる。奥さんを目撃した際には、むしろ暖かい気持ちになり、感動した。
・相手が独身男性の場合、途中で別の女性と交際したり婚約した場合には、相手の女性に嫉妬し、激しく動揺する。
・そのほか、激しい嫉妬心を感じるのは、相手(対象)の男性と親しい社内の女性。親しげな様子を目にすると、火がついたような衝動的な嫉妬心を覚える。
●行動が始まった時期20代前半から  いずれも、相手の転職、転勤、留学などがきっかけで嫉妬の日々は終わるのですが、しばらくすると、また新しいターゲットに同じことを繰り返しはじめます。
相手を傷つけたり、犯罪的な行為には至っていませんし、想像することもありません。しかしながら、自分の生活や仕事に支障を感じています。仕事中に衝動的に相手のことが気になり、仕事が手につかなくなる、というのが最も困っていることです。  「他の女性との親しげな会話」が、衝動的になるスイッチです。  冷静なときは激しく反省し、自分の行動を気味悪く感じるのですが、衝動的になると、気持ちと行動をコントロールすることができません。  どうか、先生のご見解、アドバイスをよろしくお願い申し上げます。

 

林:
「嫉妬妄想」などという用語があることを知り、自分の状態が精神的な疾患によるものではないかと心配になりました。

嫉妬妄想にはあたらないと思います。
精神医学用語としての嫉妬妄想とは、単に嫉妬心が強いことを指すのではなく、その嫉妬心に基づくある一定の逸脱行動を伴うものを指すものです。【1452】癌の末期の父を、嫉妬妄想のために激しく責める母【1453】嫉妬妄想で、しかし相手が見つからず、今度は娘と近親相姦していると言い出した【1454】夫の嫉妬妄想のため、家庭が地獄です【3634】嫉妬妄想がある夫は妄想性障害? 統合失調症? 、【4458】父が浮気をしていると事実無根の確信を持っている母は妄想性パーソナリティ障害でしょうか などをご参照ください。

この【4459】は、こうした嫉妬妄想とは明らかに異なっています。残念ながら私の知る限りでは、この【4459】にあたる精神疾患はありません。病気の範疇には入らない強い嫉妬心としか言えないように思います。しかし、質問者が精神的なことでお悩みであることは事実ですので、精神科での治療の対象にはなるでしょう。薬物療法の対象ではなく、広い意味でのカウンセリング治療の対象ということになると思います。

(2022.2.5.)

05. 2月 2022 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A